パッケージ導入の常識を覆す――ボトルネックから突破口を切り拓く!事例から学ぶ「座礁しないERP」(1/2 ページ)

海外生活サポート事業で順調な成長を続けるラストリゾート。同社は現在ERPシステムを構築中だ。業務の「入り口」から「出口」までを網羅する欲張りなシステムはいかにして発案されたのか。

» 2006年10月18日 11時00分 公開
[アイティセレクト編集部]

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CRMとSFAの機能を含んだERP

 ラストリゾートは98年創設の海外生活サポート事業で急成長を続けるベンチャー企業だ。ワーキングホリデー、社会人留学、シニアのロングステイなど扱う商品は幅広い。

 従業員数約200名、売上高約30億円の同社は05年の8月にSAPと契約を結びERPパッケージの導入を進めている。現在想定している導入費用は3億円。07年春の本格稼働を目指し、現在もシステム構築が進められている。

 同社のERPシステムの特徴はCRMに重心を置いているということだ。情報システムグループ チーフの名取和高氏は次のように語る。

 「SAPのR/3とCRMで全体最適を図ろうというのが、今回のプロジェクトの大きな狙いです。CRMはSFAの機能も含んだものです。まずSFAで当社の営業部のカウンセラーの営業支援を行い、お申込みいただいたあと、当社のほうでいろいろなサービスを提供したり、渡航される前の手続きを当社で請け負ってやらせていただきます。例えばそこでお客様のニーズなど、一人のお客様に対して相当な量の顧客情報が発生します。それは当社にとっての命といっていい」

 顧客情報は一度契約するとあまり追加はないと思われがちだか、顧客と担当者が留学に関する打ち合わせをするたびに、追加されていくという。

ラストリゾートのERPシステム構成図

 「お客様の情報は、一週間に一度、場合によっては日々、ステータスがどんどん変わっていきます。営業段階で言うと、このお客様は、カウンセリングを受けたことがあるのか。そのあとで言うと、どこまで手続きが進んでいるのか。そういった細かいところまでお客様の情報を管理することが、今後の成長につながります」(名取氏)。

いまこそ全体最適を実現する

 SFAで営業支援をした後、成約となれば、顧客の情報を溜め込んで行き、CRM機能を利用して顧客満足度を上げていく。当然、契約などの事務作業にも活用しようというわけだ。業務に対して、フォローする範囲が非常に広い「欲張りシステム」である。

 ラストリゾートが現在運用している基幹システムは2代目。初代のシステムを機会のあるごとに改良してきた。3年前に名取氏が入社した時はサーバーはアウトソーシングしていたが、現在は社内に戻している。ERP導入が決定した際、パッケージ製品を5種類選び、比較検討したという。SAP製品にはBusiness Oneなどの中堅・中小企業向けのものがあるが、あえてR/3および関連モジュールを選択したのは、システム基盤として大きなものを選択し、今後の成長に耐えられるものにしたかったからだという。

 「顧客がこれから2倍、3倍になっていくことを想定すると、どーんと大きな基盤の上に乗っていた方がいいと考えました」と名取氏は語る。

 同社では「カウンセラー」と呼ばれる担当者が相談に訪れた人たちに対応するわけだが、まずはこの入り口の部分からしっかりと情報として見える化していこうというこのシステムは、かなり野心的なものだ。

 情報を更新するために、顧客の相談に応じる度に入力していく必要があり、さらに実際に契約がなされてからは、入金などがあり、その都度事務作業が発生するという。

 現在はこの入力作業はエクセルなどで整理して、創立当初から稼働しているシステムに情報を移しているのだが、こうした作業は煩雑で、それだけの作業を省力化するだけでも、かなりのコスト削減が見込めるという。ERP導入が来春本格稼働すれば、約6億円の売り上げ増が期待できるという。

 

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