ポッドキャスティング、企業で成功(3/3 ページ)

» 2006年10月06日 16時32分 公開
[Stan Gibson,eWEEK]
eWEEK
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社内外のコミュニケーションに活用

 一方、ニューヨーク州アーモンクに本社を置くIBMでは、社内および社外のコミュニケーションにポッドキャストを利用している。同社は投資家向けのWebサイトでポッドキャストを配信しているが、社内でもポッドキャスティングが急速に成長している。

 IBMのニューメディアコミュニケーション担当マネジャー、ベン・エドワーズ氏は、「これはファイアウォールの内側にいるすべての人――IBM社員、契約スタッフおよびパートナーがアクセスして利用できるツールだ」と話す。エドワーズ氏によると、IBMは2005年10月にポッドキャスティング構想を立ち上げ、現在では毎週3万〜4万件のダウンロードがある。今のところはオーディオ配信が中心だが、ビデオやPowerPointプレゼンテーションが含まれるポッドキャストもあるという。

 IBMでは、「Podcast Publishing Pilot」という自社独自のソフトウェアを使用している。このソフトウェアは、同社のCIOオフィス内に設立されたいわゆるWeb-Ahead開発チームが開発した。「これは、データ、オーディオ、ビデオ用の編集ツールだ」とエドワーズ氏は説明する。IBMは、2000本以上のポッドキャスティングタイトルを、検索可能なディレクトリを通じて提供しているほか、RSSフィードとしても利用できるようにしている。「ユーザーはコンテンツを5段階で評価し、コメントを投稿することもできる」とエドワーズ氏は話す。

 同社で人気の高い利用方法の1つが、グローバルチーム間のコミュニケーションのツールとしてポッドキャストを利用するというもの。「ポッドキャストをブログに添付し、フィードバック機能を利用してコミュニケーションを行えば、メンバーを午前3時に起こしてテレカンファレンスに参加させなくても、グローバルチームが相互に意志疎通を図ることができる」とエドワーズ氏は説明する。全世界に7000人余りいるIBMのサプライチェーン担当スタッフも、ポッドキャストとブログをテレカンファレンス代わりに利用しているという。これほどの人数になれば、テレカンファレンスにダイヤルインして参加するのは現実的ではない。

 ポッドキャストを制作する企業は、コンテンツのコントロールという問題に取り組まなければならない。IBMでは、ファイアウォール内で配信されるポッドキャストについては無干渉主義で臨んでいるが、社外に配信されるものに対しては厳格なコントロールを行っている。

 「広告の真実性について定めた法律もある。われわれはIBM.comが発行するコンテンツに対し、広告の真実性について厳しくチェックしている。法務、人事、マーケティング、渉外の各部門の担当者がコンテンツの評価を行う」とエドワーズ氏は説明する。法的問題だけでなく、企業イメージも極めて重要だ。「ブランドの問題もある。つまり、一貫性があり、しかも特定の雰囲気が伝わるようにコンテンツをコントロールするということだ」(同氏)

 ブログの場合と同様、社内向けのポッドキャスティングについては、IBMは従業員にかなりの自由を与えつつ、自己責任で利用するよう求めている。ポッドキャスティングとほかのコミュニケーション形態との間には大きな違いはない。「われわれは既に電子メールやIM(インスタントメッセージング)を利用している。われわれは、これらに関して潜在的な責任を負っているが、全般的に見れば、これらの手段は問題なく機能しているように思える。例えば、多くの従業員は見込み情報がSEC(証券取引委員会)の規制に違反することを理解しているようであり、そういったことに対しては慎重だ」とエドワーズ氏は話す。

 保険業界には多くの規制が存在するため、MassMutualでは販売担当者向けに配信されるコンテンツが、関連するすべての法律に違反しないようにしなければならない。ブキャノン氏とマクマーオン氏は毎週木曜日に、MassMutualのコンプライアンス部門が原稿をチェックした後でポッドキャストを制作する。「ほかの販促資料と同じく、弁護士が原稿に目を通している。彼らは録音の前に原稿をチェックする。開示情報を追加するなど、ちょっとした修正を加えることもある」とシチェバック氏は話す。

 IBMでは、ポッドキャスティングの影響が深く浸透し、現在では、サム・パルミザーノ会長兼CEOが提唱する新しい企業理念を従業員に伝えるのにも利用されている。エドワーズ氏によると、パルミザーノ氏は「重心を下げる」必要性についてIBM社員に話しかけているという。

 「IBMには階層制度と官僚主義という歴史がある。しかしわれわれは、それを打破したいと考えている」とエドワーズ氏は話す。

 「パルミザーノ氏は、IBMが垂直的な組織ではなく水平的な組織になり、権限と意思決定を現場の人間に与えることを望んでいる。新しいメディアは、この移行を促進する上で重要な役割を果たす。わたしは社員による自己発信を奨励している。なぜそれが望ましいかと言うと、人々が組織や企業の声よりも個人の声をを信用するようになってきたからだ」(同氏)

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