歯の浮くようなセリフより大切なものを探せ企業にはびこる間違いだらけのIT経営:第22回(1/2 ページ)

何事も解決のためには、実態に合った具体的な方法論が必要だ。人材育成も単なる掛け声ではなく、時には背水の陣にまで追い込む覚悟が必要だ。

» 2007年01月16日 09時00分 公開
[増岡直二郎,アイティセレクト編集部]

今こそ、有効な方法論を示す時だ!

 最近世の中で、目を覆うような子供の凶悪犯罪が増えている。これに対して、「子供たちに命の大切さを教えるべきだ」と誰もが異口同音に叫ぶ。あるいは企業倫理にもとる事故が多発している。これに対して、「企業は社会的責任を果たすべきだ」と多くの人が主張する。しかし、総論をいかに声高に叫ぼうとも事態は改善しない。命の大切さをどう教えるか、社会的責任をどう果たすか、具体的な方法論の議論こそが求められる。

 しかし一方で、提示した「方法論」が実態に合わないため無意味な例もある。例えば、目下話題になっている子供の世界の「いじめ」問題である。最近ある新聞が、いじめをテーマにした有名人からのメッセージを発している。しかしここで示された「方法論」のほとんどについて、読者のみなさんも疑問に感じることが多いのではないか。「すばらしい瞬間は必ず来る。私はほかの人との違いを見出すのに迷っていたとき、先生から作文をほめられた」、「死なないで、逃げて逃げて、(南の島までも)」、「それでも話してみよう」。こうしたアドバイスを聞いて、少し歯の浮くようなセリフだな、とかんじることはないだろうか。いじめられて悩んでいる子供は、作文のほめ言葉や童話の世界のような逃亡劇で癒されるほど、生易しい状態にいないと思う。そして、誰にも話ができないから悩んでいるのだ。通り一遍の方法論は、当事者の心を微塵も動かしはしないだろう。

 時間軸は異なるが方法論の好例はある。田中秀征元経企庁長官は、教育改革について「管理強化より、農業・福祉などの高・大学生の数カ月間無償労働実習制度の導入」を薦める(「舵を切れ」朝日新聞社)。筆者はかねてから、それを小学校から導入すべきだと主張している。そうした取り組みが、人間や自然を大切にする考えが子供達の身につくはずだ。

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