日本のソフトウェア産業のこれから――連携で新たな競争力を生み出す

業務の効率化によるコスト削減というITシステムの導入目的は、今も昔も大きく変わることはない。これに加え、最近のITシステムでは新たなビジネス要求に応える必要性も出てきている。

» 2006年12月18日 00時00分 公開
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ソフトウェアに求められる新たな要求

 昨今、キーワードとして頻繁に登場する企業の内部統制やコンプライアンスへの対応は、ITシステムへの新たな要求となっている。これらはもちろん、ITシステムを新規導入すればそれだけで実現できるわけではない。とはいえ、ITシステムの活用なくしてはなしえないのも事実である。

 逆に考えると、改変や拡張も含めて今後登場するすべてのシステムは、内部統制やコンプライアンスの要求を満足しなければならない。具体的には、個別最適化ではなく全体最適化が行えるデータの一貫性、整合性の確保、適切かつ監査に耐えうるログ管理、アクセスコントロールを含むセキュリティの確保などの機能を実装していることが必須となるだろう。

 これに対応するための最も簡単な方法は、大規模なERPパッケージを丸ごと導入することだ。体力もリソースも十分にある企業では、この方法が一番手っ取り早い。とはいえ、仮に体力やリソースがあっても、既存のビジネスのやり方を捨ててERPパッケージのビジネスモデルに沿って業務プロセスを一新するのは、システム導入以上に困難な作業である。

 日本企業の多くを占める中堅・中小規模の企業には、普通は大規模なERPパッケージを丸ごと導入するような体力はない。会社を大きくするための投資はしても、法律や規制に対応する、ある種後ろ向きな投資にはあまり費用をかけたくないとも考える。そうなると、既存システムを活用し、新規の投資は最小限に抑えながら内部統制を実現しなければならない。

 既存システムを適宜連携させ、それらを活用しつつ業務の状況を可視化できれば、内部統制の実現も可能かもしれない。ただし、連携のために専用のアプリケーションを新たに構築するとなると、大規模なERPパッケージの導入にはならずとも、かなりの投資が必要になる。なぜなら、すでに企業に導入されているさまざまなシステムは個別に最適化されており、相互に連携する仕組みにはなっていないからだ。

優秀な日本産ソフトウェアが評価されない

 中堅・中小企業の業務システムには、日本産のソフトウェアパッケージがすでに数多く導入されている。一部の製品は大手企業にも評価され、特定分野で大きなシェアを持っているものもある。日本企業のシステムに対する要求は、きわめて高い。国産のベンダーは、その現場のノウハウを吸収しながら製品を作っているので、おのずと質の高い製品に仕上がる。そうした品質や現場に即したきめ細かな対応が、国内での高い評価につながっているのだ。

 ところが世界市場に目を向けると、ERPをはじめパッケージソフトウェアのほとんどは欧米を中心としたベンダー製のものであり、それらが圧倒的なシェアを獲得している。個々には評価の高い国産ソフトウェアが、なぜ世界でシェアを獲得できないのか。

 その背景には、メインフレーム全盛時代にソフトウェアに価値を見いださなかった、ハードウェア偏重のビジネスモデルがあるという。メインフレーム時代には高度なアプリケーション構築のノウハウがあったにもかかわらず、ビジネスの主軸はハードウェア販売でソフトウェアはその付属品のように扱われた。そのため、高度なノウハウを秘めたソフトウェアを取り出し、ビジネスを展開するのに出遅れたというのだ。

 もう1つの理由は、日本という国だけで世界で2番目となる市場規模があったこと。そのため、国内だけを対象にしていてもそれなりのビジネスが可能であり、世界に目を向けるよりまずは足下を固めるので十分だったのだ。これらの理由により、多くの国産ソフトウェアパッケージは高い評価を得ているにもかかわらず、世界ではほとんど知られていないという現状ができあがってしまったのだろう。

photo システムインテグレータ代表取締役の梅田弘之氏。MIJSの技術部会を推進する立場にある

 とはいえ、当然国産ベンダーもこの現状に手をこまねいていたわけではない。海外進出を試みた企業はいくつもあり、一定の成功を収めているところもあれば、残念ながら撤退を余儀なくされたところもある。評価が高く自らも自信を持てる製品ベンダーの経営者は、どこかのタイミングで海外市場への進出を考えるのは必然だ。システムインテグレータ代表取締役の梅田弘之氏も2、3年前から海外進出の構想を持っていたという。

 「海外へ1社で進出しても、なかなか成功するのは難しい。国産ベンダーみんなで結集して出ていけば、規模的にも海外ディストリビューターが取り扱いやすく、進出コストもシェアできるのでは」というアイデアを温めていたとのこと。たまたま、国産ベンダーのトップが集まる機会でこの話題となった際に、多くの経営者が同じ考えを持っていたことが分かった。

 「鉄鋼や電機、自動車など日本メーカーで現在国際競争力のある大手企業も、最初は小さな会社だった。次は、ソフトウェアの分野でも海外で認められる企業になろうという志が一致した」と梅田氏。このような、日本のソフトウェアが国際競争力を持つのだという複数企業のトップの思いが、「Made In Japan Software(MIJS)コンソーシアム」誕生のきっかけとなったという。

 「MIJSは海外への進出を目的にスタートしたが、まずは国内のライバルに勝利することも重要。単に結集して海外へ行くのではなく、各社の製品を連携させ、よりよいソリューションを生み出し、競争力のあるものにしていく」という、新たな目標も掲げた。この製品連携による新たな競争力のあるソリューションというのは、前出のソフトウェアに対する新たな要求に応えることにもつながる。

 単独で評価の高い国産パッケージを相互に連携させ、新たな価値を生み出す。もちろんこれまでも製品相互の連携の仕組みはあったが、それはむしろ仕方なく連携している、あるいは連携のためのインタフェースを公開した後は「勝手にどうぞ」というスタンスのものが多かった。また、大手ベンダーが音頭をとって複数製品の連携を図る活動もあるが、“連携のための連携”になりがちで絵に描いた餅となることも多かったようだ。

 「連携の仕組み自体は、それほど難しいことではない。ただし、顧客の実案件ベースの連携を実現するには、単純な連携の裏でやるべきことがたくさんある。そのような部分を含め、MIJSで汎用的な連携の仕組みにできないかと考えている」(梅田氏)

現実的な連携で新たな価値を生み出す

 こうした「現実的な連携」のために、MIJSでは技術部会を立ち上げ、具体的な活動を開始している。(1)賛同各社の製品のトランザクションデータ連携のための汎用的な仕組み作り、(2)各種パッケージ製品の連携時に重要となるマスターデータの一元管理を実現する共通規格の作成、(3)インフラ機能を部品として取り出し各アプリケーションで自由に使えるようにするインフラ機能の共通化という3つのテーマでの活動だ。

 製品間の相互接続だけでは、複数の製品間で複雑な網の目の関係ができあがり、全体で最適化することは難しい。そこで(1)では、ハブの役目を果たす輪に各社の製品が刺さる形で連携する仕組み作りを始めている。各社の製品は、ほかの製品用にデータの出入り口をそれぞれ用意するのではなく、連携の輪に対し出入り口となるアダプタを1つだけ用意すればよい。これをステップ1とし、次のステップ2では連携時に必要となるエラーチェックなどのルールをこの仕組みに加え、実案件の要求に応えられるものへと拡張するという。

photo 「製品を組み合わせれば海外の大手ベンダーのパッケージにも負けない」と梅田氏

 (2)のマスターデータの標準化も、複数製品の連携では重要だ。これがなければ、複数の製品を連携させた際にデータの整合性を取るのが難しくなる。とはいえ、業界標準を一気に作り、それに従わせると各社の製品に改変を強いることになってしまう。

 「マスターデータは各社のノウハウだから、互いに提供し合うというのは難しい面もある。まずはどのパッケージ製品でも利用しているであろう、社員マスターと組織の部門マスターについて標準化を行い、MIJSの標準部分と各製品の独自の部分を連携するアダプタを用意する」(梅田氏)

 これにより、各製品の独自性を損なわずに、標準化を進めることができる。さらにユーザー企業やシステムインテグレーターに対しMIJSの規格を啓もうして、将来的にMIJSの規格が業界標準となることを目指していくという。

 (3)の共通インフラ機能を部品化する活動は、複数の機能を持つ製品でも主たる機能以外は簡易的なものが多いという現状に対して、特化していてかつ共有部品として取り出せる機能を外出しにし、各製品で自由に使えるようにするというものだ。各社の強みとなる部分を組み合わせることで、より強力なソリューションの構築を目指すのである。

 「これら3つの活動が実現されれば、企業が業務プロセスの全体最適化を図る上でMIJSの製品がさらに導入しやすくなる。もともと評価が高い製品群なので、1製品では難しくても、組み合わせにより大手海外ベンダーの統合的なパッケージにも十分勝てるものとなる」と梅田氏。これらの技術部会の活動と平行して、各製品の組み合わせのベストプラクティスの策定やその検証も行っていく。そのために、共同検証を行うラボの開設も視野に入れているとのこと。製品を組み合わせたお勧めのソリューションの提供で、顧客への導入をさらに促す。

 また、ソリューション提供の形態として、SaaS(Software as a Service)型のサービスの構想もあるという。顧客のシステム導入の目的は、導入そのものではなくその上のサービスの利用だ。サービスが安く確実に利用できるのであれば、提供の形態は何でもいい。特に中小規模の企業であれば、最初に大きな投資なく始められるSaaS型のサービスは、導入の敷居を低くする可能性を持っている。これについても1社で実現するよりは、各社が連携して多くのサービスメニューを用意できる方が、サービスを受ける側も提供する側もメリットは大きい。

 MIJSは船出をしたばかりだ。この後の航海がすべて、順風満帆とはいかないかもしれない。コンソーシアムの活動は、出だしは勢いがあってもなかなか継続しないというケースも多い。今後は技術部会の活動成果などを形にし、現実的なシステムに確実に結び付けていくことが重要となる。

 「MIJSという活動を進めていく中で、連携による新しいアイデアがどんどん生まれている。また、各社の持っているさまざまなノウハウを共有できるというのも、意義が大きい。新しいことの発見にワクワクする」と技術者出身の梅田氏は言う。参加者そのものが共通の目的に向かい、新しい取り組みをある種楽しみながら進めているというフォーラムの状況は、成功につながる原動力となりそうだ。MIJSの活動が、空洞化が懸念されている日本のIT技術の行く末を覆す大きな力となるのかもしれない。

日本のソフトウェアビジネスを変える〜 MIJSカンファレンス「Japan」2007 開催決定!
テーマ 日本の有力ソフトウェアベンダーが結集!
製品の相互連携による海外展開および国内ビジネス基盤強化を熱く語る!
注目セッション 基調講演1
ソフトブレーン株式会社 マネージメントアドバイザー 宋文洲氏
「日本のソフトウェアベンダーへのエール、世界に視点を!」
基調講演2
日本放送協会 エグゼクティブ・プロデューサー 今井彰氏
「『プロジェクトX 〜挑戦者たち〜』チームとは何か、そしてリーダーの条件」
日時 2007年02月01日(木) 10:30〜(受付開始 10:00)
会場 東京コンファレンスセンター・品川
参加費 無料(定員600名)
主催 MIJSコンソーシアム
協賛企業 日本アイ・ビー・エム株式会社、日本オラクル株式会社、日本BEAシステムズ株式会社、
マイクロソフト株式会社、インテル株式会社、デル株式会社
協力企業 サン・マイクロシステムズ株式会社
メディア協力 ITmedia エンタープライズ編集部、@IT編集部、IDGジャパン、ZDNet Japan

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提供:MIJSコンソーシアム
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2007年2月21日