日本でただ一人、Regional Directorの役割とは(2/2 ページ)

» 2006年11月30日 08時00分 公開
[大河原克行,ITmedia]
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米国本社の開発部門にも提言

 現在、玉木氏がMicrosoft Regional Directorとして取り組んでいるのが、.NETフレームワークの啓蒙活動である。日本国内で開催されている各種講演会、セミナーなどを通じて、.NETフレームワークの開発生産性の高さや、これを活用するメリットを訴えている。マイクロソフトの社員の言葉ではなく第三者の言葉として、また、技術に深く精通しながらも、同時に経営者の視点からも話すことができる玉木氏の講演は好評を博している。

 一方で、米国本社の技術部門に対する提案も頻繁に行っている。Microsoft Regional Directorの特権の一つに、研究開発部門には比較的自由に立ち入ることができるというものがある。しかも、提案書の提出によるもの、あるいは公式の場での提言というものではなく、実際の開発現場のエンジニアと日常会話のような感覚で、お互いに情報交換をしながら日本側の要求を伝えることが可能だ。これは、Microsoft Regional Directorが米国本社において、高い地位と権限を与えられていることの証明であると同時に、日本からの意見を開発者にダイレクトに伝えることのできる、数少ない役割を担っていることを示すものだといえる。

 玉木氏の社交的な性格に負うところも大きいのだが、忌憚のない意見を語る玉木氏の情報は、今では米本社の開発チームにとってなくてはならないものになっている。

 「.NETフレームワークのほかにも、VistaなどのOS、SQL Serverなどのミドルウェア、IE 7などのクライアントアプリケーション、そして、Xbox360まで幅広い意見を求められる。突然、(米Microsoft本社のある)レドモンドに来てくれと呼び出されることもしばしば」と、玉木氏は苦笑する。

ノンPCとの連携に力を注ぐ

 その玉木氏が最近力を注いでいるのが、ノンPCと呼ばれる領域に対するマイクロソフトの技術の実装だ。

 日本の電機メーカーが得意とする携帯電話端末などの各種モバイル機器、また、薄型テレビや次世代光ディスクレコーダーなどのデジタル家電に対して、いかにマイクロソフトの技術を導入していくかという提案を、日本の電機メーカー、そして米Microsoftの開発チームに対して行っている。

 「携帯電話やデジタル家電において、.NETフレームワークを活用することで、どれだけのビジネス的なメリットを享受できるのかといったことを経営レベルに提案するとともに、開発者に対しては、開発面での優位性や効果などを技術的な観点から提示する。一方で、米国本社のエンジニアに対しては、日本のデジタル家電とどう連携させるべきかを話し合っている」という。

 PCとデジタル家電製品、あるいはモバイル機器との連携によって、日本の電機メーカーがどんなビジネスチャンスが創出できるか、玉木氏の頭の中には、その構図がすでに描けているようである。

 「今後は、.NETフレームワークをビジネスの手段として捉えることができるような提案を進めたい。一方で、1年後には、Vistaの機能の中に、PC機器とデジタル家電、モバイル機器がより密接に連携できるような機能を搭載するように働きかけたい。そこに、私のMicrosoft Regional Directorとしての役割がある」と玉木氏は語る。

 日本で唯一のMicrosoft Regional Directorに対する期待はますます高まっていきそうだ。

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