障害、ここでは視覚障害を持つ人に向けてのソリューションとして唯一最終ラウンドに進んだブラジルも注目度は高かった。こちらは、手首に装着したデバイスが進むべき方向などを振動(およびその強弱)で指し示すというもの。そうした指示はネットワークデバイス経由で行われる。デモが予期したように進まないというアクシデントはあったものの、目隠しをしたチームメンバーが壇上奥から階段を下りて審査員の前にたどり着くまでを正確にナビゲーションした。目隠しをしたチームメンバーが審査員の前で目隠しを外し、にっこりと笑う姿は神々しさすら感じさせた。
観客の評価を二分したのは中国代表チーム。同チームの考え方としては、スロベニアのそれと近いものがある。スロベニアがWebカメラ経由でモーションキャプチャを行うのに対し、中国はセンサーを体に装着することで、身体の動きをアプリケーションに取り込んでいた。
この状態でエクササイズを行うことで、体のどの部位の運動となったか、運動が足りない部位はどこかなどをユーザーに伝えようという同チームの発表は、ジムなどに通っているのであれば把握できる情報ではあるが、これを手軽に取得、参照しようと試みたものだと言える。また、複数人でも行えるのが特徴であるとし、チームを組んで体感ゲームを行うなどのデモも示された。
これは単なる体感ゲームではないか、といった声も会場内で少なからず耳にしたが、確かに少々強引に健康というキーワードと結びつけたようにも思えた。
そして日本。大観衆を前に緊張しているようにも見えたが、発表はこれまでの発表と比べて最も洗練されていたように思えた。特に、オーバーレイで情報が表示された際は、会場から拍手がわき起こるなど、観客の心をつかんでいた。
いかに3D技術が優れていても、モデリングしたものより現実の撮影データなどの方が正確なのではないか、その実用性に疑問はないのか? といった質問や、HMDを装着してしまうことでほかの作業への影響は出てこないのか? などの質問に対しても、モノアイ(一眼)タイプのHMDも検討しており、これによってそうした懸念は解消できる、とスライドを見せながら回答し、これには会場から再び拍手がわき上がった。発表の中でスライドを見せるのではなく、あえて見せないことで質問をそこに誘導するという手法は非常に高度なプレゼンテーション技術であると感じた。
発表を終え、中山さんは「最後に一言」と言うと、それを合図にメンバーが一列に並んだ。何をするのかと思えば、TシャツにプリントしたタグをWebカメラで読み取ると、モニターには「Docterra」の文字がオーバーレイ。「Save the Life」と叫び、最終ラウンドの発表を大歓声に包まれながら終えた。発表時間内で二度拍手がわき起こったのは唯一日本代表チームだけであり、この段階では会場内の誰しもが日本代表チームが上位にラインクインしてくるだろうと考えていた。
次回は同大会の結果を振り返るとともに、日本人がソフトウェアデザイン部門で優勝するためには何が求められるのかを考えてみよう。
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