システム管理者に迫られる「人生の選択」女性システム管理者の憂鬱(2/4 ページ)

» 2007年02月01日 08時00分 公開
[高橋美樹,ITmedia]

 普通の仕事であれば、その部門を仕切ることや、社員全体に影響するような判断は、業務を数年経験し組織の中でもある程度認知された役職につかなければ到底、無理な話である。しかし、ITに関して専門的な技術スキルとノウハウを持つシステム管理者には、各部署との調整からシステムの選択まで始めからある程度一任されることが多い。また、女性であっても、頑張ってスキルを身につければ、男性と対等に仕事をやらせてもらえる。性別に対する偏見の少ない世界にも思えたのだった。

 そんな思いからこの世界へ足を踏み入れて1年。自分の足跡を振り返ってみると、繁忙期には体がもたないのではというくらいの体力への不安と、自分の知識でこの難局を乗り切れるのかと言うプレッシャーも嫌と言うほど経験してきた。それをいくつか乗り越えてきて、「おお、わたしもやればできるんだ」という心地の良い達成感を知ってしまった。管理を任されている拠点では、必ず重要な社内イベントがある場合には事前に知らせてもらい、システム担当として意見を求められたり、予算の使いみちの相談を受けたりと、まさに入社前に思い描いていた理想のポジションでの仕事を任されていた。

システム管理者は一生の仕事か?

 しかし、一生の仕事と考えたときにはどうだろう。まして、この会社の社員としてシステム管理者の仕事をするのにリスクはないのだろうか。そんな疑問も頭をもたげていた。

 わたしの実際の勤務先は所属している会社の親会社である。正直、子会社という別会社のわたしに対してすべての親会社の情報を公開してもらえるわけではない。そこには、わたしに指示を出す担当者の判断が介在する。そこで思わぬトラブルが発生したことも一度や二度ではない。正社員となれば、派遣社員にはない定期的な成果報告を自社へ行う義務も出てくるが、子会社の社員という窮屈な立場で思った通りの成果が出せないというジレンマに陥ることも予想される。

 将来性についても考える必要があるだろう。システム運用とネットワーク工事をメインにしている会社にあっては、開発に進むといった新たな展開は望めない。その点は運用を究めたいわたしにはなんの問題もなかったが、昇進の面ではどうだろうか? 当時、所属会社の課長以上はすべて親会社のOBで占められていた。今後も次々に親会社OBがマネジャーとして異動してくるのであれば、ここでの出世は望めない。元々、中途採用で入社したのだからそれはそれであきらめるとするか。一生現場で終わったとしても、この仕事なら逆にうれしいような気もするし。

 数日間、ああでもない、こうでもないと考えた結果、急な会社の体制の変化でシステム管理の仕事を取り上げられるよりは、継続的に何らかのシステム管理の仕事に安定して関わっていけるだろうと社員の道を選択した。勤務態度を1年間観察された上で声を掛けられたせいか、採用試験を受けた人はほとんどが合格し、わたしも晴れて正社員として辞令を受けた。が、仕事は派遣社員だった昨日までとまったく変わらぬ内容で、大きな変化が起こるはずもなかった。

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