オラクル、「Fusion」の開発に「欠陥ゼロ」ポリシーを適用

Oracleは、2008年に発表する予定の次世代ERPアプリケーションスイート「Fusion Applications」の開発には、欠陥を完全に排除するとしている。ただし、ユーザーが新製品に移行するべきかどうかについては、いまだ不透明な部分も多い。

» 2006年09月04日 07時00分 公開
[Renee Boucher Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 のちに多数のバグが見つかり、大いに不評を買った「E-Business Suite 11i」を2000年にリリースし、クライアント/サーバ型からWebベースアプリケーションに移行したOracleは、次の大規模な開発では絶対に失敗を犯したくないと思っているようだ。

 カリフォルニア州レッドウッドショアズに本拠を置くOracleは、2008年に発表する予定の次世代ERP(Enterprise Resource Planning)アプリケーションスイート「Fusion Applications」の開発に、欠陥を完全に排除するためのポリシーを適用している。

 Oracleでアプリケーション開発担当上級副社長を務めるジョン・ウーキー氏は、「われわれは、いかなるバグも認められないと考えている。最初のバージョンで適切な対策を行うことが何より重要だ。バグはエンジニアリングに問題があるから発生するのであって、無作為に出現するのではない」と述べた。

 Fusionが生まれた背景には、複数の要因があった。Oracleは18カ月間におよぶ熾烈な闘いの末、自らもJD Edwards買収後の対応に追われていたPeopleSoftを取得したが、その結果、PeopleSoftとJD Edwards(のちにSiebel Systemsもこれに加わる)が所有していた技術の「最高の部分」を、自社に取り入れる方法を必要としていたのである。また、新たな主流テクノロジーとして台頭してきた、SOA(Service-Oriented Architecture)の存在も無視できない。

 PeopleSoftを会社の取締役たちから何とか奪い取ったあと、Oracleは「Project Fusion」の立案を始めた。同プロジェクトは、OracleのE-Business Suiteや、PeopleSoft、JD Edwards、Siebelをはじめとする複数の企業から取得した機能を含むばかりでなく、Oracleの「Fusion Middleware」プラットフォームを基礎として、SOAコンセプトをも取り入れている。

 日没が早まりつつある晩夏のある日、ウーキー氏はマスコミとアナリストを相手に、同社のIT部門が進めるSOAへの移行計画や、そうした取り組みが、業界、Oracle自身、Oracleの顧客に対して持つ意味について語った。「業界の隅々にまで、極めて大きな影響が及んでいる」(ウーキー氏)

 ベンダーにとって、現在普及している技術から次世代のテクノロジーへ投資の重点を移す最適なタイミングを計るのは、非常に難しい。この見極めを誤ると、市場に新技術を投入するのが早すぎたり、反対に遅すぎたりといった事態が起こる。どちらに転んでも、ベンダーは不利な状況に置かれることになると、ウーキー氏は説明した。

 一方で、ユーザーも業績を悪化させるのではなく押し上げてくれるような新技術に投資するチャンスをうかがっているが、好機が到来するまで待つことのできるケースはほとんどないという現状がある。「われわれの元には、新たな機能を求めるべきか否かについての選択肢が一切与えられていないように感じるという顧客の声が、常に寄せられている。ユーザーは、自らの準備が整っていようといまいと、移行せざるを得なかったのだ」(ウーキー氏)

 Oracleは今、こうした悪評の払拭に奔走している。同社ではいつどのようにFusionへ移行をするのかは顧客に任せており、「移行という選択肢を押しつけたことはなかったと考えている」と、ウーキー氏は述べた。

 OracleがPeopleSoftの取得に動き始めた2003年当時、Larry Ellison氏は、買収が成功した暁には相手企業のソフトウェアの提供は中止し、ユーザーにはOracleのE-Business Suiteに移行してもらうと発言して、PeopleSoftおよびJD Edwardsのユーザーに対する「選択肢」をまったく考慮していないかのような印象を与えた。

 大規模な顧客離れが起こるのは必至と見られ(Oracleの最大のライバルであるSAPは、PeopleSoftおよびJD EdwardsからSAPへの安全な移行を支援する「Safe Passage」プログラムを立ち上げている。同社によれば、これまで300件の移行をサポートしたという)、アップグレードが強制された場合は、顧客が訴訟を起こすかもしれないとまでささやかれた。

 だがOracleは、PeopleSoftの強引な買収に対する反感を買う一方で、ユーザーの懸念を軽減するための対策を徐々に進めてきている。例えば数カ月前には「Apps Unlimited」キャンペーンを立ち上げ、Fusion Applicationsの提供開始後も、PeopleSoft、JD Edwards、Siebelの各製品ラインの機能強化を継続することを確約した。

 「この18カ月間、実にいろいろなことがあった。Oracleはどのような方針を採用しているのか、全体的な目的は何なのかを、人々に理解してもらえるようさらに努めたい」(ウーキー氏)

 サポートおよび開発計画については、より具体的な情報が明らかになっている。Oracleは2006年1月、「Halfway to Fusion」イベントで、Fusion Applicationsが「Oracle E-Business」のデータモデルに基づくことを発表した。

 もっとも、いまだにはっきりしない事柄もある。Fusion Applicationsスイートには、どの製品のどの機能が含まれることになるのか。Oracleのデータベースにのみ対応し、IBMの「DB2」を利用している多くのPeopleSoftおよびJD Edwardsユーザーは移行を余儀なくされるのか。PeopleSoftおよびJD Edwardsユーザーは、Fusionに関して移行やアップグレードを検討しているのか――これが最も気になるところかもしれない。

 いずれにしろ、時間が答えを出してくれるだろう。

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