問題だらけの旧体制にITをはめ込む愚企業にはびこる「間違いだらけのIT経営」:第11回(1/2 ページ)

多くのITは「導入してからが本番」というケースが多い。ある中堅企業のSCM導入を例に、組織の意識づけと運用の方法について考えてみる。

» 2006年09月05日 12時30分 公開
[増岡直二郎,アイティセレクト編集部]

意識と運用の仕方でSCMの力が決まる

 モーターを製造・販売する中堅企業B社の生産計画は、6ヵ月先までの大日程計画、1ヵ月間の中日程計画、週単位の小日程計画、日々の作業計画に分けられ、いずれも負荷・能力のスケジューリングをする。

 大枠の日程計画では受注を大ざっぱに山積みしていく。いっぽうで顧客の短納期要求に応える工夫として、ある条件を満たした受注確度が高い案件は内示手配できるシステムにした。

 内示で、共通部材や入手・加工に日数のかかる部材の先発手配ができる。ここに問題があった。作業量が多く製造現場が多忙の時期は、営業は作業能力確保のために受注確度の低い案件まで内示した。逆に製造現場が暇な時期は、内示要件を満たした案件でもなかなか手配をしなかった。

 それが度重なり、工場と営業間に不信感が生じる。情報共有に対する認識が空文化してまうと、SCMのチェーンは切れてしまう。これは意識が旧態依然として変わっていないからである。

 大枠の日程計画よりも細かいスケジュールを決める中日程計画は、能力と負荷を日別・工程別にスケジューリングする。しかしいざ翌月の中日程計画を立ててみると問題が噴出する。ST(Standard Time 標準作業時間)が不正確で無理があるから、日別展開すると実態と乖離が出てくる。実行段階であちこちに少しずつ遅れが生じ、それが積み重なっていく。せっかくの営業からの進捗状況問い合わせも機能しない。

 このシステムはスケジューリング機能が良くできていて、例えばある案件が約束どおり計画できないときは原因のネック工程や問題部材などを示してくれるが、その案件を優先する計画に変えるとほかに遅れの連鎖が出てくる。手を打つ必要があるが、提起される問題解決に手間がかかり、時間切れで生産月に突入しトラブルが発生する。従って中日程計画で示された問題が解決されるわけでも修正されるわけでもない。これはシステム運用上の問題である。

 さて、生産管理の中核を担う、製造の工程管理者が頼りとすべきなのはさらに細かいスケジュールである小日程計画と作業計画である。

 週単位の小日程計画は、顧客の納期変更要求、リアルタイムに把握された部材の入庫状況・作業工程の進度などを加味してスケジューリングされる。その結果、部材の遅延情報や遅延予告、ネック工程などが警告として示される。工程管理者がそれによって1週間分の手が打てる、というのがシステム導入前の触れ込みだった。しかし実際は、目の前の作業計画への対応だけで毎日がつぶれてしまう。

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