SAPはMySAP ERPを、メジャーアップグレードではなく、強化パッケージで付加的にアップグレードする戦略だ。最初の強化パッケージがリリースされた。
独SAPは9月の年次TechEdイベントで、今後5年間、「MySAP ERP」スイートを安定させると発表した。これは、2年おきにメジャーアップグレードをリリースする――ソフト業界の伝統的なやり方であり、時流についていくために多額の投資が必要になる――のではなく、ユーザーが実装するかどうかを選べる付加的なアップグレードパッケージをリリースするというものだ。
この計画の初の具体的な動きとして、SAPは12月4日に年次Analyst Dayで、MySAP ERPの最初の「強化パッケージ」を発表した。これには、HCM(Human Capital Management)や金融アプリケーションの強化機能、業界の固有のアップグレードが含まれている。これらはすべて、SAPのSwitch Frameworkを使ってオンにできるエンタープライズサービスの形で提供される。つまり、顧客は文字通り、どの機能をオンにする(かオフのままにする)か決められるということだ。
HCMの分野では、SAPはサービスレベル契約の監視と従業員のやり取りの分析を追加した。金融アプリケーションでは、クレジットコレクション管理の機能を強化し、クレジットリポート監視、コレクション管理分析、外部クレジット情報企業を統合し、請求書から支払いへのプロセスをよりスムーズにするエンタープライズサービスを含めた。
SAPはまた、需要管理や小売業者向けのPOS(Point Of Sale)統合など、小売業界と製造業界に特有の機能を追加した。さらに、強化パッケージは、SAPが買収で取得したTriversityのPOSとKhimetricの価格最適化ソフトをMySAP ERPに統合する。製造業に関しては、MES(Manufacturing Execution Systems)、製造作業指示、品質管理を統合している。
いわゆる強化パッケージを投入する主眼は、ユーザーが必要に応じて、継続的に機能をアップグレードできるようにすると同時に、安定したコアERPシステムを維持することにある。SAP担当者は4日に、次のメジャーなERP「コア」リリースは2010年になると語った。それには、今から2010年までに投入されるすべての強化パッケージと新機能が含まれる。
「われわれは顧客のビジネスの革新に応えている」とSAPの製品技術部門社長シャイ・アガシ氏はプレスランチョンで語った。「わたしの大きな目標は、今はない重要なプロセスの機能をもっと提供することだ」
新プロセスの例として、同氏は、リスクとコンプライアンスを網羅する、変わりつつあるCFO(最高財務責任者)の役割を挙げた。2002年の米企業改革法(SOX法)の前にはなかった分野だ。同法では、企業は社内統制の有効性を開示するなどの規制に従わなければならない。
9月のイベントで、アガシ氏は、強化パッケージを1四半期に1〜2個のペースでリリースするという構想を語った。SAPは4日のプレスリリースで、強化パッケージは年間に2〜3個ともっと緩やかなペースでリリースされるとしている。これらパッケージはMySAPプラットフォーム上に載る局所的なリリースで、新しい複合アプリケーション、サービス、機能アップグレードなどを含む。
強化パッケージはランダムにリリースされるのでなく、特定のトピック――出張管理や調達など――を持ち、ユーザーはそれをどのように追加するかを決定できる。
各パッケージには、特定のビジネスシナリオ向けのエンタープライズサービスと、インタラクティブWikiフォーマットで利用できるシナリオの説明文書も含まれる。複雑なテストやアップグレードを避けるために、SAPはSwitch Frameworkに似たテストフレームワークに取り組んでいる。これは個々の強化パッケージとともに提供される。
今回の最初の強化パッケージはMySAP ERP 2005ユーザー向けに提供されている。
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