「その機能を追加したら100万円かかります」――費用対効果にはコミットメントを事例から学ぶ「座礁しないERP」(2/2 ページ)

» 2006年10月20日 11時00分 公開
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教科書どおりに事前準備を進める

 業務の見直しについて、名取氏は次のように語る。

 「業務フローはかなり細かいところから見直しました。お客様の問い合わせがあるというところから、最終的にお金がどう計上されるのかというところまで、全部です。この時点では、システムの制約という観点はまったく入っていません。純粋な業務フローの見直しです。プロジェクトメンバーは、カウンセラー(顧客一人ひとりにつく担当者)、コーディネーター(1対多でフォローアップする担当者)、手続き、あとは会計などの各セクションの代表ですね。そこで10人くらいの意見を聞きながら、システムで可能かどうかは関係なく、まっさらの状態から本来あるべき姿の業務フローをゼロから作り上げていきました」

 この作業はERP導入においては、事前にやるべき最も大切な作業。どんな教科書にもかいてあることだ。しかし、多くの企業ではこの作業がうまく進まず、後から苦労するケースが多い。

かかるコストへのコミットメント

 準備の初期段階について名取氏は語る。

 「まずプロジェクトメンバーが、本来あるべき姿というのが分かっていなかったので、業務フローというのはこういうもんだよというところを知ってもらうのが最初の段階でした。みんな自分のところをうまく回したい、あれをやりたいこれをやりたいというばかりで、全体にはめていくと回らない。そこから優先順位付けをして、あとは『パッケージに合わないとダメですよ』ということを認識してもらって作っていきました。『その機能を追加したら100万円かかります、それで100万円の効果はあるの? あるなら資料出して』というと、『いや、それならいいや』という感じ。そこは少し苦労したかな。みんな便利だろうなという感覚で要求はするけど、数値を求めると、分かってもらえました」

 一応、担当者の言い分はすべて聞く。しかし、その言い分をシステム化したときの費用対効果については必ずコミットしてもらう、という方法は有効だったようだ。

 同社では、現状のシステムに関する不満があちらこちらから出ていて、「機は熟していた」(名取氏)。

 しかしそれでも経営層からのトップダウンのプロジェクトにしていかなければ、ここまでの社員の参加意識は芽生えてこなかったかもしれない。経営層が納得するシステム作りは、やはり数値で示すことが必要になる。だからこそ、業務の切り出しについても、それぞれの現場担当者の責任が求められるというわけだ。そしてトップや経営層が納得する説明を支えるものは、現場スタッフが自らコミットした、費用対効果の「数字」なのである。

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