IT基盤の全体最適化を目指すOracleのGridテクノロジー連載第1回

2003年秋、Oracle 10gのローンチによってベールを脱いだOracleのGridテクノロジーは、それまでの科学技術分野で利用されてきた「グリッド」の定義を満たさなかったため、ライバルたちからは「マーケティングのためのグリッド」と揶揄(やゆ)された。あれから3年、Gridテクノロジーのその後を追った。

» 2006年08月07日 00時00分 公開
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インフォメーション

「Grid Week」イベント開催概要

●日程:2006年8月29日(火)〜9月1日(金) 13:00〜17:45(12:00受付開始)
●場所:日本オラクル本社(東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニガーデンコート)17階、8階
●参加費:無料


 「科学技術分野でグリッドが生かされているのは認めるが、OracleのGridテクノロジーは企業のIT基盤を全体最適化できる技術として成熟が進んでいる」と話すのは、日本オラクルでシステム製品統括本部長を務める三澤智光常務執行役員。

 三澤氏によれば、すでに同社のエンタープライズ案件のうち約3割は、Oracle 10gによるGrid構成で占められるに至っているが、それでも「数社のシステムインテグレーターはGridテクノロジーに対して懐疑的なままだ」という。

 「事例を重ねるごとに構築のノウハウも蓄積されてきている。Gridに対する考え方を変えていきたい」と三澤氏は話す。

Oracle 10gのGridテクノロジーとは

 Gridの「g」を冠したOracle 10gによって、そのベールを脱いだGridテクノロジーとは、そもそもどのような技術なのだろうか。

photo 日本オラクルの常務執行役員で、システム製品統括本部長とマーケティング本部長を兼任する三澤 智光氏

 Oracle 9iの時代、Oracleは「Real Application Clusters」、いわゆる「RAC」によって、データベースサーバを並列化し、スケーラビリティと高い可用性をデータベース層にもたらした。特に、安価なIAサーバとLinuxの組み合わせでも高い可用性を実現できる「Unbreakable Linux」は、Linuxの基幹業務への適用を大いに後押しした。

 Oracle 10gのGridテクノロジーは、そうした並列化をさらにアプリケーションサーバ層に拡大することで、より大きな価値を顧客企業にもたらそうとしている。単なる並列化の拡大にとどまらず、Oracleは、10gによって、仮想化やプロビジョニング機能、あるいはポリシーベースのワークロード管理機能なども強化したからだ。これにより、企業は業務ごとに分断された企業のITシステムをGrid構成に変え、全体最適化を図ることができるようになるという。

 ここへきて仮想化が業界のホットな話題となり、サーバ統合の機運をさらに加速しているが、大型のサーバに物理的に集約しているに過ぎないことが多い。もちろん、それによって一定のコスト削減は見込めるものの、複雑さをそのまま持ち込んでいるため、企業を取り巻く環境への柔軟な対応は難しいままだし、新規開発のスピードも鈍いままだ。

アーキテクチャの分断化こそがアキレス腱

 多くのシステムは、プログラムをアプリケーションサーバとデータベース管理システムで稼働させ、それらを連携させながらデータの処理を行っている。それぞれが異なるベンダーである場合、大抵は別々にハードウェアを用意しなければならない。当然ながら管理も、プログラム、アプリケーションサーバ、データベース、そしてハードウェアやOSと、それぞれ別々に行わなければならず、障害時の問題切り分けも難しい。

 三澤氏は、「アーキテクチャの分断こそが、オープンシステムのアキレス腱」と話し、ハードウェアやOSの統合だけでなく、データベースやアプリケーションサーバといった実行環境の統合がオープンシステムの成熟に欠かせないとする。

 Gridではプロビジョニングが重要になるが、そのためにも実行環境であるデータベースやアプリケーションサーバは統合されていなければならない。

 「アーキテクチャが分断されたままでオープンシステムを並べていけば、運用面から破たんする。さらに企業は、内部統制への対応や情報漏えいへの対策を迫られているはずだ」と三澤氏。

photo 内部統制への対応や情報漏えいへの対策を迫られている現在、企業システムも分断アーキテクチャから統合アーキテクチャへの転換を迫られている

 さらに三澤氏は、「アーキテクチャの分断は、コスト面にも大きく影響する」と強調する。

 業務システムごとにアーキテクチャが分断されていると、おのおののシステムの最大ピーク時に合わせたハードウェア投資が必要となるため、導入コストは大きくなる。しかし、アーキテクチャが統合され、Gridの技術で各業務アプリケーションの負荷を分散することができれば、大きなハードウェアを並べる必要はなくなり、大きなコストメリットが得られる。

 運用コストにしても同様だ。アーキテクチャが分断されていれば、アプリケーションサーバ、DBサーバ、個別プログラムと、個別に管理する煩雑性が生じ、運用管理コストを圧迫するが、アーキテクチャを統合することで運用コストも低減できる。

 また、アーキテクチャを統合するメリットとして、「一括監視により運用管理が容易になる」というメリットもある。

 オラクルは、統合したアーキテクチャを一括監視する運用管理ソリューション「Grid Control」を提供しており、Grid Controlで社内のあらゆるシステムを常時一括監視し、障害やリスクがあれば自動的に検知して通知してくれる。これにより、障害を未然に防ぐだけでなく、万が一障害が起きた場合でも、問題個所を特定するまでの時間を大幅に短縮することが可能となり、早期解決に導く。

 さらに、システムの一括監視は、コンプライアンスの観点からも非常に有効だ。社内のあらゆるシステムを常時監視し、セキュリティ上のリスクを自動的に検知できれば、自社システムのコンプライアンス状況がどうなっているのか、最新の状況を一括して確認することができる。その結果、ITセキュリティの現状認識と解決策が明確になり、企業のコンプライアンス向上につながる。

データベースとアプリケーションサーバの緊密な統合

 データベースとアプリケーションサーバの統合は、IT基盤の標準化だけにとどまらない。Oracleでは、統合の度合いをさらに進め、真の高可用性システムを実現するための機能も盛り込んでいる。

 Oracle Application Server 10.1.3で追加された「Fast Connection Failover」機能もそのひとつだ。あるデータベースサーバのノードで障害が発生した場合、正常なノードに再接続する機能だが、統合されていることによってデータベースサーバ側からアプリケーションサーバに障害が自動通知され、ダウンタイムを最小限に抑えることができる。

photo Oracle Application Server 10.1.3の新機能のひとつ、「Fast Connection Failover」

実践が進むIT基盤の全社最適化

 OracleのGridテクノロジーによるIT基盤の標準化や全社最適化の好例として、三澤氏はAmazon.comの大規模データウェアハウスの事例を挙げる。データウェアハウスといえば、業務システムから日々のデータをETL(Extract, Transform, Load)ツールが抽出・変換してデータウェアハウスに送り込む、一連のバッチ処理が欠かせない。つまり、業務システム、ETL、データウェアハウスのそれぞれに、ピーク時に合わせた構成のサーバが必要となる典型的なシステムといえる。信頼性を高めようとすれば、さらに二重化によるコストがかさむ。

 三澤氏によれば、Amazon.comは、OracleのGridテクノロジーを活用し、ETLとデータウェアハウスの機能を16ノードのクラスタで実現しているという。データウェアハウスのサイズは60テラバイトを超え、1日当たり1万のクエリーを処理しているが、幸いなことにETLは夜間に処理される。つまり、夜間はETLの処理にリソースを重点配分し、昼間はデータウェアハウスの処理に切り替え、同じリソースを効率的に活用しているわけだ。

 日本オラクルは6月27日、「Oracle Business Intelligence Suite Enterprise Edition」と「Oracle Warehouse Grid Builder 10g Release 2」を発表、ビジネス・インテリジェンスにおける全体最適化の流れも加速させるとしている。

 また、8月29日から9月1日までの4日間、日本オラクル本社で「Grid Week」と呼ばれる一連のセミナーを開催するほか、7月にはOracle Real Application Clusters 10gの実機研修センターをシステム・テクノロジー・アイ内に開設し、障害対策研修もスタートしている。

 「ITの技術者に求められるのは、“IT基盤のデザイン”と“SOAによるアプリケーションのデザイン”という2つに収れんされていくだろう。差別化を図るためにも、Gridを理解し、その構築ノウハウを身に付けてほしい」と三澤氏は話す。

日本オラクル:「Grid Week」開催概要

情報システム部門の抱えるさまざまな課題を解決し、ビジネスの変化にも柔軟に対応できる、安定した統合インフラを適正なコストで実現すること。つまり、全体最適化された情報システム基盤の構築が、企業にとって大きなテーマとなっています。安定した統合インフラを実現する技術と、その効果を示す事例や検証結果、「Oracle Grid Week」ではそれらをお伝えします。

項目 内容
主催 日本オラクル株式会社
日程 2006年8月29日(火)〜9月1日(金) 13:00〜17:45(12:00受付開始、17階にて受付)
会場 日本オラクル本社(東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニガーデンコート)17階、8階
参加費 無料

※イベントに関する詳細な情報はこちらから


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提供:日本オラクル株式会社
制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2006年9月27日