Vistaアプリケーション開発に乗り出す企業

一部の企業は既に.NET Framework 3.0を使って、Windows Vista向けのアプリケーションを構築している。

» 2006年12月01日 14時46分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK

 米Microsoftは11月30日に「Windows Vista Business」を立ち上げたが、一部の企業ユーザーは、Vistaをターゲットにしたアプリケーション開発ツールを使うことで既に有利なスタートを切っている。

 MicrosoftのVista開発ツールの早期導入者は、その技術を使って同OSで走る新しいアプリケーションや再設計されたアプリケーションを構築できた。

 そのような顧客の1社が米デンバーのIP Commerceだ。同社は金融アプリケーション「PASS(Payments as a Secure Service)Commerce Center」を販売している。

 同社のチップ・カーンCEOは、PASS Commerce Centerは企業に、Windows Vista Business搭載PCに対応した使いやすく、アクセスしやすいセキュアな決済・金融サービスを提供すると語る。企業はIP経由で金融取引をすることで、受取勘定、支払勘定が可能な口座を日々のワークフローに統合できる。このソリューションは、Microsoftの.NET Framework 3.0の2つのコンポーネント、WPF(Windows Presentation Foundation)とWCF(Windows Communication Foundation)を使う。.NET 3.0はWindows Vista向け中核開発プラットフォームだが、そのコンポーネントはWindows XPも対象にしている。

 PASSとWindows Vistaを介して、企業は金融、決済サービス、リポーティングに明確にアクセスでき、デスクトップからの金融取引が安全であるという信頼感を持ち、小規模企業と金融管理サービス企業をつなげられるとIP Commerceは述べている。さらに、PASS Commerce Centerは、キャッシュフローを改善し、詐欺を減らし、決済保護や小規模企業向け融資、設備融資への簡略化されたアクセスを提供し、導入費用および現行の支出を減らす手助けをし、業務プロセスと情報アクセスの簡略化と同期化、個人の生産性の改善を実現すると同社は語る。

 カーン氏は、このIP Commerceのシステムの背景にあるコンセプトは、基本的には、サービスを提供する大手金融機関とこれらのサービスをVistaから利用する小規模企業が存在する決済業界のためのSOA(サービス指向アーキテクチャ)を作り出すというものだとしている。Vistaには、小規模企業がPayPalなどのサービスのソフトウェアサービスを利用できる中心的な場所がある。

 さらに同氏は次のように話す。「われわれは.NET 3.0での開発時間が.NET 2.0の10%であることに気付いた。これは、われわれが実現できること――アプリケーション間の相互運用性の向上、よりリッチで双方向的なユーザー体験――に大きく影響した。それがすべてこれまでよりも少ない開発時間と労力でできた」

 同社の開発者は、すぐに.NET 3.0でスピードに乗ることができたと同氏は言う。

 「.NET 3.0を活用することで、当社のソリューションはさまざまなデータソースへのアクセスが向上し、直観的なリポーティングとセキュリティ強化の要素も備えている」(カーン氏)

 一方、Dollar Thrifty Automotive Group(DTAG)は、.NET 3.0コンポーネントを使って既存システムをアップグレードしている。同社はWCFと別のコンポーネントWF(Windows Workflow Foundation)を利用している。

 米タルサに本拠を置く同社は、Dollar Rent A CarとThrifty Car Rentalの親会社で、数十年前に開発され、数千のプログラムで構成される古いCOBOLアプリケーションを置き換えるために.NET技術を使っている。このシステムはDTAGのエージェントとグリーターが、顧客との車の受け渡しを確認するのに使っている。

 統合された次世代レンタカーシステムを構築するという目標のため、DTAGは.NET 3.0プラットフォームを選んだ。

 DTAGプロジェクトのテクニカルアーキテクト、ジム・アロウッド氏は、WCFを使うことで、.NET 3.0を購入してすぐに得られる大きなメリットは、1つのコードベースを基に構築されたさまざまなWebサービスエンドポイントを提供できることだと語る。

 例えば、同氏は、レンタルデスクのスマートクライアントアプリケーションは今、バイナリフォーマットのSOAP(Simple Object Access Protocol)メッセージを使ってWebサービスと通信する機能を備えていると語る。

 「このアプローチは帯域要件を大幅に緩和し、それによってアプリケーションのパフォーマンスが劇的に高まった」(同氏)

 しかしながら、DTAGは駐車場から携帯機器で返却された車をチェックする機能も必要としていたと同氏。これらの携帯機器はWCFに対応していないし、バイナリフォーマットでサービスと簡単に通信する方法もなかった。WCFは、バイナリフォーマット化せずに、サーバ構成ファイルの簡単な変更で携帯機器から利用できる標準的なSOAP Webサービスを公開し、それにより1つのコードベースで2つの独立したWebサービスを作ることを可能にしたと同氏は言う。

 さらに同社は、新システムの適切なユーザーインタフェースのデザインを選ぶという問題に直面していた。レンタカーのエージェントは、顧客とさまざまな方法でやり取りするからだ。例えば、最初に顧客の名前を聞くかもしれないし、予約番号を聞くかもしれないし、借りたい車種を聞くかもしれない。エージェントはさまざまな場所でプロセスを始めるばかりでなく、多様な注文でプロセスを終えると同社の担当者は語る。

 この種のプロセスのモデリングを行う開発者にとって大きなハードルは、いつシステムで検証を行うべきかを決めることだとアロウッド氏は言う。

 「データ要素YとZがそろっているが、エージェントによっては最初にYを記入するかもしれないし、Zの入力前に幾つかの記入項目があるかもしれない時に検証Aを行うべきだとした場合、従来のソリューションでは、入り組んだたくさんのif-then-else文を使っていた」(同氏)

 DTAGはもっとメンテナンス性があり創造的なソリューションでこの問題を解決することを選んだ。それがWFの導入だと同氏は言う。WFは、開発者が、システム内のさまざまな検証を代表するワークフロー「アクティビティ」の集合を作成できるようにした。

 「エージェントからの各種の入力パラメータを監視することで、WFはデータが利用できるようになったらすぐに適切な検証を起動できる。つまりエージェントはその順番でもプロセスを完了できるが、開発者はメンテナンスしやすく読みやすい方法でやり取りをモデル化できる」(同氏)

 「WFは開発者に、Visual Studio環境内で、通常はメンテナンスや理解が難しいこうした検証を開発するグラフィカルインタフェースを提供する」と同氏は語る。

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