NGNを視野に3つの賭けに出るシスコ

シスコシステムズは8月からの2007年度、「クワッドプレイ」と「ユニファイドコミュニケーション」「中堅/中小企業」という3つの分野に重点的に取り組む方針だ。

» 2006年10月19日 22時01分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 「シスコシステムズは8月からの2007年度、データと音声、ビデオ、モバイルを統合した『クワッドプレイ』と『ユニファイドコミュニケーション』、そして『中堅/中小企業』という3つの分野に重点的に投資していく。これらの『大きな賭け』にフォーカスする」――シスコシステムズの代表取締役社長、黒澤保樹氏は10月19日、同社の方針説明会の席においてこのように語った。

 一連の取り組みには、次世代ネットワーク(NGN)というインフラが密接に関わってくる。黒澤氏は「私の意見では、NGNとは経済の潜在成長力を今の2%から3.5%超に高めるもの。今までできなかったことを可能にし、参加できなかった人が参加することにより、新たな付加価値が加わり経済成長につながる」と述べ、その上でクワッドプレイやユニファイドコミュニケーションを展開していく方針を明らかにした。

 「クワッドプレイは世界の中で日本が一番進んでいる。世界のサービスプロバイダーの戦略を日本からドライブしていきたい」と黒澤氏は述べ、日本のNGN向けに開発した製品群を世界に広めていくことが大事だとした。

富士通との提携に基づくルータの開発も、日本発世界に向けた取り組みの1つと述べた黒澤氏

 またユニファイドコミュニケーションについては、特に企業向けの取り組みを強化していく。エンタープライズ市場ではすでに、従来型のPBXからIP-PBXへの移行が始まりつつあるが、さらに「NGNによってどんどん新しいアプリケーションも出てくる。ビデオとの連携もあるだろう」と同氏は述べ、新たなパートナーの開拓やISV/IHV向けのコンピテンスセンターの整備などに取り組むとした。

 「これまでエンタープライズの営業部隊は主にルータやスイッチ、あるいはセキュリティ製品やストレージ製品の販売を行ってきたが、今期はこの部隊をすべてユニファイドコミュニケーションに充て、結果としてルータやスイッチなどのインフラも販売するという形を目指す」(黒澤氏)

 また、これまでも取り組んできた中堅/中小向け市場では、ディストリビューターやリセラーのさらなる開拓に努める方針という。

 黒澤氏は説明会の席で、「日本のコンシューマーの感度は高く、いろいろな形でITを活用しており、その意味で世界でも最も進んでいる。それが企業に入ると全然使われていない」と指摘し、ITへの投資額と企業/政府の生産性は密接な関係にあるという持論を展開。同時に、せっかくのIT投資の効率性を高めるためには、標準化とコンバージェンス、仮想化という3つの要素が重要だと述べた。

 さらに、さまざまな業務アプリケーションを活用したビジネスプロセスをスムーズにするために、コミュニケーションやコラボレーションを支援するアプリケーションの役割が高まると予測。例えばNTTグループが予定しているNGNのフィールドトライアルなどを通じて新たなアプリケーションを実際に試してもらい、ユーザーの体験(エクスペリエンス)をリードしていきたいという。

 「シスコというとネットワークの企業と言われる。しかしわれわれは、自らをITとコミュニケーションのリーダーと位置付け、ユーザーのエクスペリエンスをどんどん向上させるという役割を担っていく」(黒澤氏)

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