「高い、難しい、不安」はもう過去のもの――OSS導入の新常識

NECがSpikeSourceとOSS分野で協業すると発表したのが半年前。NECが中堅・中小市場に業務アプリケーションまで含めたフルスタックという“銀の弾丸”をいよいよ発射しようとしている。NECのOSS戦略の最新事情をまとめた。

» 2007年03月05日 00時00分 公開
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 昨年10月、NECはオープンソースソフトウェア(OSS)サービスのSpikeSourceとOSS分野で協業すると発表した(関連記事参照)。併せてこのとき、NECとNECシステムテクノロジーは、SpikeSourceに対して200万ドルを出資している。

 その後目立った動きが見えなかったため気づかないかもしれないが、この発表にはOSS関連事業に対するNECの戦略が色濃く反映された施策となっている。この発表から半年がたち、いよいよNEC内部の体制も固まってきた今、NECでOSS推進センターのグループマネージャーを務める高橋千恵子氏に今後の展望を聞いた。


今SpikeSourceが支持される理由

photo 「SpikeSource との協業によるビジネスは第2フェーズに入った」と話すNEC OSS推進センターのグループマネージャー、高橋千恵子氏

 ここでSpikeSourceについて簡単におさらいしておこう。同社は、Apache、Tomcat、PostgreSQL、MySQLなど、主にWeb層、サーブレット層、データベース層をカバーするOSSを組み合わせて独自の動作検証を行い、「SpikeSourceコアスタック」として提供するとともに、サブスクリプション型のメンテナンスサービスを提供する企業。こうしたコアスタックの意義について、NECでOSS推進センターのグループマネージャーを務める高橋千恵子氏は、「安い、簡単、安心」とキーワードを挙げる。

 設備投資が下降傾向にある昨今、小企業から大企業まで、企業は押しなべてLinux/OSSの採用を進めているが、そこには幾つかの難関が待ちかまえている。確かに、商用ソフトウェアの導入と比べれば、ライセンスフィーなどの点でコストを削減できるだろうが、インストールやサポート、評価といった点では、工数が増えることも珍しくない。特に、コンポーネントが多いとそれぞれの依存関係なども考慮する必要がある上、稼働後の保守においても、ソフトウェアのアップデート情報を自身で収集する必要があるなど面倒なことも少なくない。

 SpikeSourceはこうした問題を「SpikeSourceコアスタック」およびアップデートサービスである「SpikeNet」などで解消している。独自に相互関係など検証した「SpikeSourceコアスタック」は、複数のパッケージを一括でインストールでき、そのセキュリティパッチやアップデートもまとめて行える。ユーザーがあれこれ情報を収集せずとも、運用できてしまうという点が多くのユーザーから支持を集めている理由だ。

 現在、「SpikeSourceコアスタック」を構成するOSSは以下の通り。これを見ると、Tomcatとデータベースを軸にした実行環境とPHPなどの開発言語を含んだLAMP環境が提供されていることが分かる。

現在「SpikeSourceコアスタック」を構成しているもの

JDK 5、Tomcat 5.5、Tomcat Connector (JK) 1.2、Apache Web Server 2.0、PHP 5.1、Xerces/J 2.8、PostgreSQL 8.0、PostgreSQL JDBC Driver for 8.0、phpPgAdmin 4.01、MySQL 5.0、MySQL Connector/J 5.0、phpMyAdmin 2.8、mod-auth-mysql 3.0.0


MySQLはスタックには入っているがサポートは別契約

第2フェーズに入ったNECのOSS戦略

 SpikeSourceと協業したことで、SpikeSourceのソリューションをワールドワイドで再販できる契約を結んでいるNECだが、高橋氏はこれを「フェーズ1でしかない」とし、すでに次のフェーズへ進んでいると話す。

 NECとSpikeSourceの協業が発表された時点では、「SpikeSourceコアスタック」とOS(現時点ではLinux版スタックのみ)をNECのIAサーバ「Express5800」シリーズに搭載、NECシステムテクノロジーが日本語によるサポートも展開しつつSMB領域、つまり中堅・中小市場のユーザーを対象に販売していくとされていたが、この市場においてはそれだけでは十分でないと高橋氏。その理由としては、業務アプリケーションまで含めたスタックが望まれるためだという。

photo SpikeSourceとの連携で狙うのは主にSMB市場。基幹系や情報系といった領域でも商用/OSSの混在などでOSSの利用を図るが、そのサポートについてはNECが提供しているOSSミドルウェアサポートサービスで対応していく

 前述したように、現時点でNECが中堅・中小市場向けに提供しているのは、「SpikeSourceコアスタック」に自社のExpress5800シリーズおよびOSを一体にしたもので、ほかのミドルウェアやより上位の業務アプリケーションの部分は顧客に任せている。ここで、「業務アプリケーションパッケージまで含めてアプライアンス的に提供すること」のニーズを感じていると高橋氏。ミドルウェアの上に位置する業務アプリケーションなどまでパッケージングされれば、顧客にとって非常に導入効果の高いソリューションとなる。そうすれば、今まで以上に「安い、簡単、安心」のキーワードが響いてくる。NECのOSS戦略第2フェーズのキモはここにある。

ISVとSIを巻き込んだ施策を展開

 実は、こうしたニーズに答えるソリューションをSpikeSourceは北米においてすでに提供している。SpikeCertifiedやSpikeIgnitedと呼ばれるソリューションがそれにあたり、どちらもパートナーが持つ業務アプリケーションまでスタックを提供しようとするもの。SpikeCertifiedとSpikeIgnitedの違いは、前者がSpikeSourceにアプリケーションのバイナリコードを提供すればよいのに対し、後者はソースコードの提供が必要となることだ。無論、後者の方がSpikeSourceコアスタックとの連携は密になる。SpikeSourceのWebサイトを見ると、AlfrescoやDrupal、Centric CRMなどの企業をパートナーとし、業務アプリケーションまで含めたスタックを提供している。

 すでにSpikeSourceが展開しているとはいえ、日本語対応などの点1つ見ても、そのまま日本市場に持ち込むことは若干の懸念がある。このためNECでは、日本市場特有の動きをふまえた上で、日本市場に最適と思われる業務アプリケーションをSpikeSourceコアスタック上でSpikeSourceとともに検証し、それを提供しようとしている。ここで、どういった業務アプリケーションを用意するのかについて高橋氏は次のように答える。

 「将来的には、CRM、ERP、CMSなどそれぞれの業務アプリケーションで2つか3つ用意することを考えていますが、短期的な話をするならまずCRM(Customer Relationship Management)です。SMB市場でCRMというと、『難しそう』などのイメージがあるようですが、SugarCRMのようにわたしたちですらかなり使いやすいと感じるものも存在しています。国内でSugarCRMの正規取扱店であるケアブレインズと連携し、まずはSugarCRMを提供してユーザーの“食わず嫌い”を改善するきっかけを作っていきたいですね」

 この動きで興味深いのは、SpikeCertifiedにおいてはバイナリコードを提供すればよいとされている点にある。つまり、SpikeSource自身、必ずしもOSSだけの組み合わせを想定しておらず、商用のパッケージであっても、SpikeCertifiedとして認可するスタンスであるということだ。ISVからすればこうした取り組みへの参加障壁が低くなることを意味する。NECでも、ISVの参加を促進するためのパートナー制度などを導入することで、この取り組みへの参加を促していくという。

 「(SpikeIgnitedで求められる)ソースコードの提供というのはかなり抵抗があると思いますが、バイナリコードであれば、そうした抵抗も和らぐと考えている。販売機会の拡大が見込めるという意味では、NECが持つ業務アプリケーションはもちろん、国内のISVにも呼びかけて、中堅・中小市場、つまり量販市場のユーザーに響く業務アプリケーションパッケージまで含めたメニューを提供していきたいと思います」

 もちろん、この延長線上で、SpikeSourceがSpikeIgnitedとして提供しているのと同様の施策も考えられる。SpikeIgnitedでは、SpikeSourceコアスタックに組み込みたいアプリケーションのソースコードをSpikeSourceに提供する必要があるが、SpikeSourceが検証し、同社のインストーラに組み込まれることになるため、販売機会の拡大などを考えればSpikeCertified以上のメリットも生じる。このあたり、オープンソースアプリケーションのビジネス利用に取り組むという名目で先日設立が発表された「Open Solutions Alliance」(OSA)とも密接に関係していることがうかがえる(関連記事参照)。OSAの構成メンバーには、SpikeSourceのほか、SpikeIgnitedでもあるJasperSoftやCentric CRMも名を連ねており、SpikeIgnitedの輪が広がる可能性を示している。

 さらに昨今のWeb 2.0技術の盛り上がりを受けて、NECもその対応を進めているという。2006年11月、IntelはブログやWikiなどのいわゆるWeb 2.0サービスを実現するソフトウェアスイートとして「SuiteTwo」を発表しており、そこにはSpikeSourceのほか、Six Apart、Socialtext、SimpleFeedといったWeb 2.0系のソフトウェアを提供するベンダーが名を連ねている。

 NECは、SpikeSourceと密に連携し、国内外のISVとも協力しながら、日本市場に適したWeb2.0サービスを実現するソフトウェアを提供しようとしている。

 ISVに加えて、システムインテグレーターとの連携も強化するという。これは、「SpikeSourceコアスタック」を利用した付加価値製品もしくはサービスを提供するパートナーに向けて、「SpikeSourceコアスタック」のサポートをNECが行うというもの。これにより、システムインテグレーターは2次もしくは1次サポートをNECに任せることができるため、高信頼性が求められるような案件にも積極的にSpikeSourceコアスタックをベースとしたものを提案できることになる。


 第2フェーズに入ったNECのOSS戦略。業務アプリケーションまで含めたスタックサービスという“弾丸”は、中堅中小市場攻略の銀の弾丸となることが期待される。

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提供:日本電気株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2007年3月30日