大同団結で今こそ海外進出に挑むべし対「黒船ソフト」で日の丸ベンダーが企む逆襲計画の本気度

国内の業務アプリケーションソフトウェアの多くは長年、海外製で占められてきた。だが最近、国産ソフトウェアの海外展開に向けた動きが目立ち始めている――。

» 2007年04月05日 07時00分 公開
[富永康信(ロビンソン),アイティセレクト]

 電子情報技術産業協会(JEITA)、情報サービス産業協会(JISA)、コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)の3社団法人が共同で実施した2000年のソフトウェア輸出入統計調査によると、輸出額は約90億円(対前年比96.7%)、輸入額は約9189億円(同127.6%)となっている(下図参照)。輸入は輸出の約102倍だ。外資系ベンダーのプロダクト輸入を含めた信頼できる統計が、この年を最後に再開されていないためその後の実態は確認できないが、超・輸入超過の傾向は拡大を続けていると思われる。

ソフトウェア輸出入金額の推移

戦略に欠けた日の丸企業

 「国産ソフトウェアの技術や実力は決して低くない」と語るのは、富士通総研経済研究所の主任研究員、前川徹氏だ。弱いどころか、教育レベルが高く、きめの細かい国民気質を持つ日本人こそ、ソフトウェアをつくる才能に長けているという。

 ゲームなどはそのクオリティが海外でも高い評価を得ている。また、世界中の多くの家電製品や自動車の価値を支えているのも日本の組み込みソフトウェアだ。高品質なソフトウェアをつくる能力は世界的に見てトップクラスといっても過言ではない。従って、海外向け業務アプリケーションでも、各国の法制度や商習慣、現地のローカライゼーションさえ合わせれば競争力は多分にあると考えられる。

 では、なぜこれまで国産のアプリケーションソフトウェアの海外展開が図れなかったのか。

 「日本のソフト産業に欠けているのは『戦略』だろう」と分析する前川氏は、独SAPの例を示し、優れた戦略が世界進出への背景にあると指摘する。

 大型汎用機向けのERPをワークステーション向けに開発した「SAP R/3」は、ダウンサイジングの流れの中、西暦2000年問題によるBPR(業務プロセス改革)の大波とともに一気に普及した。また、「R/3」はインプリメンテーションが厄介で、コンサルティングや教育を必要としたが、SIベンダーやコンサル企業を積極的に活用する戦略で、パートナーとウィン・ウィンの関係を構築し、成功を収めた。

 つまり、ソフトウェアのグローバル化には絶妙のタイミングと周到な戦略が不可欠ということである。

鉄鋼や自動車産業の成功に学ぶ

 「日本のし烈な競争の中で勝ち抜いてきた高品質のソフトウェアは、決して海外製品に劣らない」――そんな思いを持つ国内のソフトウェアベンダー13社が結集して2006年8月に立ち上げたのが、メイド・イン・ジャパン・ソフトウェアコンソーシアム(MIJS)である。鉄鋼や自動車などの産業の成功と同様、日本独特の細部に至るこだわりや優れたユーザーインタフェースなどを備える製品を生み出すIT産業も海外で十分に通用するというのが、基本理念にある。

 これまでも、日本の有力ベンダーは個別に海外進出を試みてきた。だが、マーケティングや資金力、情報量に限界が生じ、多くが撤退の憂き目を見てきた。今度は、複数社で力を合わせて世界の壁に挑んでいる。

 設立から約半年が経過した1月現在、コンソーシアムのメンバーは20社に増え、生産管理と会計パッケージなどを組み合わせた新たなソリューションを次々と誕生させている(「月刊アイティセレクト」2月号のトレンドフォーカス「 『黒船ソフト』の占領下から脱皮を図る日の丸ベンダーが企む逆襲計画の本気度」を再編集した)。

(注1) 当時は日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA)。2006年10月、名称変更した。
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(注2) 4 月2日現在で22社。
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※ 本文の内容は特に断りのない限り2007年1月現在のもの。

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