「その機能を追加したら100万円かかります」――費用対効果にはコミットメントを事例から学ぶ「座礁しないERP」(1/2 ページ)

海外生活サポート事業で順調な成長を続けるラストリゾートは、新サービスの立ち上げは1カ月が勝負だという。同社は現在ERPシステムを構築中だ。猛スピードで走るベンチャーを支える情報基盤とは?

» 2006年10月20日 11時00分 公開
[アイティセレクト]

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発案を迅速に商品化するには

 ラストリゾートは98年創設の海外生活サポート事業で急成長を続けるベンチャー企業だ。ワーキングホリデー、社会人留学、シニアのロングステイなど扱う商品は幅広い。

 従業員数約200名、売上高約30億円の同社は05年の8月にSAPと契約を結びERPパッケージの導入を進めている。現在想定している導入費用は3億円。07年春の本格稼働を目指し、現在もシステム構築が進められている。

 このシステムは留学や海外生活を希望する顧客が同社の担当カウンセラーに相談に訪れた時点から、実際に海外で生活を始め、さらにいろいろなオプションを利用したり、カウンセリングを受けるなどの段階の情報、事務処理情報まで、ありとあらゆる情報を取り込むという、CRM機能を大幅に強化したERPシステムである。

 同社のようなベンチャー企業は動きが早い。猛スピードで提案された新しい取り組みが実現に向かって動く。同社の手法はサービスをパッケージ化して流れ作業で販売しているのではない。人の手が数多く入り、顧客へ提供されていくのだ。そうしたものを会計も含めてうまくスキームとして乗せていくには、やはりERPが必要ということになったという。

新サービス立ち上げを1カ月で

 ラストリゾートの情報システムグループ、チーフ名取和高 氏はそうした動きの早さについて次のように説明してくれた。

 「95年の1月に、ホットラインというサービスを立ち上げました。これは月に一度、渡航されたお客様の親御さんに対してリポートを提出するというサービスです。当社のスタッフとお客様が電話でお話して、それをリポートにまとめます。親御さんにとっての信頼感ですね。また当社はいままで英語圏を主に取り扱ってきたのですが、今後はヨーロッパやアジアにも進出したいということで、韓国のワーキンクホリデーや語学留学という商品を開発することになりました」

 韓国へのワーキンクホリデーや語学留学は話題性が先行したもの。もちろん定番商品となる可能性は十分にあるが、現実はふたをあけてみないとわからない。しかし、関心を集める外国への商品を作らないわけにはいかない。もたもたしているとライバル企業が先に立ち上げてしまい、「韓国留学なら○○社」というようにブランドイメージが固定してしまう。

ラストリゾート 情報システムグループ チーフ 名取和高氏

 「もちろんいきなり韓国に行ってオフィスを構えてもうまくいくだろうかという不安があったので、まずは現地のエージェントと提携して、日本から送り出すまでは当社で、送り出してからはエージェントで、という形を作りました。そこまでを約1カ月で走らせたりするんですよ」(名取氏)

可能性があるビジネスに関しては、どこよりも早く飛びつき、最上のサービスを提供する商品として立ち上げる。これを1カ月でやり遂げるには、チームワークとそれを支えるシステムがどうしても必要になる。

 しかし、これから会社の規模が拡大していけば、新しいサービスを立ち上げるのに時間がかかるようになるのは必至だ。人員を闇雲に増やすわけにもいかないわけで、ここは業務全体を見直して、スピード経営が今後も実行できる仕組みが必要となる。

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