PC世界のリフォーム詐欺、「ミスリーディングアプリ」って何だ?(4/5 ページ)

» 2007年01月11日 10時00分 公開
[小林哲雄,ITmedia]

アフィリエイトとのつながり

 次に、WinAntiVirusPROやWinAntiSpywareのダウンロード先であるjp.winantivirus.comのトップページを見てみよう。すると、「アフェリエイトになりたい方へ」というリンクが用意されている(画面11)。

画面11●WinAntiVirusPROのアフィリエイト募集画面

 ここから推察するに、少なくともWinAntiVirusなどのソフトウェアの作者は、「アフィリエイト報酬を払ってでもこれらのソフトを販売したい」という意思を持っていると思われる。逆に言えば、リンク元のページでは、アフィリエイト報酬目当てでこのサイトへのリンクを張っているわけだ。

 そこで、先の警告画面モドキのアドレスバーを見直してみよう。中に「affid」という項目が含まれている。このaffidは、ダウンロードページへのリンクのURLにも引き継がれている。これが「アフィリエイトコード」だと仮定すれば、一連の動きはこんなカラクリになっていると言えそうだ。

  1. 広告バナーの類で危険性を煽り、ユーザーを不安にさせる
  2. 「ソリューション」を案内する広告バナーをクリックさせ、アフィリエイトコード入りのURLでamaena.comにアクセスさせる
  3. amaena.comではさらに、存在などしていない偽セキュリティリスクの危険性をあおり、ソフトウェアのダウンロード/購入を推奨する
  4. ダウンロード/購入の実績に基づき、広告バナーを用意した人にアフィリエイト報酬が入る

 ここで紹介した例では、3番目のステップの「偽セキュリティリスク」として「ブラックウォーム」が使われていた。だが、これはその場その場で適当に作り変えることも可能だろう。

 ここでもう1つ、種明かしをしよう。amaena.comとwinantivirus.comの情報を見ると、ドメイン登録者は別だがIPアドレスは同一だ。

 画面9のWebサイトのURLには「securityworm5」という文字列が含まれている。そこで、同じディレクトリの下に何があるかを探ってみた。「securityworm1」から「同9」までを入力して試してみたところ、そっくりな警告画面とともに、今度は「WinFixer」や「ErrorSafe」「Spyware Disinfector」という「セキュリティソリューション」が出てきた。また、ブラックウォームの代わりに、「Sereab」という新たな偽の脅威も出てきた(画面12a〜d)。これらのソフトはすべて、ミスリーディングアプリケーションとして知られているものばかりだ。

画面12●URLを変えてアクセスしてみると、デザインはほぼ同じで、ソフトウェアの名称だけが「WinFixer」「ErrorSafe」「Spyware Disinfector」と異なる画面が表示される

 ここまで紹介してきたミスリーディングアプリケーションのうち、SystemDoctorとErrorSafeはともに「ローカライズ」され、日本語による紹介ページまで用意されている。いずれのダウンロードページを見ても、いかにも数多くのシステムエラーが発生しているかのように見せかけ、ユーザーの不安をあおってプログラム本体をダウンロードさせようと試みている。その仕組みもデザインも、まるで同一人物が作ったかのようにそっくりだ(画面13、14)。

画面13●System Doctorのダウンロードページ
画面14●ErrorSafeのダウンロードページ。色合いこそ違うが、デザインコンポーネントや宣伝文句など共通点が多い

 これらのミスリーディングアプリケーションの場合も、どこかのWebサイトに用意された警告風の広告リンクを経由してダウンロードページに誘導され、脅威を誤認させてダウンロード/購入を誘う、という流れだと思われる。しかも、どちらもアフィリエイトプログラムを用意している。

 なお、今回調べたミスリーディングアプリケーションの中では、MalwareWipeが最も直接的な日本語のアフィリエイトの説明ページを用意している。いわく「市場最大のコンバートレート」があるそうだ(画面15)。こうした「魅力的な条件」によって、報酬目当てのアフィリエイトパートナーを獲得し、ミスリーディングアプリケーションのインストールにつなげようと試みている。

画面15●MalwareWipeのアフィリエイト説明ページ。微妙な日本語で「お金がもうかります」と説明している

 ここまでの説明を見て分かるように、プログラム製作側、あるいはアフィリエイトを通じてつながっている広告側が、実際には存在していない脅威を演出してユーザーに購入を強制させている。その意味で、ミスリーディングアプリケーションは非常に悪質だ。

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