また、今までのマス・マーケティングとSMOとでは明らかにプロセスが異なるという。マス・マーケティングの場合は、ターゲットをセグメンテーションして、その層に合った商品やサービスを作り、その層に向けたプロモーションでチャネル販売してきた。しかし、そのセグメントも大まかなものでしかなく、粗さは否めなかった。
一方のSMO的考え方では、商品やサービスをソーシャルなメディアに取り上げられやすくすることを目的にするため、情報をブロガーが取り上げやすくなり、そのブロガーからさらに一般の人々へと伝わっていくようなネットワーク的な広がり方が期待できるのだという。
そして棚橋氏は、SMOの基本にはブログがあると断言する。企業からの情報は、Webサイトを通じて商品カタログのような情報だけを提供するのではなく、社長や社員が何を考えているかをきちんと“話しかける場”が必要になっている。顔の見える人間が泣き笑いしている実像を出すことによって、親しみやすさや信頼、信憑性などが高まっていく。その点で、ブログは最も優れた手段になるという。
とは言うものの、多くの企業では注意を喚起するようなブログを発信し続けることは容易なことではない。ブログを書いたとしても顧客に届くとは限らない。情報に親しみやすさを含めるということは、非常にハードルの高い作業となる。ましてや、それを継続するとなれば、単に書き手としての個人の能力だけではどうにもならない。個人を支える組織としての努力が必要なのだ。
「これまで企業は、自社の製品にサービスを含めて提供してきました。これからは、コミュ二ケーションも製品の一部として提供されていくことになるでしょう。そのためには、コミュニケーションコストを含めた上でのビジネスモデルを考えることが必要」と述べる棚橋氏は、社員の個性を浮き立たせて商売に結びつけるような逆転した発想も必要になるという。
ITサービス産業と重厚長大な製造業とを同一環境に考えられないように、企業文化によってはSMOを取り入れやすい、取り入れにくいという違いはある。しかし、今後企業間でその格差が大きく開いてくることは間違いない。ソーシャルブックマークという言葉を知らない人たちがまだ7割以上存在する現状で、爆発的な普及は無いかもしれないが、ビジネスがソーシャルメディアを強く意識することは当然の流れとなっていくだろう。
(「月刊アイティセレクト」12月号のトレンドフォーカス「ソーシャルメディアでビジネスを動かす 企業PRの新手法SMOとは?」より)
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