mixi全盛時代に地域SNSの役割はどこにある?驚愕の自治体事情(2/2 ページ)

» 2006年10月30日 08時00分 公開
[田中雅晴,ITmedia]
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デジタルデバイド解消のための地域SNS活用

 現状の地域情報化が抱える問題点、それは「デジタルデバイド」の問題である。デジタルデバイドの問題が取りざたされて久しい。この問題は地方に行けば行くほど顕著であり、電子自治体化・地域情報化を考える際には避けては通れない問題であるといっていいだろう。

 豊中市においても例外ではなく、ことに、古くから続く商店街や個人商店が数多く存在するという地域の特性もあって、その格差は広がる一方だという。片や、常にネットを通じて情報発信し、あるいは通販なども手掛けて、立地に左右されないビジネスを展開する商店が存在する一方で、確実に取り残されてゆく商店も存在する。

 「そのデジタルデバイドを解消することで地元商店の振興につなげたい。それが、豊中市のSNSの独自性であり存在価値としたいんです」と北出氏は話す。極めてシンプルに言うならば、現状でITへの馴染みが深い商店もそうでない商店もともに地域SNSに参加してもらい、情報発信してもらうことが目的だという。

 そのために、まずは市の職員が分かりやすいチラシを制作して商店を回って参加を呼びかけることからのスタートになる。これまで「難しそうだから」とITに触れようとしなかった商店主にも参加しやすいよう、まずはシンプルな日記機能のみで、2週間に1回程度、売り出しなどの情報を書いて欲しいというところからはじめてもらう。もちろん商店以外の一般参加者も広く募り、その中の「慣れた」層が、コメントをつけたり、実際に店を訪ねたりする。そんなところから徐々にSNSを媒介としたITを利用した情報の受発信が広がり、それがひいては地域の商店振興につながれば、というのが豊中市の狙いだ。

お膝元からはじまり、やがてそれが線でつながり面になる。

 現在豊中市が認定する「まちづくり協議会」は、前述の「おかまち・まちづくり協議会」を含めて3つ。豊中市地域SNSは、前述の通りまずは市役所のお膝元であるおかまち・まちづくり協議会との連携で、岡町商店街および桜塚商店街の商店に積極的に働きかけて参加してもらうところからのスタートとなる。

 同時に商店主以外の一般市民からの参加も募り、まずは極めて限定された形での商店街振興を目指す。そして、その成果を元に、徐々に市内のほかの協議会やそれ以外の準備団体、商店会などにも参加を呼びかけ、点から各商店街という線へ、そしてそれがやがては豊中市全域の商店と市民を結ぶ面のネットワークになっていくことを目指すのが、今回の地域SNSの目標となる。このような形になれば、そのネットワーク上で行政からの情報を広報するにせよ、市民が情報を発信するにせよ、地域SNSならではの独自性と存在意義を持ったものとして認知・活用されるだろう。

課題も残るが、やがては運営を民間で

 商店の振興という独自性をキーワードにして地域に根ざしていこうとする豊中市地域SNSだが、冒頭で述べたとおり、現状ではまったくのテスト運用である。今後、個人情報に関するセキュリティや、実際のコンテンツ運営などに関しても、12月1日の正式運用までに為すべき課題は数多い。ただ、このSNSを通じて集まった個人情報に関しては、自治体ランキングで全国3位を誇る市の情報セキュリティと同等のシステムで保護されるという頼もしい体制は用意されている。

 また、システムそのものの根本的な運用に関しては市が行うものの、SNS内のコンテンツ運営・管理に関しては、ゆくゆくは民間に委ねたいとの意向だ。

 自治体の持つ強みを生かしつつも、地元の商店を軸として進行し、デジタルデバイドの解消とともに地域の活性化と情報化を目指すという、豊中市の新しい試みの行く先を、期待を持って注目したい。

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