MySQL Enterpriseの登場は顧客、貢献者に何を意味するかMagi's View(1/2 ページ)

MySQLABは、2つの異なるバージョンでMySQLを提供することを発表した。この動きはオープンソースのコミュニティーにとって何を意味するのだろうか。

» 2006年10月26日 09時00分 公開
[Joe-'Zonker'-Brockmeier,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 また別の企業がエンタープライズ版とオープンソース版を分ける方向へと向かっている。先週、MySQLABは、2つの異なるバージョンでMySQLを提供することを発表した。その2つとは、使用料を支払う顧客に提供するMySQL Enterpriseリリースと、オープンソースユーザーに提供するMySQL Community Serverである。この動きはオープンソースのコミュニティーにとって何を意味するのだろうか。

 MySQLのオープンソース・コミュニティー関係担当副社長カイ・アルノ氏は、この分割の構想について自身のブログで説明している。アルノ氏によると、同社はMySQL Enterpriseのユーザーだけに、これまでより短い間隔でEnterpriseコードベースのバイナリリリースを提供する。Red HatがRed Hat Enterprise Linux(RHEL)をソースのみでリリースしているのと同じように、MySQLもEnterprise版のソースコードを引き続きGNU General Public License(GPL)の下でリリースするが、バイナリコードは一般には公開しない。MySQLのCEOマーティン・ミコス氏は、Enterprise版のソースを無償で入手して自力でバイナリをコンパイルすることは妨げないが、同社は「そのようなモデルを推奨しない」と表明している。

 ミコス氏は、開発を2つに分ける理由について「これまでビジネスの構築に専念するあまり、コミュニティーのためにするべきことをまったくしていませんでした」と述べ、MySQLの開発をEnterprise版とCommunity Server版に分けることは、実験的な機能やエンタープライズ版のユーザーには不適当な変更を「大胆に試すには不可欠」と説明する。

 DebianのMySQLパッケージを担当するメンテナの1人シーン・フィニー氏は、エンタープライズ版とオープンソース版の分割についてこう語った。「たぶん、賢い選択ですよ。"本丸への鍵"とでも言いますか、そういったものを危険にさらさなくても、開発をコミュニティーに対してオープンにできますからね」

 フィニー氏は、MySQLを使用および配布するDebianなどのオープンソースプロジェクトに分割がどう影響するかは「時間が決める」というものの、「両方のツリーがGPLの下にあるという前提付きですが、プラスの方向に向かうだろうとかなり楽観しています」

 過去の実績から未来の姿勢が分かるとすれば、MySQLがオープンソースコミュニティーでも成果を収める可能性は高い。フィニー氏によれば、MySQLはこれまでDebianとの協力関係において「かなり協調的」であり、「過去に取り組みんだ問題の中でも難しい部類に入るものに関しても、前向きな協力を示していました」

 「こちらからも大きな貢献(例えばライブラリシンボルのバージョン管理など)をしたと思いたいです。問題がなかったとも、改善の余地がないとも言い切れませんが、かなり友好的な関係にあると言いたいですね」

 エンタープライズ市場向けにPostgreSQLベースのデータベースを販売する米EnterpriseDBの社長/CEOであるアンディ・アスター氏は、今回の2本立てのリリースはMySQLにとって賢い選択だと見ている。「MySQLは外観とツール機能を強化する必要があります。この選択は、製品にとって、そして顧客にとって吉と出るでしょう」

 ただし、アスター氏はEnterpriseDBのビジネスがMySQL Enterpriseに脅かされるとは思っていない。「EnterpriseDBにとってはプラスもマイナスもありません……。マーケティング戦略は多少高度になるでしょうが」と語り、今回の発表によって「データベースの基本テクノロジーが変わるわけではなく、変わるのはデータベースを取り巻くもの」であり、MySQLそのものも変わらない、と指摘する。

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