揺れるRed Hat、日本オラクルが国内でもRed Hat Linuxのサポート事業を展開へ

日本オラクルは、都内のホテルで「Oracle Summit 2006」を開催し、Red Hat Linuxに対するサポートサービスについて日本の顧客やパートナーらに改めて説明した。

» 2006年11月14日 13時16分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 日本オラクルは11月14日、都内のホテルで同社テクノロジー製品に関する最大のイベント、「Oracle Summit 2006」を開催した。オープニングの基調講演では、10月のOracle OpenWorld San Francisco 2006で発表されたRed Hat Linuxに対するサポートについて日本の顧客やパートナーらに改めて説明した。

 日本オラクルの新宅正明社長は、「Red Hat Linux自体のサポートを開始することによって、いよいよOSからさまざまなミドルウェアで構成されるインフラストラクチャー全体を整えることができるようになる」と話し、日本市場でのRed Hat Linuxサポート事業の展開が近いことを示唆した。

 Red Hat Linux自体のサポート事業に乗り出す同社の「Unbreakable Linux 2.0」プログラムは、OracleがRed Hatからソースコードを入手し、バグフィックスを行い、コンパイルして無償配布するというもの。これまでRed Hatでは、最新バージョンでしか、バグフィックスを提供しておらず、顧客らにバージョンアップを強いる結果となっていた。Oracleでは、過去のバージョンに対してもバックポートを行い、データセンターのニーズにこたえるとしている。

 Oracle OpenWorld 2006でラリー・エリソン会長兼CEOは、「われわれの成功はLinuxの成功に大きく依存している」と話し、Linuxが同社の成長にとっていかに重要な存在であるかを示している。

 「われわれは1998年のLinux版Oracleの提供以来、Linuxの性能や信頼性、セキュリティを高めるべく、多額の投資を行ってきた。しかし、Linuxディストリビューターらは、真のエンタープライズレベルのサポートを提供できていない」と話すのは、Oracle Summitのために来日した、グローバルテクノロジービジネス部門のロバート・シンプ副社長。

グローバルテクノロジービジネス部門のロバート・シンプ副社長

 「バグ修正は将来のアップデートにしか反映されないため、OS自体のアップデートを迫られる。これは企業顧客にとって現実的ではないし、サポート料金も2プロセッササーバで年間1499ドルと高額だ。また、知的所有権侵害の訴訟に対する免責保証もない。これらが多くの大手顧客のLinux移行を阻害している」(シンプ氏)

Linuxはグリッドインフラの重要なピース

 ここでLinuxに対するOracleの取り組みについて、おさらいしてみよう。

 Oracleは、オープンで低コストなLinuxに着目し、1998年に商用版として初めてとなるLinux版Oracleデータベースを出荷した。すでにOracle8iにおいてReal Application Clusters(RAC)を投入していた同社は、安価なIAサーバを複数台並べることによって、高価なUNIXサーバに匹敵する性能や信頼性を実現できると確信していた。

 2003年になるとOracleは、RACをさらに進化させたグリッド技術をOracle 10gに搭載し、その後に発表した「Oracle Fusion Architecture」の中核にグリッドインフラストラクチャーを据えた。

 Oracle Fusion Architectureでは、インストールから始まって、パッチ適用/インストール、アクセス、ID管理、Java/Webサービス、開発ツール、クラスタリング、セキュリティ、分析、コンテント管理、監視・管理といったさまざまなサービスが共通化され、OracleやISV、あるいはカスタムのアプリケーションがこれらのサービスを共用することを目指している。

 こうしたアーキテクチャーの利点は、技術を一貫した形で実装でき、低コスト、かつ迅速にアプリケーションを配備できるところにある。

 Oracleのグリッドインフラストラクチャーは、低コストでありながら、64台あるい128台まで必要に応じて並列化できるスケーラビリティーや、それによる高い信頼性の実現を目指している。

 「IAサーバ向けのOSとしては、98年当時、LinuxとWindowsという2つの選択肢があった」とシンプ氏。

 しかし、Oracleは、オープンかつ標準技術だったLinuxを迷わず選んだ。そして、その後も性能と信頼性を高めるべく、多額の投資もいとわなかったのは、Oracle Fusion Architectureの完成度をより高めるためだった。

世界最大級のソフトウェアサポート組織

 2002年には、RACによってLinuxプラットフォームを堅牢なものに仕立て上げる「Unbreakable Linux」プログラムを始動し、専任のLinux開発・検証チームも組織している。

 「さらにOracleには、24時間365日のサポートを145カ国、27言語で展開している世界最大級のソフトウェアサポート組織がある」とシンプ氏。長年、データベースやアプリケーションで培ってきたエンタープライズ級のサポートサービスは、Linuxディストリビューターが一朝一夕に真似できるものではない。

 しかも、米国で発表されたOracleのサポート料金は、年額99ドルから始まり、Red Hatの半値以下。さらにRed Hatが提供していない、データセンターのデータベースをサポートするのと同等の品質水準もメニューに加えている。

 Red Hat Linuxのサポートを自分たちよりも安く提供されてしまうRed Hatは大きな打撃を受けるとみられているが、同社では早速、「Oracleが修正したLinuxは、Red Hat Linuxではなく、互換性の問題が生じる」と警告している。

 日本オラクルでシステム製品統括本部長を務める三澤智光氏によると、早ければ年明けにも日本市場での展開が明らかにされるという。

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