難しきは「社内調整」女性システム管理者の憂鬱(1/4 ページ)

システム管理者の仕事の最も大変な作業は「社内調整」と言えるかもしれない。何かトラブルが起こっても責任の所在が明らかになるまでは誰も動かない。巻き込まれたのが役員でなければの話だが。

» 2007年03月08日 08時00分 公開
[高橋美樹,ITmedia]

 システム管理を5年も担当すると、この仕事が網羅するほとんどの領域を経験してきた感がある。システムの設計構築や運用などの技術的な実務から、障害対応、引っ越しやPC入れ替えといった力仕事、果ては取引先との折衝までと、多くの現場を経験してきた。そんな中でも手こずる作業というと、真っ先に「社内調整」が思い浮かぶ。1つのイベントをスムーズに進行させるには、事前に社内の各関係部署への根回しが必至となるだが、同じ社内の人間には遠慮がない分、取引先との折衝の方が楽に感じられるほど、これがなんとも難しい仕事なのだ。

 部署をまたいでの連携ともなると、行動を起こすより先に、何か起こったときの責任の所在を明確にすることが求められる。これが決まるまでは、どんなに事態が緊急でも、単純な作業依頼であっても、頑として協力を拒否されてしまう。もちろん、どこで責任を持つかの確認が重要なことは認識しているが、セキュリティに関連するような緊急時にも、依頼のルートを頑なに守ることを要求されると、納得がいかないときもある。

部署をまたがると小さな対応に2カ月

 その昔、わたしが在籍していたセキュリティ対策部門では、一般社員のセキュリティ意識を高める試みとして、独自のセキュリティ講座を開催していた。その講座では、2名の女性インストラクターが、OSの標準機能を使ったファイルの暗号化や、社内に導入されたばかりのPKIなどを一般ユーザーにも分かりやすく解説していた。

 そのインストラクター陣には、セキュリティに関するホームページの作成も担当してもらっていたため、日頃から付き合いも深く、時間があえばランチをともにして社内の噂話に花を咲かせる仲だった。その日もランチでいつものように、あの人はカツラだだの、あの人とあの人の仲が怪しい、などとたわいもない話で盛り上がった後、たまたまセキュリティ講座の話題になった。

A:「なんか最近Windows XPの暗号化に失敗するんだよね。以前はできてたのに」

わたし:「え、そうなの? わたしWindows 2000を使っているから気づかなかった。Windows 2000では暗号化できるよね」

A:「そうそう、Windows XPだけが失敗するの。テキストに沿って説明してても『これを選択すると暗号化ができます・・・・・・のはずなんですが、できませんねえ』となっちゃうのよ。仕方ないから『今はできませんけど、操作方法だけ覚えてくださいね』と言ってるんだ。どうも、PKIが導入されたあたりから失敗するようになった気がするんだけど」

わたし:「PKI導入後かあ」

 セキュリティ担当の肝いりでスタートしたPKIである。導入後、ほかのセキュリティ機能が動作しなくなったとなれば大問題だ。

わたし:「PKIが絡んでいるとなるとセキュリティ担当わたしも無関係じゃいられないなあ。セキュリティ講座で推奨している機能が利用できなのもまずいし。わたしも確認してみるね」

 そう約束すると、皆、歯磨きのためにそれぞれ席を立った。

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