MS、Lotus Notes/Dominoからの移行ツールをアップデート

NotesメールからExchangeへの移行を支援する新ツール「Transporter Suite」は、データの抽出/変換/ロード(ETL)機能を提供する汎用プラットフォームとしても利用できる。

» 2007年03月06日 11時30分 公開
[Paul DeGroot,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Microsoftが提供する新ツール「Transporter Suite」は、IBMのLotus DominoからMicrosoftのExchange Server 2007、SharePoint Server 2007、Windows SharePoint Servicesへの移行を支援するためのものだ。このツールはコマンドラインインタフェースとグラフィカルインタフェースの両方を備え、パートナーや顧客は同ツールを拡張して、ETL(Extract, Transform, Load:データの抽出、変換、ロード)機能を提供する汎用プラットフォームとしても使用できる。

Lotus Notes/Dominoとの競争

 Lotus Dominoは、構造化データ/非構造化データ(電子メールや文書など)のデータベースのほか、ユーザーやアプリケーションを接続するためのメッセージングハブ、あるいは開発環境など、複数の役割をこなす複雑なデータベース/ワークフローサーバ製品だ。Lotus Dominoには、SQL ServerやExchange、SharePoint Serverなど各種のMicrosoft製品で提供されているさまざまな機能が統合されている。一方、Lotus NotesはDominoに対応するデスクトップクライアントだ。メールのほか、Dominoアプリケーション、ディスカッション、ワークフロープロセスなどへのアクセスに用いられる。

 Dominoの前身であるNotes Serverでは、エンタープライズコラボレーションやメールなどの機能がMicrosoftに先んじて提供されたが、今のところ、Dominoはメール市場でExchangeに後塵を拝している。ただし、どちらの製品も依然として成長を続けており、競争は熾烈だ。例えば2006年には、IBMが「MicrosoftからLotusに移行した顧客に対して最大2万ドルをキャッシュバックする」というキャンペーンを展開、MicrosoftもDomino/Notesアプリケーションから自社製品への移行を支援するツールを更新している。

 両社とも、2007年に製品のアップグレードを予定している。Microsoftはこれまで、Domino/Notes環境をMicrosoft環境に移行させ、両システム間の共存を管理するためのソリューションとして、複数のツールを個別に提供してきたが、今回、新ツールのTransporter Suiteでは、そうしたツール群の各種の機能が1つに統合されている。

提供される移行と共存の機能

 Microsoftがこれまで提供してきた移行ツールは大概、個々の製品間の移行を支援するためのものだったが、今回、MicrosoftはTransporter Suiteを「柔軟性のある汎用的なETLプラットフォーム」としてアピールしている。

 Transporter Suiteによって提供される主な移行機能と共存機能は以下のとおり。

  • NotesのユーザーとメールをExchangeに移行する
  • NotesメールとExchangeを接続し、共存させる(例えば、送られてくるメールはExchangeで受信し、Notesユーザー向けにDominoに転送するといったことが可能)。メールにはSimple Mail Transport Protocol(SMTP)、カレンダーデータにはiCalendar標準が用いられる
  • DominoディレクトリとActive Directoryとの同期化
  • カレンダーのフリー/ビジー情報を探す
  • Dominoアプリケーションを解析し、SharePointに移行する(ただし、ビジネスロジック、ワークフロー、ユーザーインタフェースは移行されない)

 Transporter Suiteは現在、β版が提供されている。サポートされているのは、Lotus Domino 5/6/7から、Exchange Server 2007、SharePoint Server 2007、Windows SharePoint Services(WSS)3.0、およびWindows Server 2003 Active Directoryへの移行あるいは接続だ。Exchange 2007を導入していない組織も、Transporter Suiteを使ってDominoのデータやアプリケーションをSharePoint ServerやWSSに移行できる。

 Notesから旧バージョンのExchangeやSharePointに移行あるいは接続するためのツールは、今後も引き続き提供される。そうしたツールには、Application Analyzer 2006 for Lotus Domino、Data Migrator 2006 for Lotus Domino、Exchange Server 2003 Connector、Exchange Server 2003 Calendar Connectorなどが含まれる。Transporter Suiteには、これらのツールにより個別に提供されていたサービスがすべて統合されている。

Transporter Suiteのアーキテクチャ

 Transporter Suiteは、多様なタスクに合わせてカスタマイズできるプラットフォームとして、これまでのツール群よりも柔軟で融通性の高い存在となりそうだ。Transporter Suiteは、SQL ServerのIntegration Servicesなど各種のETLアプリケーションが提供するETLサービスの代替選択肢として、各種のETLソリューションにも利用できる。

 Transporter SuiteのコアエンジンはC#で記述されており、構造化データと非構造化データ、いずれのデータソースにも接続できる。異種データソースからもオブジェクトやデータを読み込んで表示でき、ターゲット環境(ExchangeメールストアやActive Directoryなど)に注入する前に、そうしたオブジェクトの変換、追加、削除を行える。

 Transporter Suiteに手を加える際の主要なインタフェースはPowerShellだ。PowerShellはExchange Server 2007で導入されたシェルスクリプティングエンジン。PowerShellを使えば、Dominoのオブジェクトやデータを開き、それをExchange環境に移行するためのTransporter Suiteの各種機能にアクセスできる。管理者はコマンドラインからPowerShellを扱えるが、グラフィカルユーザーインタフェースも提供されており、組織がWebインタフェースを開発することも可能だ。例えば、ユーザーがWebリンクをクリックすると、新しいページが開かれ、そのページで自分のDominoメールボックスをExchangeに移行する作業を進められるようにする、といったこともできる。

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