情報機器の高機能化を担うソフトウェア開発の負担は増すばかりだ。多種多様なデータの利用をいかに効率化し、機能やサービスの価値を高めるか。組み込みDBの活用がカギを握る。
携帯電話を例に見ると、通話やメール、インターネット、カメラ、音楽、テレビ、チャット、プレゼン資料編集など、1台の端末で利用できる機能は実に多い。
端末リソースの限られた環境でこれらの機能を実現するには、ミドルウェアの存在が欠かせない。だが、ユーザーの「1台でこれをやりたい、あれができれば」――といった拡大し続けるニーズに対応するには、組み込み向けミドルウェアの充実化が求められる。特にデータベース(DB)管理は、まだまだアプリケーションベースで対応しなければならないケースも多い。
近年になり、情報機器で利用できる組み込み向けのDB製品が相次いで登場した。「組み込みDBの採用がようやく本格化し、次世代の機能やサービスに直結するDB自体の性能が注目され始めた」――日立製作所ソフトウェア事業部の関芳治主任技師はこのように話す。
通信や表示、言語処理など基本制御に関わる組み込みのミドルウェアがソフトウェア開発の負担を大きく軽減したように、組み込みDBの活用もソフトウェア開発の負担を軽減し、品質改善や機能向上などへさらに専念できるようになる。
日立製作所と日立ソフトウェアエンジニアリングの「Entier」は、ロードサイズが600Kバイトほどながら、200万件のDBから対象データを10ミリ秒単位で抽出する検索性能が特徴だ。空間検索や絞込み検索などの検索機能を持つ。
例えばカーナビソフトが担っていた地図データの管理を組み込みDBに置き換えれば、カーナビソフトのプログラムコード量が削減され、ソフトの信頼性が高まる。組み込みDBの機能を利用して、「DBの部分的な更新作業や複雑な検索処理の高速化を実現することが可能になる」(関氏)という。
これにより、開発リソースをソフト品質の改善に集中投下したり、機能本体の向上に割り当てることができる。また、開発期間の大幅な短縮にもつながる。
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