アウトソーシングの成功のカギは顧客とプロバイダーの関係

アウトソーシング関係の中にひそむ落とし穴をいかに避けるか。これが、その半数近くが失敗に終わるというアウトソーシング契約を成功に導くための基本でありすべてでもある。

» 2006年10月20日 07時00分 公開
[Stan Gibson,eWEEK]
eWEEK

 アウトソーシングで最も大切なのは関係だ。

 これが、10月17〜18日にニューヨーク市で開催された「Outsource World」カンファレンスのメッセージだった。カンファレンスのさまざまなプレゼンテーションでの中心的なテーマは、アウトソーシング関係の中にひそむ落とし穴をいかに避けるかということであった。

 アウトソーシング契約を結ぶ顧客企業とプロバイダーのほとんどは、繰り返し言われている原則を知っている――「アウトソーシング関係を成功させるためには、きちんと管理しなければならない」ということである。しかしそれでも、多くの過ちが起きるのだ。実際、すべてのアウトソーシング契約の半数近くが失敗に終わっていると指摘する専門家もいる。

 アトランタにあるアウトソーシングコンサルティング会社、TPIのパートナーで、General MotorsおよびCoca-Colaのアウトソーシング部門の責任者を務めた経験もあるクロード・マレー氏は、「アウトソーシング関係の50%近くが失敗する。企業は契約管理の重要性をようやく理解し始めたばかりだ。これは基本的なことであり、決して高度な能力を必要とするものではない。だが原則を守る必要はある」と話す。

 マレー氏によると、全世界の多数のアウトソーサーに適用できる基本的な契約フレームワークを作成することが非常に重要だという。IT業界で長いキャリアを持つ同氏は、「われわれは『グローバルに考え、ローカルに行動する』という考え方から、グローバルコラボレーションという考え方にシフトしつつある。アウトソーシングに関する限り、あらゆる場所にすべてのサービスを提供できるサプライヤーは存在しないため、複数のソースを利用しなければならない。そのためには、管理可能な契約プロファイルを作成する必要がある。何百件もの小さな契約をグローバルに管理するのは非常に難しいからだ」と語る。

 さらにマレー氏は、自社のニーズにグローバルに対応できる体制がサプライヤー側に整っていることを確認する必要もあると指摘する。それを実現するために顧客企業側が果たせる役割もあるという。「サプライヤーのインフラを理解し、彼らがグローバルにサービスを提供するようなインセンティブを与えることが重要。サプライヤーがグローバルにサービスを提供するのを顧客側が支援する必要があるのだ。彼らが自主的にそうするのを期待してはいけない」とマレー氏は話す。

 ニューヨークにあるBear Stearnsの上級業務執行ディレクター、ジョン・エリオット氏は、アウトソーシング契約を作成する「機械的な装置」を構築しようと考えている。これは、法務、購買、事務処理など広範なスキルを持った人材をうまく組み合わせたチームを結成することを意味する。エリオット氏によると、成功するための最大のポイントは、現実的なアプローチを採用することだという。「われわれがアウトソーシングを行うのは、会社にとって経済的な合理性があるからだ。われわれは常に、その点を最も重視している。適切なタイミングと適切な価格で適切な人材にアクセスしたいのだ」(同氏)

 アリゾナ州スコッツデールにあるコンサルティング会社、Quality Service Solutionsのフレッド・マップCEOによると、アウトソーシング関係をうまく機能させる上で最も重要な要素はコミュニケーションだという。「アウトソーシング関係の管理に関連した問題の60%は、コミュニケーション不足が原因だ」とマップ氏は指摘する。

 Panasonic Americaのボブ・シュワルツ元CIO(最高情報責任者)によると、多くのアウトソーサーは顧客のビジネスを十分に理解しておらず、それが原因でコミュニケーションギャップが生じることもあるという。「ほとんどのアウトソーサーはしっかりしたスキルを持っている。不足しているのは、当社のミッションに対する理解だ。これは、遠く離れた人々には分からないことだ」とシュワルツ氏は語る。

 ニューヨークにある経営コンサルティング会社のOpera Solutionsの業務執行ディレクター、ピーター・ナッグ氏は、「インドでは多くの若者が、わずか3〜5年の経験しかないのにアウトソーサーとして働いている。彼らは技術を理解しているが、ビジネスは理解していない」と話している。

 しかし理解というものは双方向でなくてはならない。人材コンサルティング会社のDNL Globalのローリ・ゴールドマン社長は、アウトソーシング関係マネジャーの人選では、知識と適応能力を重視する必要があることに気付いたという。「アウトソーシング関係に不満を持っている顧客は多いが、彼らは自分たちの管理スキルの不足が原因だと考えている。管理には厳格さと忍耐力が大いに必要とされるのだ」と同氏は話す。

 テキサス州アディソンに本社を置くアウトソーシングコンサルティング会社、Alsbridgeの経営パートナーであるベン・トローブリッジ氏によると、スキルを持ったマネジャーよりもベテランの技術者にアウトソーシング関係の管理を担当させる企業が多いが、それは間違いだという。「契約に基づいてプロバイダーを管理するには、独自のスキルが必要とされる。企業は忠実な社員を契約担当マネジャーにしようとするが、彼らがアウトソーサーに敵意を抱く場合もある」と同氏は指摘する。

 さらにトローブリッジ氏によると、あまり多くのペナルティ条項を契約に含めると、アウトソーサーの反発を招きかねないという。「あなたは同じような条件で人を雇うだろうか」と同氏は問いかけ、多くの契約に含まれているくどくどとした条件はすべて、アウトソーサーをペナルティで脅すものであると指摘する。

 同氏によると、顧客はアウトソーシングプロバイダーが利益を上げているのを喜ばなければならないという。同氏は「プロバイダーの利益がどこから来ているのかを知るのはよいことだ」としながらも、米国のプロバイダーはかつてなく低い利益率にあえいでいると指摘する。「だからプロバイダーに対する姿勢も変える必要がある」と同氏は語り、リスクと報酬を共有することを念頭に置いて契約書を作成すべきだと提案する。

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