高速PLCにもあった互換性問題「エンタープライズPLC」のススメ(3/3 ページ)

» 2007年02月06日 08時00分 公開
[井上猛雄,ITmedia]
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PLCの将来を左右する?――チップの互換性問題

 現在のところ、PLCには国際的な標準規格となるものがない。そのため、PLC関連メーカーはチップの開発元を中心に作られた「HPA(HomePlug Powerline Alliance)」「UPA(Universal Powerline Association)」「CEPCA(Consumer Electronics Powerline Communication Alliance)」という3つの業界団体のいずれかに属している状況だ。主要モデムチップの供給元としては、HPAが米Intellon(インテロン)製、UPAがスペインのDS2製、CEPCAは松下電器が中心になっているが、DS2製のチップとの共存仕様を目的にしており、特にチップを限定していない。

 仕様については、HPAは2001年にHomePlug 1.0(最大14Mbps)を公開しており、多数の認定製品がある。そして2005年には高速なHomePlug AV(最大200Mbps)仕様も公開。すでにIntellonがAV対応チップをリリース済みだ。一方、UPAは2005年に共存仕様を公開しているが、チップ自体の仕様は未公開となっている。また、CEPCAも共存仕様を目指しているが、チップの仕様は未公開だ。特定メーカーのPLC技術を推奨するのではなく、異なる技術の共存を目指しているという。それぞれの団体の主要メンバーや方式については表1を参照してほしい。

表1●PLCの推進団体
PLC業界団体 HPA(HomePlug Powerline Alliance) UPA(Universal Powerline Association) CEPCA(Consumer Electronics Powerline Communication Alliance)
設立 2004年4月 2004年9月 2005年6月
活動目的 相互接続できる標準準拠の宅内PLC製品の推進と普及 アクセス/宅内PLC技術が相互接続、共存するための仕様を検討する 宅内PLC技術が共存するための仕様を検討する
主なチップメーカー 米インテロン スペインDS2 松下電器産業
主なメンバー インテル、モトローラ、TI、シスコシステムズ、コムキャスト、アースリンク、ソニー、シャープ、住友電気工業、サムスン電子、LG電子など71社 DS2、アンビエント、BPLグローバル、コムマックス、住友電気工業、東洋ネットワークシステムズ、伊藤忠商事、PCNネットワークス、東芝、ST&Tなど19社 松下電器産業、三菱電機、三洋電機、日立製作所、東芝、ヤマハ、パイオニア、NECパーソナルプロダクツ、ソニー、三菱マテリアルズ、三洋電機、ST&Tなど16社
伝送速度 200Mbps 200Mbps 190Mbps
変調方式 OFDM OFDM Wavelet変換OFDM
使用周波数 3M〜34Mbps 3M〜34Mbps 4M〜28Mbps
用途 宅内(ホームネットワーク) 宅内(ホームネットワーク)/アクセスライン 宅内(ホームネットワーク)
PLCのチップベンダーを中心にして、HPA、UPA、CEPCAの3団体がある

 問題なのは、現時点でこれらのチップに互換性がないことだ。当然のことながら、異なる仕様のPLC機器同士は通信できない。それだけでなく、同じ電力線上でほかのPLC機器が混在すると、通信自体が妨害されてしまう現象が起こる。互いを認識できないPLC信号は、双方の機器にとってノイズとしか見なされないため、通信速度が著しく落ちてしまうことになりかねない。

 そこで、少なくともお互いの通信を妨害しないようにするために、IEEE P1091タスクフォースなどでも、異なるチップを搭載した製品の共存に向けて標準化を進めているところだ。今年の6月から具体的な仕様の議論を開始する。IEEE P1091での仕様決定は2007年末以降になる見通しだ。

 将来、家庭内にPLC機能を装備した家電機器が導入されるようになった場合、各社の仕様が統一されていないと混乱が起きてしまう。PLCが普及する上で標準化は大きなキーポイントになるだろう。

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