●ラック/空調周りの対策
ファシリティ周りのディザスタ対策として見落とされがちな事柄が、IT機器の冷却である。発生熱量の増大や機器の高密度化にともない、冷却や空調に関してディザスタが発生する確率も高まってきている。
まず、通常運転時には、ラック内に十分な冷却空気が確保されていることが前提である。通常、ラックに搭載されたIT機器への通風は前面から背面へと流れる。したがって、前/背面のドアの通気開口率はともに60%以上を確保する必要がある。そして、前面側への冷気の供給だけでなく、背面側に放出された熱気を空調装置にきちんと戻るようシステムの冷却設計をする(関連記事)。
また、空調装置もUPSと同様、冗長化を図るべきである。これによりMTBFを長くできるばかりでなく、IT機器の稼動中にも空調装置を1台ずつ停止してメンテナンスすることもできる。
IT機器の高密度化により、通風が止まるとラック内の温度は、ほんの10〜20秒程度のうちに急激に上昇するようになった。このため、空調装置の運転を停電中にも継続させるためにも、IUSPからの給電が必要になってきている。
●保守サービス
ディザスタの影響を最小限にとどめるには、保守サービスが欠かせない。電源/ファシリティ設備メーカーもしくはサービス会社、データセンターなどと保守サービス契約を結ぶのが望ましい。特に重要な設備であれば、対応時間を例えば「4時間以内」という具合にきちんと明記したSLA契約が有効である。
保守サービスにはたいてい、次のような内容が含まれる。
IT機器の安定した稼動を支え、ディザスタの影響を緩和してくれるのが電源やラック、空調などのファシリティだ。これらのシステムを注意深く構築することにより、ディザスタ対策を効率的に進め、システムのより安定した運用を実現することができるだろう。
株式会社エーピーシー・ジャパン 事業戦略本部新規事業開発部担当部長、技術士(電気電子部門)
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