大企業がついに乗り出すIM改革ビジネス向けのメッセンジャー Biz IM市場の幕開け(第3回)(2/2 ページ)

» 2007年01月10日 08時30分 公開
[渡邉君人(Qript),ITmedia]
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今後拡大する企業の「テレワーク」導入

 もう1つ企業内コミュニケーションの大きな転換となる動きがある。それが「テレワーク」の普及だ。社団法人日本テレワーク協会のWebサイトに記載された定義によると、テレワークとは「情報通信技術(IT)を利用した場所・時間にとらわれない働き方」とある。簡単にいえばITツールを活用して、会社にいなくても仕事ができる環境を作ろう、という動きだ。

テレワーク人口の推移 国土交通省:「2005年時点のテレワーク人口推計(実態調査)結果について」をもとに作成 ※数字は週8時間以上の従事者

 2003年7月に政府が策定した「e-Japan戦略U」では、2010年までに全就業人口の20%をテレワーカーにするという目標が設定されている。今後、ますます多様化するワークスタイルにおいて、就業者にとっては柔軟で効率的な働き方によって仕事と生きがいの両立(ワーク・ライフ・バランス)を実現する有効な手段であり、企業経営者にとっても有能な人材の確保やオフィスコストの削減、生産性の向上、経営強化などが期待されている。

 日本全体でみれば、通勤ラッシュの緩和や地域活性化、雇用の創出、女性・高齢者の社会参画などにメリットがあると考えられている。安倍首相も所信表明演説のなかで、「2025年までにテレワーク人口を倍増させる」とテレワークの普及について言及したことから、にわかに注目を集めた。

 日本テレワーク協会は2006年12月、7回目となる「テレワーク推進賞」の授賞式を開催し、「実施・推進の部」で日本電気やオリックスが、「支援・活用の部」では高知県や沖ワークウェルなど総勢18の企業・団体と1名の個人が表彰された。

 テレワークは、IT系の比較的大企業を中心にすでに実用レベルで運用されているケースや、自社製品を用いてトライアルを行っているケースがある。中小企業では、技術者や主婦、通勤困難者などを従業員として抱える企業で導入されているケースが多い。

 テレワークは、すでに欧米では根付いているとされているが、その大きな理由は「成果主義」という考えが浸透しているからだと言われる。成果さえ出せば会社に居ようが、社外に居ようが関知しないと、という考えだ。

 日本では成果だけで従業員を評価するという考え方がまだまだ一般的ではない。テレワークの導入には、基本的に監督者が毎日のテレワーカーの状況を管理するという作業が発生する。雇用側としては、会社以外の場所で働いている社員がどのような状態にあるのか、本当に仕事をしているのかどうか、というのがやはり気になる点であるようだ。

ワークスタイル変化の原動力になるIM

 最近、テレワークの導入を検討している企業から「IMを利用したい」というニーズが数多く挙がってきている。動機の1つとしては、勤怠管理の側面から社員の状態がひと目で分かるIMが有効だとこと。その他の理由としては、IMが根本的に遠隔地で働く者同士のコミュニケーションツールとして有効に機能するという。

 テレワーカーも、やはり重要案件については「Face to Faceのコミュニケーションが基本」だと考えている。「○○さんから電話ありました」「作業の進捗は?」「明日の打ち合わせの件ですが……」といった揮発性の高いコミュニケーション手段には、相手の状況がリアルタイムに分かり、メッセージングができるIMが必要になると考えているようだ。

 テレワークの本格化については各企業が、効率性の数値化や勤怠の管理方法、またテレワークを行う環境的な問題などの課題を抱えているようだが、女性やSOHO、高齢者だけではなく、男性従業員にとってもワークライフバランスを活かせる好機となる。

 テレワークという就業体制が確立されれば、例えば家族の体調が優れない時や育児休暇を取りたい場合などに自宅で仕事をするという選択肢ができる。このようにすべての就業者に対してメリットがあることを考えれば、テレワークの成功は、日本の企業やビジネスのあり方を変える大きな転換期と成りえる可能性を秘めており、今後のテレワークの普及に対する期待は大きなものとなっている。

渡邉君人

IMを中心としたアプリケーションソフトウェア開発を行うQriptの代表取締役CEO、大阪大学大学院工学研究科博士課程に在籍中。中学時代からコンピュータと向き合うプログラマー、現在は社長業に注力。2000年の設立以来、コンシューマーからエンタープライズ向けまでの幅広いIM製品の開発と販売を行っている。


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