インターネットへの接続性に関して確実な予測が立てられないという理由から、自動アップデート機能の搭載もしくは非搭載を決めるのは「実に難しい」と、クリスティッチ氏は述べている。100ドルPCには無線メッシュネットワーク機能が内蔵されており、電源が入っていないときには、ほかのラップトップに接続した各ラップトップが無線メッシュルータの役目を果たす。だが、アップデートを確実にダウンロードできるほど安定したネットワークではないという点が、ネックになっているそうだ。
「現時点では、アップデートに依存する度合いをなるべく低くすることに全力を挙げている」(クリスティッチ氏)
一方、オープンソースの支持者であり、マイアミに本拠を置くImmunityの脆弱性研究者でもあるデイブ・アイテル氏は、OLPCによるモノカルチャーが深刻なセキュリティリスクをもたらすという懸念は、やや誇張されていると指摘する。「そもそも、途上国の子供たちを誰がハッキングしたいと思うのだろうか。また、100ドルラップトップはMicrosoftの「Windows 95」マシンほど脆弱ではないし、それどころか多くの点で、新OS「Vista」より洗練されていると言ってもよいくらいだ」と、アイテル氏はインタビューの中で述べた。
「モノカルチャーにおいてはこうした安全な環境を創出するのがきわめて困難」(アイテル氏)だが、100ドルラップトップの場合、ASLR(Address Space Layout Randomization)によって強化された最新のLinuxを実装して、コードスクランブルの多様化や「Exec Shield」を処理できるようにしたことがアドバンテージになるという。Exec Shieldは、データメモリおよびプログラムメモリに、それぞれ実行不可および書き込み不可というフラグを付与するセキュリティパッチ。
OLPCのソフトウェアおよびコンテンツ担当プレジデント、ウォルター・ベンダー氏は、同団体は多様なコンピューティング環境の構築を長期目標に掲げており、「モノカルチャー」の出現を危惧する論調は少し大げさではないかと指摘した。
「OLPCでは、今後の進化を視野に入れ、100ドルラップトップをオープンプラットフォームとしてデザインしている。万が一、市場がモノカルチャーに陥っても、オープンプラットフォームであれば進化や変化を期待できることは過去の事例からも明らかだ。われわれのマシンがそうならないと考える理由はどこにもない」(ベンダー氏)
「われわれがあらゆる要素を管理できる環境下では、厳密な意味でのモノカルチャーはそう長くは続かないと思っている」(ベンダー氏)
ベンダー氏は、OLPCは何より多様性を助長することを目指していると繰り返し強調した。「短期的な目標ということであれば、製品やサービスの提供になるだろう。しかしわれわれは、非営利の教育機関であって、ラップトップ製造企業ではない。人々が自らの力で押し広げ、子供たちに与えることのできるエコシステムを作ろうとしているのだ。これをモノカルチャーと呼ぶことはできないだろう」(ベンダー氏)
OLPCはマサチューセッツ工科大学の関係者が設立した組織で、Advanced Micro DevicesからeBay、Google、News Corp.、Nortel Networks、Red Hatに至るまで、並み居る大企業の支援を受けている。
Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.