「シネコン」生き残りには何が決め手になるのか?――ASP型GISで商圏分析アイティセレクト特選事例:株式会社東急レクリエーション(2/2 ページ)

» 2007年03月26日 09時00分 公開
[アイティセレクト編集部]
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正確なデータによる提案を迅速に

 映画館にどんな人がどこから来ているのかというデータは、実に有効だった。例えば折り込みチラシなどの広告も戦略的に打つことができるし、観客の属性がデータとして近隣テナントに提示できれば、広告を取りやすくなるなど、営業企画も持ち掛けやすくなる。

 会員情報の活用方法について塚越氏は「広告戦略や出店の商圏分析のほか、営業ツールとしても活用しています。例えば近隣テナントにクーポンやサンプル配布などの営業企画を提案するとき、これまでは「この映画はファミリー向けなので家族連れが多いですよ」と経験則で話していたのが、具体的な数字の裏づけを持って提案できるようになりました」

 ただ、会員情報の集計・分析はエクセルのソート機能を使って手作業で行っていたため、行政上の住所をもとにしたおおまかなエリア分析しかできず、しかも時間がかかってしまう。そこで導入を決めたのが、匠技研のGISソフト「TakumiMap」だった。

システム構成図

 「以前からGISがあれば便利だと考えていましたが、導入費用が高くてコストパフォーマンスに疑問がありました。その点、『TakumiMap』はASPということもあり、費用が安く、それでいてエリア分析の基本機能はきちんと備えていたことが魅力でした」(塚越氏)

 この導入によって、会員情報のエリア分析にかかる時間は大幅に短縮した。これまで手作業で2〜3日かけていた分析資料も、いまはエクセルのデータを地図上で展開するだけで簡単にマッピングできるため、1時間で作成できるようになった。

緻密なリサーチを自社内で素早く

 会員のエリア分析は、シネマコンプレックス出店のためのリサーチにも大いに効果を発揮した。出店の経緯や運営形態はさまざまだが、ショッピングセンターやデベロッパーから打診されるケースが多く、その数は週に数件に上ることもある。同社では持ち込み物件について詳細な商圏分析をしたうえで結論を出しているが、データを現地から集めるのに時間がかかり、先方に結論を伝えるのに1〜2週間かかってしまうことも珍しくなかった。また、シンクタンクにリサーチを依頼するにしても、まだ出店が決まっていない段階で多額の調査費用をかけるのは非現実的だ。

 そこで活躍したのが、「Takumi Map」だった。このソフトには豊富な統計データが標準装備されているため、人口分布などのデータを現地まで取りにいく必要がなく、検討のための資料も2、3日で作成可能だ。先方への返答も早くなり、ビジネスチャンスを逃すリスクも大幅に軽減された。

 「従来の手作業による分析に比べると、作業が格段に早くなりましたね。また、分析自体も緻密で正確になりました。分析してみると、これまで車で30分のところまでが商圏だと思っていた場所が、本当は60分の範囲だったケースもあった。短時間で、より的確な分析ができるようになったのは大きいですよ」と塚越氏は話す。

 その効果を実感できたのを受けて、当初はIT推進室のみに導入されていたGISソフトを、今年1月、出店の調査を行う事業開発室にも導入。さらに活用の幅を広げている。

 ちなみに同社は06年6月に会員システムを刷新して、ICカードを導入。さらに便利になったことで、現在、会員数は12万人を超えている。この膨大な顧客情報を同社がどのように活用していくのか、今後も注目しておきたい。

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