「企業向けPLC」の市場性はまだ未知数だ。マーケット拡大の可能性を探るべく、エンタープライズPLCを事業として展開する2社を取材した。
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前回は、エンタープライズ向けのPLCに求められている要件について、主に製品の仕様面から取り上げた。では、エンタープライズ向けPLCの市場に参入するベンダーは、高速PLCに関してどのような考え方、あるいは戦略を持っているのだろうか。
NEC(日本電気)グループでは、昨年の高速PLC解禁を受け、PLCソリューションビジネスを拡大するために、社内に「エネルギーソリューション事業部PLC推進センター」を発足した(関連記事)。この推進センターは正式名称のとおり、NECのエネルギーソリューション事業部内にある。同社の本林稔彦氏(同事業部 PLC推進センター長)は、「数年前からこの事業部でPLCに関するさまざまな活動をしていた。PLCをソリューションとして販売できるように、従来からの部門フォーメーションを作り変えた」と語る。
高速PLCの具体的なコンサルティングやソリューション構築、実環境の把握などについて、グループ内で旗振りをするのが、現時点での推進センターの役割だ。企業向けシステムのインテグレーションは、グループ会社のNECネッツエスアイが担当する。また、同社の子会社である東洋ネットワークシステムズ(TNSi)が基礎技術の開発や製品化を担う。同社は国内向けに高速PLCモデム「TOYONETz PLCモデム」を提供している。
NECグループでは、まずエンタープライズをターゲットとしてPLCビジネスを展開していく方針。「PLCが導入されて一番便利なシーンがエンタープライズ」(本林氏)という理由からである。PCにPLCが実装されるようになれば話は変わってくるが、当面そういう状況もないとみており、コンシューマー向けについてはその次の展開になるという。ホームネットワークの切り口で展開するようになった場合には、ホームゲートウェイやVoIP無線LANアダプタなどへの組み込みも想定している。こちらもすでに開発しているが、製品化については少し先になりそうだ。
「高速PLCによって、エンタープライズ系のネットワーク構築がすべて解決するわけではないが、オルタナティブな1つの解決法になると考えている。PLCが無線LANを凌駕するということではなく、ある場所では無線LANを利用し、ある場所ではPLCを使って、適材適所での提案をしていきたい。例えば、無線LANが簡単に用意できないところに対し、ネットワークのコネクティビティを提供することで、分かりやすい解決策を提示する」(本林氏)
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