EMCの買収攻勢はひと休み? トゥッチCEOが示唆

EMCのトゥッチCEOは、これまでRSA Securityを含む31社を貪欲に買収合併してきたが、「現在物色している会社はない」と方針転換を示唆した。

» 2007年02月16日 09時14分 公開
[Chris Preimesberger,eWEEK]
eWEEK

 データストレージ業界の貪欲なライオンが少し落ち着いてきた?

 ストレージソフトウェアとハードウェアの最大手、EMCは2月上旬にサンフランシスコで開催されたRSA Conferenceで、今後大規模な買収についてはしばらく様子を見ることを示唆した。同社は、過去5年間でRSA Securityを含む31社を買収合併してきた。

 EMCの社長と会長を兼務するジョー・トゥッチCEOはまた、年商110億ドルの同社が2007年にオンラインストレージ市場に参入することもほのめかした。同分野で競合するライバルたちには歓迎できないニュースだ。

 さらにマサチューセッツ州ホプキントンの同社は2月7日、VMwareがこの夏にIPOする際に、その10%の株式を売却することも明らかにした。

 「ここ数年、われわれは多くの買収を行ってきた。RSA Securityは最も大きな買収の1つであり、その作業はとても円滑に進んだ。しかし、2007年は、これまでのように積極的に買収を行わないだろう。今、物色している会社は全くない」とトゥッチ氏はレポーターやアナリストらに話す。

 現在の積極的な買収戦略に諸手を挙げて賛成しない株主らにとっては歓迎すべきニュースだ。彼らは、四半期ごとの決算会議で、同社は成長を急ぎすぎており、肥大化によって押し潰されてしまうと声高に主張した。

 昨年7月にデータセキュリティ最大手であるRSAを21億ドルで買収することが明らかになったとき、EMCの株価は7%急落した。しかし、こうした同社の動きは十分に価値があった。RSAは2005年の会計年度で3億1000万ドルを稼ぎ出し、2006年はさらに上向いている。

 トゥッチ氏は、現在同社が置かれているポジショニングは悪くないと考えている。EMCは世界のストレージソフトウェア市場では28%、外部ディスクストレージハードウェア市場では約21%のシェアを獲得している。ストレージシステム全体やストレージサービスを含む幾つかの分野においても上位3社に食い込んでいる。

 「大型買収を行うよりは、2007年は目前の仕事に注力したいと思う。たぶん、仮想化とそのサービス分野において小規模な買収はあるかもしれないが、ともかく、チェス盤で大きな動きはないだろう。既にあるビジネスを強化する必要がある」とトゥッチ氏。

オンラインストレージ事業に参入?

 トゥッチ氏は、EMCが今年、オンラインストレージサービス事業に参入することをほのめかしている。Hewlett-Packard、Comcast、AT&T、Verizon、CommVault、そして多くの新興企業が同分野に参入している。オンラインストレージサービスを活用すれば、企業は自社ではなく、サービスプロバイダーのストレージサーバにアーカイブデータを保管できる。

 RSA Conferenceの会場となったサンフランシスコのモスコーニセンターでトゥッチ氏は、レポーターやアナリストらに対して、「オンラインアウトソーシングには同意しない。まだ、そういう状況にあるとは思わない。特に大企業において、サーバやデータを分離することは難しいし、ほとんど愚かな考え方だ」と話した。

 しかしながら、バックアップデータをオフサイトに保管したり、信頼できるパートナーのオンラインストレージサービスに預けるのは良い手だと話す。

 「電子メールを7年間も保存しなければならない企業にとっては、バックアップのデータ保管は有効な手段となる。Comcast、AT&T、およびVerizonはリッチなメディアを格納するオンラインサービスを提供しているが、大企業のすべてのデータをオンラインで保管するマーケットはない。実例や模範になるようなものはまだない」(トゥッチ氏)

 「今年、EMCはオンライン分野に参入する」と漏らしたのは、そのときだった。

 これと別にEMCは、成長著しい傘下のVMwareがIPOする際、その10%の株式を売却する計画を明らかにしている。同社はVMwareの90%を引き続き所有する。発表時の電話会議でトゥッチ氏は、VMwareが独立した別会社になったり、同社には残り90%の株式を売却する意思はないとしている。

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