Siebel CRMの最大の敵はスクラッチ開発のCRM――金融業界に向けた日本オラクルの取り組み

日本オラクルと日本オラクルインフォメーションシステムズ(OIS)は、金融業界における取り組みを報道陣に説明した。その多くがスクラッチで開発された金融業界のCRMシステムをSiebel CRMでねらい撃ちする。

» 2006年10月10日 21時08分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 日本オラクルと日本オラクルインフォメーションシステムズ(OIS)は10月10日、金融業界における取り組みを報道陣に説明した。

 ERPの「Oracle E-Business Suite」(EBS)や銀行勘定系アプリケーション「FLEXCUBE」などをはじめ多くのアプリケーションを持つ同社。このうち、CRMの導入が比較的進んでいる金融業界においては、そのほとんどがOracle製品を導入している。日本オラクルの常務執行役員エンタープライズアプリケーション営業統括本部長の桑原宏昭氏によると、EBSを用いた新BIS規制対応ソリューションを14行が導入、FLEXCUBEも新規導入が1件決まるなど、オラクル、OISの金融機関向けソリューション事業は好調に推移しているという。

 「製造業ではSAPかもしれないが、こと金融業について言えば、70%以上がOracle製品を選択しており、この半年を見ても金融機関向けソリューション事業は旧年の倍近いビジネスができていると現時点では考えている」(桑原氏)

 OIS代表取締役の村上智氏は、リテール・バンキング業務、カード業界、保険業界などサブインダストリーごとの課題を紹介しつつ、それら金融業界に共通する課題として村上氏は「収益向上」「業務改善」「コンプライアンス」を挙げた。

 金融業界におけるCRMやERM関連の投資傾向などについても触れた。約260億円とも言われる国内のCRMパッケージ市場。しかし、このうち81%のCRMがスクラッチで開発されたものである点に着目し、そこにこそ自社の成長余力があると述べた。

 スクラッチ開発では通常、アプリケーションとデータが一対となっているため、いざ連携しようとしても、プログラム単位で行う必要があり、非常に工数が掛かってしまう。これを1つのデータに対して各アプリケーションが処理を行うパッケージ製品を導入することで、迅速なサービスインへとつなげることが可能となるが、その時間差こそが競争の激しい市場において競争優位性を確率できる1つの要素であると村上氏は話し、「Siebel CRM」をはじめとするOracle製品がそうしたニーズに応えるものであることを訴えた。

 標準的かつすでに効率化を実現したベストプラクティスのプロセスを定義し、アプリケーション機能にマッピングする「Siebel ePlan」を用いることで、カスタマイズを最小限に抑えることが可能となり、迅速な導入だけでなく、制度変更や規制対応にも容易に対応できることが、上述のようなスクラッチ開発でのシステムと比較した場合のメリットであると強調した。

同社の金融ソリューション全体像

 「Oracle製品は統合的な機能を提供するため、(単機能であることが多い)ベンダーは直接の競合とならない。スクラッチこそが最大の競合」と桑原氏。CRMアプリケーションをSaaS(Software as a Service)型で提供するなど、積極的なCRMビジネス戦略を採っているが、金融業界においても同様の姿勢で、今後、銀行のスクラッチで開発されたCRMや、保険業界のコンタクトセンターソリューションなどを積極的に狙っていくと述べた。

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