消費電力と冷却方式が魅力の「動くデータセンター」

Rackable Systemsは、モバイル輸送コンテナに高密度サーバを詰め込んだモバイルデータセンター「Concentro」を発表した。

» 2007年03月28日 11時47分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 Rackable Systemsがモバイルデータセンター分野に参入しようとしている。

 カリフォルニア州ミルピタスに本社を置くRackable Systemsは、高密度x86サーバ/ストレージ製品で知られる企業。同社は3月26日、最初のモバイルデータセンターを発表した。この製品は、Sun Microsystemsが昨年10月に発表した「Project Blackbox」と競合する。

 Rackableのモバイル輸送コンテナは「Concentro」と呼ばれ、サイズは40X80フィート(約12.2X2.4メートル)。このモバイルデータセンターには、同社のラックマウント型1U(約44ミリ)サーバを最大1200台収容することができる。

 Rackableが3月13日から採用を始めたIntelのクアッドコアプロセッサであれば、輸送コンテナの実装密度は9600個のプロセッシングコアとなる。また、このコンテナは最大3.5ペタバイトのストレージを収容することができる。

 Rackableでは、自社のモバイルデータセンター製品のセールスポイントとして、このコンテナのエネルギー効率をアピールする考えだ。Rackableでデータセンターソリューションのディレクターを務めるコナー・マローン氏によると、このコンテナは同社のDC電源技術に加え、内蔵型冷房システムを採用しているという。

 コンテナ内では、ファンが各ラック間に配置されたラジエータ系統からエアを排出する。そしてこのエアは、温度が低いコンテナ中央通路を通ってサーバに送り込まれる。Rackableによると、この方式ではウォーターループの温度を比較的高くできるだけでなく、エアハンドラーの消費電力も削減することができる。

 マローン氏によると、エネルギー節約のためのもう1つの手段が、低価格の電力を利用できる州や都市にデータセンターを移動することだという。

 「多くのユーザーが安価な電力と土地を追い求めている。このモジュラー型データセンターであれば、ユーザーが求めるものを追いかけることができる」とマローン氏は話す。

 RackableのConcentroでは同社のハードウェアしか使用できない。マローン氏によると、これは古いハードウェアをリサイクルするための優れた手段であるという。

 「データセンターの機器の有効寿命は3年ないし5年だ。このコンテナでは、ユーザーがデータセンターを当社に返却すれば、当社で最新の素晴らしい技術をコンテナに再装備するので、ユーザーは役に立たない古いシステムを持て余すことがなくなる」と同氏は説明する。

 これに対し、SunのBlackboxコンテナの場合、収容するサーバは同社の製品あるいはIBMやDell、Hewlett-Packardなどが提供するシステムのどちらでも構わない。

 Pund-IT Researchのアナリスト、チャールズ・キング氏によると、SunはBlackboxを利用して自社のサービス部門を拡大することを狙っており、同社の輸送コンテナで他社のハードウェアを利用できるようにしているのはそのためだという。一方、Rackableは、できるだけ多くの自社製品を市場に投入したいと考えている。

 「Sunの方式の利点は、単にコンテナを売っているだけだとしても、同社がインフラの販売に価値を見出していることにある。それによって同社は利益を期待できるからだ。しかし小規模企業の場合は、とにかく多くのシステムを販売することが最優先だ」とキング氏は指摘する。

 SunはBlackboxの発表後、この技術をIT管理者および一般ユーザーに紹介するためにプロトタイプを路上で披露した。同社によると、受注した最初の6台の輸送コンテナは、4月中に顧客に配送される予定だ。コンテナの基本価格は約50万ドル。

 Rackableはこれまでに、1台のモバイルデータセンターを受注した。同社の輸送コンテナの基本価格は未定だが、マーケティング担当副社長を務めるコレット・ラフォース氏によると、同社のデータセンターは顧客の要求仕様に合わせて構成されるため、基本価格を決めるのは難しいという。

 Rackableのコンテナには、各種のセキュリティ機能と監視機能も装備される。例えば、何者かによってデータセンターのドアが開けられると、本社にいるシステム管理者に通知する機能などがある。

 ラフォース氏によると、Rackableでは大手インターネット企業のほか、軍や政府機関を含む特定分野で同社の技術に対するニーズがあると考えているという。

 「当社のシステムの実装密度、そしてこのスペースに含まれるコアの数こそ、他社製品との最大の差別化要因であると確信している」(ラフォース氏)

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