オフショアで日本中のビルを集中管理――FNIC

ファシリティ・ネットワーキング相互接続コンソーシアムは、仕様の異なる遠隔地のビル監視システムを相互接続する技術を公開した。

» 2006年12月22日 21時58分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 ファシリティ・ネットワーキング相互接続コンソーシアム(FNIC)は12月22日、IPv6を利用してビル施設の設備や機器を遠隔地から一元管理する技術デモを公開した。

 ビル施設の管理では、事実上の標準プロトコルとして「BACnet」と「LONWORKS」の2種類が利用されている。また、設備ベンダーによっては独自プロトコルを利用しているケースもあるという。

 近年はWebアプリケーションによる遠隔集中管理が普及しつつあるが、これにはプロトコルの異なる機器同士を相互接続する必要がある。しかし、相互接続には膨大な種類の機器の検証や信頼性、セキュリティ面などの課題が多く、マルチベンダーによる実用的な遠隔集中管理を実現する上でのハードルになっているという。

 FNICでは12月21日、このような課題を検証するためのラボを慶應義塾大学新川崎キャンパス(川崎市)内に開設した。ラボは、IPv6普及・高度化推進協議会のショールームがある東京・丸の内と東京・新橋の松下電工本社ビルとIPv6ネットワークで結ばれ、各地点にBACnetやLONWORKSなど利用プロトコルの異なる機器を置いて、相互接続性を検証することができる。

demo 画面左下のビルに「a」の文字。照明を制御して、建物の側面に文字や絵を描き出すようなイベントも簡単だとのこと

 デモでは、丸の内から松下電工本社ビルの空調機器を制御する様子や、丸の内からラボ内に用意されたビルの照明を制御する様子が公開された。この結果、FNICは、SOAPやWSDLを用いて遠隔地にある異なるベンダー機器をリアルタイムに制御、監視できることが確認できたとしている。

 これにより、プロトコルの異なる機器に合わせた専用のゲートウェイを開発するコストや手間を減らすことができ、短期間で遠隔集中管理システムを構築できるという。またWebアプリケーションを利用することで、柔軟なシステム運用や新しいサービスを提供することも可能になる。

江附_教授 「極端だが、オフショア地域で日本中のビルを監視することも理論上可能だ」と江赴ウ授

 FNICの主査を務める東京大学の江附_教授は、「この仕組みでの遠隔集中管理が普及すれば、個々のビルに設置されている管理センターを省力化できる。施設の有効活用や人的コストの大幅な削減につながるだろう」と話す。また、施設ごとのエネルギー利用状況の把握や分析が促進され、ビルの運用管理効率を高められるという。

 この技術は、家庭にも応用でき、PLCなどを使った新サービスの創造にもつながる可能性を秘めている。FNICでは今後、実用化に向けた相互接続性のさらなる検証や、遠隔監視でのアクセス制限や通信の暗号化などを検討していく計画だという。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ