日本ヒューレット・パッカード HP ProLiant 500シリーズ プロダクトレビュー

» 2007年01月19日 10時00分 公開
[宇野俊夫,PR/ITmedia]
PR

 今更ながら、x86アーキテクチャのサーバとデスクトップパソコンの違いは何かと問われた時、即座にどれほど正確に答えられるだろうか? 例えば、24時間連続稼動が可能な可用性、障害復旧の容易さ、総合性能、拡張性、こうしたキーワードを挙げることはできる。ただ、それぞれの言葉の意味や奥深さは、語る者の知識レベルと理解度によって大きく変わる。

 事実、作り手側ですら意味を履き違える。ほとんどデスクトップパソコンと変わらない造りで、単にサーバ向けチップセットを搭載し、RAID構成が可能な仕組みを持つだけで「サーバ」と銘打って売られる製品もある。こうした「意味を履き違えたサーバ」と本物のサーバとの違いを見抜くには、最新のテクノロジーを理解することが大切だ。カタログ上のスペックの意味を読み解くだけの机上の知識だけではだめだ。また、サーバのコストはハードウェアの価格ではなく、保守運用費用や性能などトータルに考えなければ、誤った判断を下してしまう恐れもある。

 高度な信頼性を維持し、万一の障害発生時に迅速な復旧が可能な本当に優れたサーバを選ぶにはどうすればよいのか? 結局、機器としての設計完成度の高さを見極めること、これが最終的な判断基準となる。それには優れた本物のサーバの内部を見慣れることによって、鑑定眼を養うことだ。やはり設計完成度が高く優れたものは美しいと感じるはずである。もちろん、ここでいう美しさは、単なる外観などのデザイン的な美しさではなく、機能や設計の完成度からくるものであることは言うまでもない。それでは、どのような内部構造が設計的に美しいのか? 今回は、日本ヒューレット・パッカードのラックマウント型サーバ「HP ProLiant DL580 Generation 4」(以下、DL580)(写真1)を例に、ポイントを紹介しよう。

写真1

すべての基本は信頼性と迅速な障害復旧のために

 DL580のようなラックマウント型サーバの構造上の最も大きな特徴は、モジュール化ということに尽きる。すなわち、電源、冷却機構、システムボード、メモリ、ディスクなど、サーバを構成するすべての要素がモジュール化され、万一の障害発生時に迅速な交換が可能なことだ。しかし、そればかりではない。モジュール化構造を採用することで、ラックマウント型サーバの内部構造は、非常に機能的で美しいものになる(写真2)。

写真2

 DL580のモジュール構成は徹底しており、電源が2機(二重化電源構成:オプション)、システムボード、メモリ、冷却ファン(全部で6機)、ハードディスク、光学ドライブなどのモジュールが、すべて工具なしで交換できる。そのすべての方法は、筐体外部上面の天板(アクセスパネル)および内部のメインシャーシ上面にイラストで記載されている。なお、リモートからの「HP Systems Insight Manager」(SIM)による監視により、サーバへの物理的なアクセスや稼動状態はすべて把握可能で、ログへの記録も行われる。

写真3

 DL580内のモジュール間の接続は、電源スイッチやアレイコントローラなど最小限のケーブル配線を除き、すべてケーブルを使わない着脱可能なコネクタを介して行われる(写真3)。そのため内部は恐ろしく整然としており、太いリボンケーブルの空中配線で生じる冷却時のエアフローの妨害問題もなく、ケーブル接続で生じるノイズや接続不良などの根絶にも貢献している。何よりも、ケーブルという信頼性の低いパーツに依存することなく、高信頼性を維持できることが重要なポイントであろう。

 ケーブル配線がないことによるメリットはまだある。モジュールの着脱にケーブルを挿し抜きする必要もなければ、作業の邪魔になることもない。完全にワンタッチでモジュールを交換することができるのだ。しかも多くのモジュールの交換がホットプラグで稼動状態のまま行えるため、きわめて高い可用性と万一のダウン時にも最小の作業時間で復旧が可能になる。

高度なモジュール構造の背後にある技術

 DL580のホットプラグによるモジュール交換可能な構造の背後には、数々の技術が詰まっているが、その一部にスポットライトを当ててみよう。

写真4

最大8台のSAS(Serial Attached SCSI)の2.5インチハードディスクドライブは、小型で発熱量が少なく、ホットプラグによる交換可能なディスクアレイとして構成される(写真4)。SASは、Serial ATAに比べて、連続稼動を前提としたドライブ設計が最大の特徴だ。2.5インチドライブを採用することで、小型化とアレイ構成時のアレイあたりの容量粒度が手頃な範囲に収まるなどのメリットもある。完全にアレイコントローラの制御下にあり、ドライブごとに各種ステータス表示が行われるため、スタンバイや障害を起こしたドライブなどが一目瞭然だ。

 OSのインストールやその他データの読み取りに利用される光学ドライブもモジュール交換が可能で、前面パネルにある「プッシュスイッチ」によってワンタッチで取り出せる。まぁ、しかし個人的には、これはやりすぎだと思うが、徹底したモジュール化思想を一点の曇りもなく実現しようとするこだわりの産物であろう。

写真5

 冷却ファンは、すべて2連構成になっており、冗長構成の一種でもある。冷却ファンという機械的な動作を伴うものだけに、システムの信頼性や可用性をこうしたパーツに頼るわけにはいかない。当然のことながらホットプラグで交換可能だ(写真5)。上部のプラスチックハンドルを軽くつまんで引き出すだけで、文字通りワンタッチで交換できる。ちなみに、どのファンが障害を起こしたのかは、ファンの上部にLEDによるインジケータ、前面パネル、天板(アクセスパネル)を取り除いた上体で見えるシステムインサイトLEDで確認できる。緑なら正常、橙なら交換だ。

 電源モジュールもまた二重化構成が可能になっており、ホットプラグで交換できる。ちなみに、オプションで2つの電源モジュールを搭載すれば、正常動作時には2つの電源モジュールへ均等に負荷が分散される。このため、電源回路としては余裕のある状態で動作することから、温度上昇も少なく長寿命化にも貢献できる。ここでは軽く、「均等に負荷が分散される」と記したが、システム全体が必要とする供給電力の大きさから、実は電源の出力に非常に高度な制御回路が必要なことを意味する。

写真6

 DL580には、3つのPCI-Xの拡張スロット(2つはホットプラグ対応)と4つのPCI Express(ホットプラグ未対応)の拡張スロットがあるが、いずれもドライバーが要らず、ワンタッチで拡張カードを取り外すことができる(写真6)。そもそも、従来のような板金の筐体に開けられたネジ穴に拡張ボードの金具をネジ止めするという方式では、万が一ネジ溝から金属片がシステムボード上にこぼれ落ちでもしたら、安全性にきわめて深刻な問題を生じる。HP ProLiantがネジを使わない理由は、ホットプラグ対応だけでなく、こうした安全への配慮の結果でもあろう。

 メモリもまた、ホットプラグで交換することができる。これを実現するには、まずメモリの構成自体を冗長構成にしなければならない。この考え方は少々複雑で、DL580のメモリ構成は、アドバンスト メモリ プロテクションと呼ばれ、次のような構成から選択できる。

  • 通常のアドバンストECCメモリとして、1ビットのエラーまたは同一DRAMチップ内で発生したマルチビットのエラーを訂正可能なモードで、ホットアド(稼動状態時にメモリの追加が可能)に対応する
  • オンラインスペアメモリとして、4つのメモリボードのうち1つを待機状態にし、ほかの3つのメモリボードの1つに異常が発生した時に代替として利用する
  • ホットプラグ対応ミラーメモリとして、メモリボードが2枚または4枚実装されている時、それぞれペアとなりミラーリングで利用する。ホットリプレース(稼動状態時にメモリの交換が可能)をサポートする
  • ホットプラグ対応RAIDメモリとして、4つのメモリボードを利用した自己訂正可能な冗長メモリ構成

なお、メモリボードは最大4枚まで搭載可能で、フロントパネルから交換、追加ができる(写真7)。メモリボード1枚あたり最大16GBまでの容量を搭載できるので最大64GBとなる。もちろん、オンラインスペアやミラーリング、RAIDメモリなど構成によって最大メモリ容量は変化するが、いずれにしても現状では十分なメモリ容量を搭載できる。

写真7

ビジュアルなチェック要素

 もちろん、理論的にいくら高信頼性パーツを採用しても、何らかの理由でシステムが稼動しなくなる可能性をゼロにはできない。そこで、サーバの状態を遠隔地から監視するほか、サーバ上のサーバインサイト表示パネル上のLEDほか、多数のLEDによる直感的な状態把握が行えるようになっている。この点はリモートでの監視が可能であっても、現場で作業する場合には非常に重宝する機能だ。高い可用性を実現した製品とはいえ、こうした表示を備える点は高く評価したい。


 DL580は、1994年に登場した最初のHP ProLiantラックマウント型サーバの直系の子孫に当たる。4プロセッサまで搭載可能な高性能x86ラックマウントサーバとして、現状ではほぼ完成の域に達している製品の1つではないだろうか。非常に細かい部分までよく練られている。

写真8

これにさらなる改良を加えるとすれば、かなり難しい注文だが、筐体の全体的な重量バランスの配分ぐらいだろう。部分的な重さが多少異なるため、ラックへの出し入れ時にバランスに注意しながら作業する必要がある。もちろん、改善の余地があるから更なる進歩が生まれる。とはいえ、現時点でここまでの完成度、技術的な美しさを備えたサーバは極めて少なく、一見の価値がある。目を肥やし、目的に合った機種選定のリファレンスとして、DL580の内部をじっくりとその目で観察してみることをお勧めする(写真8)。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2007年4月2日