PCからデスクトップ環境を切り離したWyseとVMware

Wyseは、自社の小型仮想デスクトップデバイス「S Class」の新バージョンをリリースした。1.8GHzのプロセッサを搭載し、価格は299ドル。コールセンターや製造業、小売業、医療分野などの特定分野をターゲットにする。

» 2006年08月03日 15時03分 公開
[John G. Spooner,eWEEK]
eWEEK

 Wyse TechnologiesとVMwareは、仮想化されたデスクトップというコンセプトを推進しようとしている。

 Wyseは8月2日、VMwareの「Virtual Desktop Infrastructure」をサポートするようにデザインされたハードウェアを発表した。Virtual Desktop Infrastructureは、企業がサーバ上でMicrosoft Windows XPデスクトップ環境をホストし、これを従業員のデスクトップに配信することを可能にするソフトウェアである。

 両社を含む数社の企業が、仮想化されたデスクトップの普及を目指すVirtual Desktop Infrastructure Allianceに加盟しており、PC上にデスクトップ環境を配備する必要のないIT世界の実現を目指している。

 この構想では、PCの基本要素(ユーザーインタフェース、アプリケーション、データ)が仮想化され、サーバ上でホストされる。仮想化された環境はサーバから個々のユーザーに配信され、ユーザーはこの環境を広範な低価格ハードウェア上で利用することができる。

 両社によると、この方式ではデータがサーバ上に置かれるため、通常のPCに比べてデータの防御が強化され、管理コストも低くなる。また、MicrosoftやCitrixのソフトウェアを利用する従来型の「シンクライアント」よりも広範な種類のアプリケーションを利用することが可能だという。

 カリフォルニア州サンノゼに本社を置くWyseでマーケティングと顧客サポートを担当するジェフ・マクノート副社長は、「仮想デスクトップというアイデアの基本的な狙いは、仮想デスクトップが常に稼働しており、ユーザーはネットワーク上のどこからでも、さらには自宅からでもその環境にアクセスできるようにすることだ。これはユーザーにとって非常に魅力的であり、IT部門にとっては管理が非常に楽になる」と説明する。

 Wyseは、自社の小型デスクトップデバイス「S Class」の新バージョンを提供する予定。このデバイスは、VMwareのVirtual Desktop Infrastructure製品に対応する。同製品には、仮想デスクトップ専用として開発されたOS「Wyse Thin OS VDI Edition」が搭載される。

 S Classの価格は299ドル。マクノート氏によると、このデバイスは起動後数秒以内で仮想デスクトップにアクセスすることができるという。1.8GHzのプロセッサを搭載するため、パフォーマンスはPCと比べて遜色がない。データはサーバに保存され、ローカル保存することはできない。

 S Classは、仮想デスクトップにアクセスするのにIPアドレスとDNS名を使用し、サーバとの通信にはHTTP/Secure HTTPプロトコルを使用する。

 大規模なサイトでは、ユーザーと仮想デスクトップを接続するジョブを処理するために、VMwareなどの企業が提供しているコネクションブローカーというソフトウェアを利用することができる。

 VMwareのVirtual Desktop Infrastructureは、デスクトップ環境を仮想化し、サーバリソースを管理する役割を果たす。マクノート氏によると、32Gバイトのメモリを搭載した1台の4CPUサーバで、65人の同時接続ユーザー(65の仮想デスクトップ)をホストできるという。

 Wyseの仮想デスクトップは、ほとんどのWindowsアプリケーションに対応するが(マルチメディア関連では多少制約があり、また現時点ではWindowsしかサポートされていない)、WyseとVMwareではコールセンターや製造業、小売業、医療分野など一部の特定分野をターゲットにする方針だ、とマクノート氏は話す。

 「Wyseでは今後、OSに機能を追加し、よりPC環境に近いものにする予定だ」(同氏)

 この目的に向け、WyseではVMwareと共同で、高品質のサウンド/ビデオ、VoIP(Voice over IP)、USB周辺機器などのサポートを追加する作業を進めている。マクノート氏によると、ITマネジャーがこれらのUSBデバイス(ポータブルドライブ)のアクセス権を設定できるようにするという。

 Wyseでは、より高機能ながらも、さらに小型で低価格の仮想デスクトップデバイスを年内に発表する計画だ。このデバイスはシングルプロセッサを搭載する。

 マクノート氏によると、新デバイスは11月初めに開かれるVMware主催の「VMworld」トレードショーで(あるいはそれ以前に)デビューする見込み。これは、かつてなく小型で高速な仮想デスクトップ型ハードウェアデバイスだという。

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