堅実トップの富士通「GLOVIA-C」 盤石な地位確保へさらなる一手「勝ち組」ERPベンダーの中堅戦略(2/2 ページ)

» 2007年04月06日 08時00分 公開
[河田裕司,ITmedia]
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 第1に挙げられるのは、富士通の全国に広がるサポート網だ。全国各地に支社があるため、地方のシステムインテグレーターとの連携も可能で、ユーザーとの距離が物理的にも近いため、臨機応変なサポートにも対応してもらえる、という大きな信頼感をユーザーに与えられる。ERPにはサポートが不可欠な(トラブル時に自社で対応できないことが多い)ため、全国どこでも同じレベルのサポート受けられることは大きな強みだ。特に地方のユーザーに対して、密なサポートで安心感を与える効果は大きいと言えるだろう。

 第2に、基幹システムの既存顧客の存在だ。富士通は中堅・中小企業の基幹システムのユーザーを多く抱えている。ERP販売開始前から、オフコン、メインフレームなどの基幹システムの販売を広く行っていたためだ。統合基幹業務システムと呼ばれるERPを販売するにあたって、既に富士通の基幹システムを導入している「ユーザー地盤」をフル活用して、ERPへのレベルアップを提案することができる。新規で営業を行う他社よりもアドバンテージをもって販売活動を展開している。

 第3にパートナーの存在だ。富士通ビジネスシステム(FJB)、富士通システムソリューションズ(FSOL)など、富士通グループの大手のシステムインテグレーターを中心に、大興電子通信などの中堅・中小企業の実績と販売力のあるパートナーをそろえている。またこれらパートナーは、オフコン時代からのもので、ユーザーとの間で既にパイプが出来上がっている。

 富士通は、このようなパートナーを継続的に支援することで、GLOVIA-Cの販売を引き継ぎながら信頼関係を築くことに注力してきた。

グループで競合しない基本方針

 そして忘れてはならないのが、この3つの強みの土台として「富士通のERPと言えばGLOVIA−C」という基本方針がグループ会社を含めて統一されていることだ。

 実際、FJBもFSOLも独自のERPを持っていない。その結果として、FJBやFSOLなどが「オール富士通」としてGLOVIA−Cを販売している。さらに、パートナーが持つ個々のソリューションとGLOVIA-Cを連携させることで、GLOVIA-Cを売るモチベーションの向上にも努めている。

 トップシェアを誇る富士通だが、その背景には「全国的なサポート網」「既存顧客というユーザー候補先の存在」「販売力のあるパートナー」を活かすための販売戦略を「継続的に行える土台」を築いている堅実さにあると言えそうだ。

「GLOVIA smart」

そして、今後の富士通の動きを語る上で欠かせないのは、2006年7月に発表された新製品の「GLOVIA smart」だろう。この新製品のメインターゲットは年商100億円前後と従来と変わらないが、ターゲット層をさらに年商30億円の小規模ユーザーにまでカバーしている製品だ。

 新製品のベースとなっているのは「GLOVIA-C」であり、実績から見ても中堅ERP市場を占う上で間違いなく注目が必要なパッケージだ。また、富士通では同時期に「中堅ソリューション事業本部」という中堅企業市場攻略に特化した新部署を設立し、攻勢に向けた体制を整えている。

 富士通は「勝ち組」のアドバンテージに加えて、次の強化策も抜かりない。この種の施策に即効性はさほどないが、シェアトップベンダーのこうした動きがほかのベンダーの戦略に大きな影響を与えることは間違いないだろう。2007年は富士通とともに、富士通を競合視しているベンダーの動きにも注目したい。

 次回は、中小企業市場においてトップベンダの地位を堅持している大塚商会の戦略を解説しよう。

 この連載はノークリサーチの「06年版中堅・中小企業向けERP市場の実態と展望」の調査レポートもとに、リサーチャーが加筆、考察した。詳細は同社サイトを参照のこと。


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