「Apex」はSalesforce.comの強力なドライバとなる(1/2 ページ)

Salesforce.comは、新たなオンデマンド言語でビジネス拡大にてこ入れを行う。SIベンダーに対し、サービス主体の市場拡大へどのような回答を示すのか? インタビューで聞いた。

» 2006年10月12日 14時54分 公開
[谷川耕一,ITmedia]

 Salesforce.comは、既報のように「Apex」と呼ばれるオンデマンド開発言語、およびプラットホームの提供によって大きな変革を行う。オンデマンドCRMのサービスに加え、オンデマンドプラットホームベンダーへとビジネス拡大をする。

 このようなビジネスの変化で、従来のダイレクト販売中心の体制からパートナー企業との連携面でも変化が起こりつつある。パートナーとの関係、およびAppExchange、ApexをどのようにISVなどへ拡大していくかについて担当者に話を聞いた。

パートナー協業でも顧客の成功を考えるべき

 特に日本で顕著な傾向かもしれないが、ハードウェアベンダーや大手のSIベンダーが市場で大きな影響力を持っている。彼らの価値は、ハードウェアからソフトウェアまでを適宜選択し、それらを組み合わせて顧客の要望に合わせて動かすところにある。このようなスタイルとオンデマンドのスタイルでは相容れないものがあるが、企業との関係をどのように築くのか? という質問に対し、ワールドワイドチャネル、アライアンス担当SVPのBobby Napiltonia氏が答えた。ハードウェアやソフトウェアにコストをかけることに対し、顧客自身の考え方はすでに変わってきているという。

 最近では、既存システムの統合などにIT予算の多くが割かれるようになっている。新たなハードウェアであるサーバを調達してアプリケーションを構築するのではなく、既存のアプリケーションやサービスをいかに効率的に管理運用するか? そして、そのためにはどのようにシステムやサービスを統合するかを顧客は考え始めているという。その場合で1つの選択肢には、オンデマンドサービスへの移行も入ってきているというのだ。

 「顧客の状況をいち早く察知した賢い企業は、Salesforce.comとすでにパートナー関係を築いている。アクセンチュアしかり、日本においても日立ソフトウェアエンジニアリングや新日鉄ソリューションズ、みずほ情報総研などとすでに代理店契約を結んでいる。また、かつてはオンデマンドサービス自体のビジネスサイズが小さいと思われていたが、実際のところサブスクライブ型のビジネスボリュームはかなりの規模があることに、大手のベンダーも気づき始めている」(Napiltonia氏)

 今回のApex登場によって、開発系のISVなどとの関係はさらに深まるのではないか? という問いに対しては、ベンダーが抱えているアプリケーション開発のバックログのうち、幾つかについてはオンデマンドへと移行できると考えるだろうという。物理的にサーバを購入しそこで構築するのと同じように、Salesforce.comのオンデマンドプラットホームを開発環境と考えるようになるということだ。

 また、ハードウェアベンダーはハードウェアを販売する、ソフトウェアベンダーはソフトウェアを販売するという考え方も、ビジネスとして分岐点に来ているともいう。特にソフトウェアに関しては、今後はサービスを提供する方向にシフトするとのことだ。古いタイプのソフトウェアを扱っていると、OS、データベース、アプリケーションを販売し、さらにそれらが稼働するように構築することの苦労が大きい。このようなサービスを提供するベンダーは、いったん稼働させてしまえば完結し、その後、顧客がどのように利用するのか、そして、そのシステムで成功するかについてはあまり関知しない。

 Salesforce.comの場合は、サービスの提供開始から顧客との関係が始まり、継続して顧客の成功に寄与することになるという。

 さらに、サービスを稼働させるためになんら苦労はない。そのため、システムの構築を前提とした代理店関係ではなく、「レファレルモデル(referral model)」というサービスの紹介の仕組みも成り立つ。システム開発をサポートしないチャネル、たとえばBlackBerryの携帯電話端末を販売するような企業が、携帯電話の付加価値としてSalesforce.comのサービスを紹介し、そこを経由して契約が成立するとなんらかのマージンを得られるという仕組みだ。

 また、既存システムとのインテグレーションに関しては、ティブコやインフォマティカなど、新たなパートナーとの連携も始まっている。さらにシスコシステムズやEMCなど、大手企業との新たなソリューション領域での連携も始まっており、さらにSalesforce.comのサービスは広がりをみせるとのことだ。

技術者がより扱いやすい開発環境を提供する

 今後Apexをパートナーの技術者に普及させるための方策としては、Apexアライアンスという活動を強化していくとのことだ。

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