使いやすさと機能を強化した中規模企業向け管理製品2種がβテスト中

中規模企業のニーズに対応するため、Microsoftは現行製品よりも強力な上に使いやすいシステム監視製品とソフトウェア管理製品を準備している。

» 2006年12月06日 09時00分 公開
[Peter Pawlak,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 システム管理の専門担当者がいない中規模企業のニーズへの対応を目指し、Microsoftは2つのシステム管理製品を準備している。その1つのWindows Server Update Services(WSUS)Version 3.0は、MicrosoftのOSとアプリケーションのパッチを中央から管理、配布できる同社の無料ツールの新バージョン。もう1つのSystem Center Essentials(SCE)は、サーバおよび重要なワークステーションの監視、パッチ管理、ソフトウェア配布、ハードウェアおよびソフトウェアインベントリの収集を行える有料の新しい管理製品だ。SCEはWSUS 3.0とSystem Center Operations Manager(SCOM)2007をベースにしたものになる。SCOM 2007は、Microsoft Operations Manager(MOM)2005の後継製品として開発されているものだ。

WSUS 3.0が拡張可能に

 WSUSの現行バージョン(2.0)は無料であるため、MicrosoftのセキュリティパッチやサービスパックでPCを最新の状態に保つ作業を含むIT業務の担当者を最低1人置いている企業で広く使われている。WSUSを利用すれば、Microsoft Update Webサイトから定期的に更新プログラムを取り込んでインストールするように個々のPCを構成する場合よりも、どのパッチをいつ適用するかを効果的に管理できる。また、WSUSは、同社のハードウェア/ソフトウェア資産管理ソフトウェアの主力製品であるSystems Management Server(SMS)2003ほど複雑ではない。しかしSMSとは異なり、WSUS 2.0(と先行製品のSoftware Update Services)は汎用的なインベントリ管理/ソフトウェア配布ツールではなく、PCへのアプリケーションのインストールには利用できない。

 WSUS 3.0の現行バージョンに対する改良点は、管理インタフェースの改善、より複雑なトポロジのサポート、レポート機能の向上といった一見地味なものだ。しかし、実はWSUS 3.0には戦略的な強化が施される。開発者は、新たに搭載されるAPIを使って、無料のWSUSにない管理機能を提供するアドオンソフトウェアでWSUS 3.0を拡張できる。SCEは、この新しいWSUS APIを初めて採用するソフトウェアだ。

 WSUS 3.0はβ版が公開されており、2007年第1四半期にリリースが予定されている。

System Center Essentials――3つの管理製品のエッセンスを凝縮

 SCEは、MOM、WSUS、SMSの一部の機能を統合した使いやすい新製品だ。この製品は、50〜500台のデスクトップPCを使用し、少なくとも1人のIT全般の担当者を置いているか、IT管理をサービスプロバイダーに委託している企業をターゲットとしている。

 現在、10台以下のサーバを使用している企業は、サーバの状態を監視するツールとして、低コストなMOM 2005 Workgroup Editionを選択できる。このエディションでは通常のMOM管理パック(Management Pack:MP)を利用できる。管理パックは、システムコンポーネントやサービスの正常な動作が定義されたルールとスクリプトのセットであり、システム管理者が異常な状態を解決するための指針となる情報も提供する。だが、このエディションには、MOM Standard Editionで提供されるレポート生成機能やほかの管理システムとの連携機能が欠けている。しかし、このWorkgroup Editionは、価格が500ドルとMOM Standard Editionの12分の1にとどまる上、無料のMSDE(Microsoft SQL Desktop Engine)をデータベースとして利用でき、高価なSQL Serverのフルライセンスを別途購入する必要がない。このため、Workgroup EditionはIT予算が厳しい小規模企業にとってコスト面で魅力的だ。だが残念なことに、この製品は、構成を行うシステム管理者の技術的および時間的な負担が大きい。

 2007年前半に出荷が予定されているMOMの次期バージョンであるSCOM 2007では、Workgroup Editionは提供されない。代わって投入されるのがSCEだが、SCEの機能は状態監視だけにとどまらない。SCEはWSUSインフラを使って、デスクトップPCとサーバのインベントリ管理機能とソフトウェア管理機能も提供する。MicrosoftはまだSCEの価格とライセンス条件の詳細を明らかにしていないが、SCEの価格設定や対象サーバ台数の制限は、MOM 2005 Workgroup Editionと似たものになると見られる。

 Microsoftは、SCEは単にSCOM 2007とWSUS 3.0をバンドルした製品ではなく、SCEでは、これらそれぞれの機能は一元化されたシンプルなコンソールに完全に統合され、これら2つのコンポーネントにない機能も提供されるとしている。また、SCEは、IT担当者を抱えたがらない中小企業にサービスプロバイダーがリモートシステム管理/監視サービスを提供できるように設計されている。

 SCOM 2007では、これまでのMOMとは異なり、システム定義モデル(SDM)が初めて採用される。Microsoftは、SDMの採用は、誤ったアラートをなくすための構成およびチューニング作業を軽減し、システム管理者が問題の根本原因を究明する大きな助けになると説明している。同社はSDMの採用により、SCOM 2007とこれを含むSCEが、IT全般の担当者にとって保守しやすくなることを期待している。

 また、SCEは無料のWSUS 3.0とは異なり、新しいWSUS APIを利用して、多様なソフトウェアの配布とハードウェア/ソフトウェアインベントリ管理をサポートする。Microsoft Windows Installer(MSI)を使ったグループポリシーベースのソフトウェア配布とインストールがWindows 2000で導入されたが、多くの欠点のせいでその利用は限られている。これに対し、SCEでは、より高度なソフトウェア配布機能が提供される。例えば、Windows Installerを使わないソフトウェアのサポート、ネットワーク帯域の効率利用を可能にするBITS(バックグラウンドインテリジェント転送サービス)を使ったクライアントへのソフトウェア転送、状態報告などだ。また、グループポリシーベースのソフトウェア配布と同様に、SCEでは、Active DirectoryのセキュリティグループやOU(組織単位)内のコンピュータを、パッチやアプリケーションの配布先として指定できる。

 SCEで拡張されるWSUS 3.0の機能は、WSUS 2.0の場合よりもさらに大きくSMSの機能と重複する。だがMicrosoftは、SCEはSMSの売り上げに重大な影響は与えないと見ている。同社は、SCEの顧客となるのは、より機能が豊富だがコストが高いSMSを受け入れず、限られたITスタッフの生産性を高めるとともにシステムのアップタイムを増やせる、より基本的な管理製品を求める企業であり、こうした企業とSMSの顧客層とは重ならないと考えている。

 SCEはβ版が公開されており、2007年第2四半期に出荷が予定されている。だが、SCEはWSUS v3とSCOM 2007をベースにするため、これらの製品のスケジュールがずれ込むと、SCEのスケジュールにも影響が及ぶ。

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