Oracle GRIDの理想を具現化するCTCの「Mw Pool」(ミドルウェアプール)連載第4回

3年前、Oracleがグリッド技術を発表したとき、それはかなり遠い将来の話に思えた。しかし、CTCは「Mw Pool」によって、Oracleグリッド技術の理想を具現化しようとしている。

» 2006年10月27日 00時00分 公開
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 Oracleが「グリッド」という用語をメッセージとして初めて使ったのは、2003年9月、Oracle Database 10gの発表時だった。コンピュータリソースを仮想化し、誰でもどこでも、水道の蛇口をひねるだけで水が出てくるように簡単に利用できるようにする──理想的で魅力的なITの将来像だが、当時は、そんなことが実現できるのかという疑問が少なからずあったのも事実だ。

 そんな理想ともいえる新しいコンセプトをもとに、現場のニーズに合わせて具現化したのが、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が提供する「Mw Pool」(ミドルウェアプール)だ。Mw Poolを利用すれば、アプリケーションごとにサイロ型のシステムが乱立することに起因する、ITインフラのさまざまな課題を解消できる。アプリケーション実行部、データベース、OS、ストレージ、ハードウェアといったインフラ部分とアプリケーションそのものを分離し、それぞれの運用を非同期化することで、効率的な運用管理が可能なサービス指向の統合インフラを実現できるからだ。

Mw Poolの基本コンセプト──仮想化による統合と標準化によって「縦割り」だった情報システムインフラの構築・運用面等での課題を解消し、アプリケーションとインフラの疎結合化を図る

 「CTCはこれまで、インフラ部分のシステム・インテグレーションを得意としてきました。これをさらに強化していく中で、現場のニーズを取り込んでいくと、インフラはより柔軟にならなければならないという結論に至ったわけです。また、業界はSOA(サービス指向アーキテクチャー)によるシステム構築に着目しています。それを具現化するには、Mw Poolのようなサービス指向の統合インフラが必要なのです」と話すのは、プロダクトマーケティング室 室長の粟井利行氏。

伊藤忠テクノソリューションズ プロダクトマーケティング室 室長 粟井利行氏

 SOAによるシステム構築に欠かせない統合インフラとはいえ、CTCはそのためにMw Poolを生み出したわけではない。開発の現場、つまり顧客のニーズにどのように応えていけばいいかを試行錯誤した結果として、リソースの仮想化、統合化に行き着いたのだ。そして、CTCではまず、得意とするデータベース部分の仮想化と統合化を考え、Oracleのグリッド技術を活用した「DB Pool」の提供を開始した。

 Oracleのグリッド技術を活用することで、データベース部分を仮想化し、要求に応じて柔軟にリソースを割り当てられるようにするのがDB Poolだ。新たにシステムを開発する際にも、必要となるデータベース環境を極めて短時間に切り出して、プラットフォームとしてすぐに提供できるようになる。これで、ハードウェアからOS、そしてデータベース層までが、柔軟な統合インフラとして完成した。

 一方で、開発の現場を考えてみると、開発者はインフラに縛られずに自由に開発を行いたいものだ。ハードウェアやOSを用意し、データベースをセットアップしてという手順は省き、すぐにでも開発作業に入りたいと考えている。専用のハードウェアを確保し、専用の開発環境を用意するほうが、開発者も受け入れやすいかもしれない。しかし、DB Poolによってデータベース層までは統合化して運用管理を効率化できるのに、これを許してしまってはさまざまなアプリケーション実行環境が乱立し、運用管理は再び複雑化してしまう。それを解決するためには、アプリケーションの実行環境も含む、ミドルウェア層全体を仮想化し統合する必要があるのだ。

 「このところ、ハードウェアやOSの仮想化が流行していますが、それらの仮想化だけでは、結局は1つのアプリケーションに対し1つのOS環境ということになり、物理的な形は変わってもサイロ型の縦割りシステム構成であることに変わりはありません。その上の層をさらに標準化し、仮想化することで、初めてITの世界でブレークスルーが起こります。その1つの実現方法がMw Poolなのです」と話すのは、同社のアプリケーション&ミドルウェア技術部の神原宏行氏。

 さらに神原氏は、Oracleが3年前にグリッド技術を発表したときのことを次のように振り返る。

 「かつて、わたしは製造業の現場でアプリケーション開発を担当していました。当時の現場では、システムを追加する毎に新たなインフラ環境を作成しており、徐々にシステムが乱立していきました。システムが増えるにつれて、人的リソースの限られたIT部門の中では、インフラにまつわる障害やバックアップリカバリ、可用性などが、大きな問題へと発展していきました。そんなお客様の問題に対して、アプリケーション開発面からは好きなように使え、運用管理面からは効率化されたような、統合インフラがあればいいのに、と考えていました。Oracleのグリッド技術が登場したとき、これからのインフラはまさにこれだ、と感じました。」

 Mw Poolのコンセプトは、Oracle Database 10gの発表時にOracle自身が示したものだといっていい。CTCによって、Oracleが掲げた理想像がいま具現化したのだ。

統合のために必要な3つの標準化

 Mw Poolは、徹底的に開発現場のニーズを取り込み体系化したほかに、3つの標準化も図った。

 まず、Mw Poolの基本的な構造となるインフラ部分の「システムアーキテクチャー」の標準化だ。

 Oracleのグリッド技術を用い、データベースとJavaのアプリケーション実行環境を仮想化し統合化することで、スケールアウト構成と同時に、高い可用性を確保できる。これにより、従来ならシステムごとにピーク時の負荷に合わせて準備していたリソースの無駄を解消することもできる。

 また、プラットフォームとしてはLinuxとSolarisをベースとしながらも、1つのOSに固執せず、新たに優れた技術が出てきたらすぐに対応できるよう中立性を確保する。さらに、ストレージは柔軟性と拡張性、管理運用性を評価して、NAS(Network Attached Storage)を採用している。これらの組み合わせについては、相性だけでなくパフォーマンスも含め、CTCはあらかじめ十分な検証を実施している。

 次の標準化対象は、「構築プロセス」の部分だ。運用ということを大前提に考えた構築の手法であり、現場での経験をテンプレート化し、設計をしっかりとドキュメントとして残していく。これにより、Mw Poolの構造をなぜこのようにしたのかといったことが、すぐに顧客に示せるようになっている。

伊藤忠テクノソリューションズ アプリケーション&ミドルウェア技術部DB&Middleware技術課の神原宏行氏

 「細かい話になりますが、テンプレートの一例として、モジュールの命名規則などもあります。新しいアプリケーションを作るときに、何をやらなければならないかをまず徹底的に洗い出してから、それらを標準化し、運用を考慮した命名規則のテンプレートとしてまとめました。従来のようにシステムごとに個別の命名規則を決定するのではなく、統合インフラ全体でこれを標準化してあらかじめ用意しておけば、新規システムの追加や変更要求にも迅速かつ確実に対応できるからです。」(神原氏)

 標準化の3つ目は「運用管理」だ。アプリケーションとインフラをきっちり分け、どのような権限で誰が管理すべきかといったことを、一覧にまとめている。もちろん、顧客によって実際の管理体制は異なるので、その一覧を基に最適な体制と手法を顧客ごとに考えていくことになるが、将来は顧客が「インフラの運用管理は任せたい」と考えられるよう、さらなる標準化を目指す。インフラの運用管理は、企業にとって競争力の強化に直接影響する部分ではないからだ。システムを活用することでビジネス環境の変化にいかに迅速に追随していくかが重要であり、インフラの運用管理を安心して誰かに任せることができれば、企業は新しいビジネス創出のためのアプリケーションの企画や開発により注力できるはずだ。

 この10月、CTCは、データセンターの運用という分野で豊かな実績を持つCRCソリューションズと統合し、新たなスタートを切っている。従来からサーバマシンはもちろん、ネットワーク機器、ストレージ、そしてオラクル製品を組み合わせたインフラ部分のSIを得意としてきたことに新たなノウハウが加わり、総合的なインフラ構築、運用、管理体制が強化された。つまり、仮想化、統合化されたサービス指向の統合インフラの構築から運用に至る、トータルソリューションのサポート体制が大幅に強化されたのである。

検証済みの「Verified Selections」(ベリファイド・セレクションズ)

 この業界にはさまざまな製品があり、机上では、優れたインフラ環境を構築するための組み合わせはたくさん考えられるが、現場は検証済みの組み合わせを求めている。CTCでは、「現場発」で顧客のニーズをしっかりと取り込み、それに応えられる組み合わせを事前に十分に検討・検証し、インフラ、開発手法、および運用手法も含んだ統合的なソリューション、「Verified Selections」として仕立て上げている。

 「われわれは、製品単体ではなく、現場のニーズや課題を把握し、その解決策を十分検証した上で、保守やサポートも一緒に提供している。そうした中から幾つかメニュー化されたものが“Verified Selections”だ」(粟井氏)

 まさにこのVerified Selectionsの筆頭といえるのが、Mw Poolなのだ。Mw Poolは、同社の検証施設であるテクニカルソリューションセンターでハードウェアやOSを含む、さまざまな組み合わせについて検証を行っているほか、日本オラクルと共同で「Fusion Middleware Competency Center」を開設し、製品単体の機能検証だけでなくミドルウェアのプール化というコンセプトの下、それぞれの連携にもフォーカスし、より現実的な検証を行っている。

 ITリソースの有効活用は企業のIT部門にとっては第一に取り組むべき課題となっており、仮想化、統合化をうたうベンダーも多い。しかし、それだけではなく運用も念頭におき、アプリケーションの実行環境まで仮想化、統合化できるテクノロジーベンダーはまだ少ない。これこそサービス指向のインフラストラクチャーと呼ぶべきものであり、Mw Poolは、Oracleのグリッド技術と、それを活用して理想を具現化するCTCの現場力との見事な融合といえるだろう。

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提供:日本オラクル株式会社
制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2006年11月9日