Javaを解放したSun(2/2 ページ)

» 2006年11月14日 19時45分 公開
[Chris Preimesberger,eWEEK]
eWEEK
前のページへ 1|2       

 Javaのオープンソース化の妨げとなっていた主要な要因は、JVM(Java Virtual Machine)のユビキタスな性質、そしてプロプライエタリ開発と親会社との複雑な関係である。Sunはこの数カ月、同社の宝物である知的財産を少しずつコミュニティーに公開してきた。

 これに対するアナリスト、開発者およびSunの商用製品の顧客の当初の反応は良好だ。グリーン氏によると、数百万ドルに上ることも多い商用ライセンスの最大のメリットは免責にあるという。「加えて、商用製品ではベンダーのフルサポートが受けられる。オープンソースソフトウェアは、訴訟に対する保護措置を提供しない。これはオープンソースの特質だ」と同氏は語る。

 Sunの研究者で(現在は病気療養中)、「Javaの父」と言われているジェームズ・ゴスリング氏は以前から、Javaを同社の監督下に置くという考え方を支持してきた。しかし同氏は最近のブログ記事の中で、「ついに決着が付くのを本当に喜んでいる。ただ1つ喜べないのは、処理すべき複雑な問題が多数存在することだ」と述べている。

 仮想化技術プロバイダーのCassattに2年間在籍した後、今年の5月にSunに復帰したグリーン氏によると、同社に戻った最大の理由の1つは、Javaをオープンソースコミュニティーに提供するのに貢献できると思ったことだという。グリーン氏はCassattに入るまで、Sunに14年間在籍した。

 コロラド州デンバーにあるRedMonkのアナリスト、スティーブン・オグレーディ氏は、SunがついにJavaを公開したことに驚いていないようだ。多数のオープンソースコミュニティーの間で人気があるGPLを選んだのは、理にかなっているという。

 「これが開発コミュニティーにとってプラスになるのは間違いない。だが企業ユーザーの視点から見れば、おそらくほとんど影響はないだろう。企業ユーザーがJavaで遭遇したバグの中には、オープンソース版で解決できるものもあるかもしれないが、全般的に言えば、企業ユーザーがこのニュースで大喜びすることはないだろう」とオグレーディ氏は指摘する。

 英国マン島のダグラスを本拠とするUbuntu Linuxディストリビューターの創業者であるマーク・シャトルワース氏は、「インターネットのエコシステムにオープンソースのJavaが加わるというのは、素晴らしいことだ。コミュニティーがRuby on RailsやPHPなどを考え出さなければならなかったのは、オープンなJavaが提供されていなかったからだ。制約が取り払われた今、もっと多くの実験が始められるようになる」と話している(関連記事)

 ジョージア州アトランタにあるNew Atlanta CommunicationsのJava開発者、マット・ジェイコブセン氏によると、今回の動きによって、Sunがいきなり世界で最も重要なオープンソースソフトウェア企業と見なされるとは思わないという。「彼らはきっとそのように吹聴するだろうが、わたしは決してそうは考えていない」と同氏は話す。

 「厳しい状況に置かれたSunが、何年にもわたるプレッシャーに反応しただけではないだろうか。とはいえ、Javaがこれほど広く浸透した今日、彼らがGPLを選択したのは、賢明な判断だと思う」(ジェイコブセン氏)

 Open Source Initiativeの元顧問を務めたスタンフォード大学ロースクールの講師、ラリー・ローゼン氏は、「Sunに祝福を捧げたい。彼らは正しい行いをしている。彼らは実際、オープンソース企業である。彼らだけがオープンソース企業ではないが、ほかの企業が見習うべきお手本になれるかもしれない」と話している。

 今回の動きが重要なのは、「GPLライセンスに基づくほかのソフトウェアにJavaを組み込めるようになるからだ」とローゼン氏は指摘する。

 「GPLは非常に多くのソフトウェアで採用されているため、これは大きなプラスになる。しかし、Apache Software Foundationなどの組織にはメリットはないだろう。GPLはApacheのライセンスと互換性がないため、同社がJavaを利用するのは依然として難しいからだ。このライセンス互換性問題は、今後解決すべき課題として残されている。GPLの新バージョンで解決する必要があるかもしれない」(同氏)

 RedMonkのオグレーディ氏によると、Sunの決断は評価できるが、何年にもわたる制約的なライセンスで開発者を離反させたという事実が帳消しになるわけではないという。「しかしSunにとっては、これで肩の荷が下りるのは間違いない。Javaのオープンソース化をめぐる質問にもう答えなくて済むからだ」(同氏)

Sunにおけるオープンソース化の取り組み

 自社の技術をオープンソースコミュニティーに提供する取り組みを進めてきたSunは、ついにJavaをGNU GPLの下で公開することを決断した。Sunがこれまでオープンソース化した技術としては、以下のようなものがある。

2004年:Looking Glass(ユーザーインタフェース技術)

2005年:Solaris OS、GlassFish(アプリケーションサーバ技術)、jMaki(Ajax[Asynchronous JavaScript and XML]ツール)

2006年:UltraSPARC T1(マルチコア型「Niagara」プロセッサ)

(出典:米eWEEK)

前のページへ 1|2       

Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.

注目のテーマ