メッセージングサーバScalix 11 Community Editionの初見レビューSuper Review(1/3 ページ)

日本法人も誕生したメッセージング&コラボレーションソフトウェア「Scalix」。Scalix 11 Community Editionが数カ月後にリリースを控えている中、そのプレビューパッケージを試用してみた。

» 2006年10月31日 08時00分 公開
[Michael-Stutz,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 オープンソースの新たなメッセージングサーバScalix 11 Community Editionが数カ月後にリリースを控えている中、それに先駆けてプレビューパッケージのバイナリが提供された。ただし、プレビューパッケージの使用許諾条件には「既知の問題を含むプレリリースソフトウェアであって実用には適さない」と記されている。Scalixの目指す方向性をただ確認したいがために試しに使ってみたところ、中小企業向けの的確な方向付けがなされていることが分かったので、その内容を詳しくお伝えしたい。

 公式発表によると、Scalix 11はRed Hat Enterprise Linux 3.0/4.0、SUSE Enterprise Server 9、openSuse 10.0、Fedora Core 5で稼働することになっている。また各ディストリビューションの古いバージョンやほかのディストリビューションでも「Community Edition Raw」が利用できる。Scalixは、その複雑なインストール作業を進めるための極めて周到な手順書を用意している。

 ScalixシステムはSendmailからTomcatに至るまでの数多くのソフトウェアを必要とし、オンラインマニュアルにはその全リストが記されている。また、512Mバイト以上のRAM、1Gバイト以上のハードディスク容量(大部分はシステムデータ用で、ソフトウェアが実際に占有するのは200Mバイトほど)が必要になる。

 使い始めるだけにしては要件が厳しいように思えるが、エンタープライズ・メッセージングシステムとしては控えめなくらいである。Scalixのオープンソース開発の責任者は、自らの個人用ノートPCでテスト用サーバを実行していると主張している。Microsoftがリリースを予定しているExchange Server 2007では64ビット対応のハードウェアが必要になると報じられていることを考えると、規模の小さな企業がこの点に魅力を感じるのは当然である。3年前のPCを電子メールサーバとして利用している小さな会社がExchange Server 2007を稼働させようとすると、ハードウェアを買い換えなくてはならないからだ。

インストール

 何をするにしても、まずはScalixのインストールマニュアルをしっかりと読む必要がある。インストール計画の説明だけで1つの章になっているほどのマニュアルだが、ひと通り読み終えれば、後はPythonベースのインストーラの指示に従ってセットアップを進めることができる。インストールの最初の方で、インストーラ側でコンポーネントを選んでくれる「通常(typical)」インストールと、好きなコンポーネントを自分で選ぶ「カスタム(custom)」インストールのどちらかを選択できる。続いてインストーラは各種Scalixコンポーネントに対応した十数個のRPMファイルらしきもののアンパックを行う。そこには、Scalix Server本体、オプションの管理用WebクライアントScalix Administration Console(SAC)、ScalixサーバとSACの通信を処理するScalix Remote Execution Service(RES)、Scalix Tomcat、Scalix Search and Index(SIS)、Scalix Platform API、携帯電話など無線デバイス用のWebクライアントScalix Mobileなどが含まれる。

 標準のGUIインストールだけでなく、CLIによるインストールも可能である。ただし、このCLIインストールは、その名前から推測されるようなすべてを手作業で行うインストールではなく、GUIインストールで用いられるインストーラウィザードをテキストベースにしたものにすぎない。おそらく「テキスト専用(text-only)」インストールという名前にすべきだろう。また3つ目の方法としてインストールを自動で行う「サイレント(silent)」インストールも利用できる。

 Scalixは、Hewlett-Packardのかなり昔のソフトウェアOpenMailがベースになっているため、今でもコマンドのほとんどは"om"で始まる名前になっている点が面白い。例えば、Scalixサービスを起動するツールはomon、システムを監視するツールはommonである。各種ツールは/optディレクトリにインストールされるが、その数は膨大で、サーバパッケージだけでも軽く300を超える。

 プロプライエタリ版のScalixとは違って処理すべき必須のライセンスキーは存在しないが、Scalixが「フォンホーム(phone home)」機能 ― サーバおよびインストールの情報を定期的にScalixに送信する ― を備えているという警告が表示される。ローカル管理者は「内容が簡素にして透過的で秘密ではない」ことを確認できるようにこの情報のコピーを取得するが、この「機能」を無効にしようとすると使用許諾条件を破ることになってしまうのだ。

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