わたし:「予算との兼ね合いでハードのディスク容量がこれになって、フルの状態までデータ量が増えてもバックアップが夜間で完了するというのが最優先課題だったので。ついでにサブサーバのバックアップもとりたかったから。このサーバだとDLTは内蔵にできなかったので、外付けになったんだよね」
B氏:「なるほど。このメーカーは信頼性が高いからこだわるのも分かる。しかし、統合してユーザー数が2倍になった今だとディスク容量もキツキツだなあ。これも統合を知らないSEから見たら、なんと半端な容量を選んで、となっちゃうわけだ」
わたし:「数年先を読むのって難しいね。壊れる時期を読むのも難しいけどね」
そんな会話を交わした後、沈んだ雰囲気を一挙に覆す提案が総務から舞い込んだ。「40万円でユーザーに直接影響が見えないものを修理するより、予算が余っているから300万円ほどでファイルサーバをドーンと購入してはどうか」というのだ。後で聞いたところ、新しいもの好きの理系支店長から出された提案のようだった。統合前の噂では、IT関係の設備投資を惜しまないと評判の支店長だったが、ここにきてそのありがたみが身にしみた。
わたし:「今度は、5年後でも完璧な設計だと言われるサーバを構築してやる!」
B氏:「そうだね。容量もバックアップシステムもリスク管理も、途中から参加したSEが構成を見ただけで納得する、理想の環境を作り上げよう」
それから、わたし達はRAIDの構成からバックアップシステムの最新動向、各部署のデータ容量と増加の傾向を綿密に調べ上げた。販売会社の営業担当者とも何度も打ち合わせを重ね、ファイルサーバの基本形を打ち出した。
そんなところにまたもや総務からの要請が入った。「支店長がどうしても「Exchange」でスケジュール管理をしたいから、DLTが壊れた今のファイルサーバをExchageサーバとして構成してほしい」と。バックアップシステムが壊れているサーバで、よりによって支店で最も重要な支店長のスケジュールを管理しろというのだ。
2人の管理者は、バックアップシステムの構成を再度検討することにした。
わたし:「ということは、ネットワーク経由でバックアップとることになるよね」
B氏:「ディスク5本でRAID5を組んでも容量は十分な余裕がある。それにプラスして、Exchangeのデータも管理できるバックアップシステムを選択しないと」
わたし:「サーバのパフォーマンスを考えると、バックアップは夜間ですべて完了させたいし」
B氏:「やっぱりDLTかな。あれ、それだと外付けになる?」
わたし:「いや、DLTも内蔵対応が出ているみたい。でもLTOってのもあるよ、内蔵で」
B氏:「ほほう、新しいなあ。スピードも早いし、良さそうだな」
システム管理者にはなぜか新し物好きが多いらしい。わたしも含めて。
その結果、データ容量400Gバイトまで対応し、なおかつ内蔵のLTOを装着した万全のファイルサーバが誕生した。これならこの規模の事務所であれば、5年後でも十分ニーズに対応できるだろう。我々には完璧な自信があった。
そして、それから5年――。
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