身近な楽曲に情報を埋め込む音のQRコード――音響OFDM次世代ITを支える日本の「研究室」(3/3 ページ)

» 2006年12月21日 08時00分 公開
[岡崎勝己(ロビンソン),ITmedia]
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ユーザーへの周知を進め新たなニーズを発掘する

 すでに述べたが、同技術の用途は幅広い。例えば、テレビCMではURLが掲載されることも多いが、URLを短時間に覚えるのは難しく、かといってWebブラウザでアクセスするには面倒な入力作業が必要となる。しかし同技術を用いれば、携帯電話をテレビのスピーカーにかざすだけで簡単にサイトへアクセスでき、ひいては見込み顧客をサイトで誘導することが可能になる。また、店舗などでは特売品などの情報をBGMとともに配信するといった使い方も考えらる。顧客に何らかの情報を届けたい企業にとって、さまざまな面での活用が見込めるわけだ。

 音響OFDM技術の用途開拓に携わる、同社サービス&ソリューション開発部サービス開発推進担当課長の堀口賞一氏は「1対多で、広く情報を届けられる点が大きなメリット。街中には音楽があふれており、音楽に関心を持った人に対して情報を広く配信できる。加えて、入手したURLを使って携帯電話でインターネットにアクセスしてもらうことで、リアルとバーチャルの世界をシームレスにつなげることも可能になる」と強調する。

画像 NTTドコモ サービス&ソリューション開発部サービス開発推進担当課長の堀口賞一氏

 ただし、同技術が普及する上で課題もある。その1つとして堀口氏が挙げるのが、認知度にまつわるものだ。同技術は類似したものがないことから、企業/ユーザーの双方にとって、そのメリットを一から説明することが不可欠となる。

 「まったく新しい技術であるため、これから周知活動に相当力を入れなければならないだろう。ただし、すでに企業からの問い合わせもいくつか寄せられている。“音のQRコード”として、今後も引き続き広報活動に注力していきたい」(堀口氏)

音響OFDM技術をライセンス提供、ビジネスモデルの確立へ

 一方で、音響OFDM技術には今後に向けた明るい材料もある。

 携帯電話では現在、音声を伝達するため、8kHzのサンプリング周波数を用いているが、同技術はこの程度のサンプリング周波数では伝送能力を十分に引き出すことができない。それについて松岡氏は、「現在、デモンストレーションなどではより高い周波数でサンプリングを行っている。技術的な特性を踏まえれば、16kHzの周波数帯を使うのが理想的。Windows Mobileなどのスマートフォンであれば、44.1kHzサンプリングの録音ができるので、問題なく利用可能」と話す。

 これに対し、欧州で現在利用されている携帯端末では、音声伝達のために16kHzのサンプリング周波数を用いている。「ハードウェア面での対応はそれほど難しくはない」(松岡氏)とのことから、携帯電話の高機能化がさらに進展する中で、近い将来、16kHzに移行することも十分に考えられる。そうなれば、十分な伝送能力を確保し、使い勝手を高めることもできる。

 「現状ではノイズの影響を考慮するとともに、音質を下げないために高音部分を情報の伝送に使っている。しかし、さらに低音部分まで使うことで、伝送能力は1kbps以上まで高められる。楽曲を有料で配信している企業であれば、プロモーションとしてあえて音質を下げて多くの情報を伝えたいというニーズもあるはず。さまざまなニーズに沿うように、あらゆるサービスの提供形態を考えたい」(堀口氏)

 同社では今後、音響OFDM技術のライセンスの提供も視野に入れ、ビジネスモデルの確立を図る計画。無意識に携帯電話をかざして街中の音楽から情報を得る日も、さほど遠くなさそうだ。

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