Ubuntu開発者会議リポート(1/2 ページ)

今週Googleのオフィスで開催されたUbuntu Developer Summitでは、Ubuntuの次期リリースやUbuntuコミュニティーの統治について活発な議論が行われた。ここではその様子を紹介しよう。

» 2006年11月15日 05時37分 公開
[Joe-'Zonker'-Brockmeier,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 今週、Ubuntuの開発者とその関係者が米カリフォルニア州マウンテンビューにあるGoogleのオフィスへと世界中から詰めかけた。UDS(Ubuntu Developer Summit)開発者会議に参加し、Ubuntuの次期リリースの構想を練るためだ。

 UDS開発者会議の参加登録者数は全体で約140人に上った。。Canonical社マーケティング統括のJane Silber氏によると、Ubuntuのスポンサー企業であるCanonicalに実際に雇われている人はそのうちの30人に過ぎないとのことだ。それ以外の参加者は、Ubuntuコミュニティーのメンバー、Ubuntuのコンポーネントの開発元プロジェクトの代表、その他Ubuntuの開発方針に関心を持つ関係者などだ。わたしが話すことができた人たちの中には、Software Freedom DayプロジェクトやLinux Terminal Server Projectのメンバー、Sunの社員数名、それに(当然のことながら)様子を見に立ち寄ったGoogleの社員も何人かいた。

 参加した開発者の中には、自分が特に関心のある部分の仕様について議論するために1、2日間だけ参加した人もいた。例えばPostgreSQL開発チームのジョシュ・バーカス氏は、Ubuntu上での初期設定のPostgreSQLの性能向上について話し合うために水曜日のみ参加した。また、X.orgのケイス・パッカード氏は、Feisty Fawn(Ubuntu 7.04のコードネーム)用のX.orgに関して提案された幾つかの仕様について話し合うために金曜日ごろに参加する予定になっている。

仕様の提案プロセス

 このUDS開発者会議は、主に開発者にとっての会議という位置づけで、Ubuntuディストリビューションの新機能やUbuntuコミュニティーにおける行動規範について、アイデアをとことん話し合い仕様として書き上げるための会議となっている。一日の最初と最後に短時間だけアナウンスや短いプレゼンテーションのための時間が確保されているが、それ以外の時間はまるまる、Ubuntuディストリビューションの次期リリースやUbuntuコミュニティーの統治についての仕様に関する議論や脇目も振らない集中した作業に当てられている。

 手順としては、まず開発者がLaunchpad上で仕様の提案を行なう。次に、提案された仕様案がおのおの1時間程度のBoF(分科会)セッションとして予定に組み込まれる。そしてBoFセッションの後、仕様案はさらに議論が必要として後回しにされるかあるいは承認され仕様の記述作業へと進められる。仕様の記述作業が終わると、レビュー作業へと進められる。レビューに合格すると、さらに実装作業へと進められる。

 今回、多くの開発者がマウンテンビューへと実際にやって来たが、遠隔参加も奨励されている。すべてのセッションにおいてVoIPダイヤルインが用意されており、開発者はコラボレーション用テキストエディタのGobbyを使用して各会議のメモをまとめていた。 UDS開発者会議で直接会うことに越したことはないが、直接参加できなかった開発者のためにも便宜を計るようUbuntuの人たちは努力していた。

 わたしは幾つかのBoFセッションを傍聴したが、一つ一つの機能が非常に丁寧に検討されている様子を見るのは興味深かった。例えば水曜日には、Ubuntuでのオーディオコーデックのサポートの向上についてのセッションを傍聴した。そのセッションには約20人の開発者が参加しており、人気のあるコーデックのサポートを、ユーザーが抱えることになる面倒を最低限に抑えつつ開発者にとってもできるだけ楽に提供する方法が議論されていた。

 そのための方法として技術的に最も簡単な解決法である、入手可能なものをすべて含めてリリースするという方法は、法的な理由から除外された。そうではなく開発者たちは、コーデックのダウンロードをユーザー自身にオンデマンドで能動的に行なわせ、ユーザー自身に法的な問題を片付けさせることができないだろうかと検討していた。解決のための方法はGNOME、KDE、Xfceのすべてにおいてうまく行く方法である必要があるため、かなり周到な計画が要求される。

 わたしの知る限りUbuntuは、ほかに類を見ないほどプロジェクト外部の開発者にも干渉することを認め発言権を与えている。例えばDebianプロジェクトはコミュニティー指向のディストリビューションであるものの、決定に関する発言権は主としてプロジェクトのメンバーのみに与えられている。またDebianの新リリースを計画するための中心的な計画会議というものも存在しない。FedoraプロジェクトとopenSUSEプロジェクトはコミュニティーの参加を幾らか認めているものの、それぞれRed HatとNovellがおおかたのところ主導している。そしてRed Hat Enterprise LinuxとSUSE Linux Enterpriseの方向付けは完全に両社のエンジニアリングチームによって行なわれている。

 とは言っても、Ubuntuも100%コミュニティー主導ということではない。UbuntuのSABDFL(「自己任命慈悲深き終身独裁者」)であるマーク・シャトルワース氏によると、Feistyの開発は、Canonicalが開発チームに対し要求する機能と、コミュニティー主導の機能とをフィフティー・フィフティーに混ぜ合わせたものになるだろうということだ。

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