いま求められるインフラ最適化のためのコンソリデーション、その背景と目指すものとはDB統合による企業インフラの最適化手法 第1回

エンタープライズキーワードとしての「コンソリデーション」。DB統合といった側面はよく知られているが、いま企業に求められている本当のコンソリデーションとは、どのようなものなのだろうか。

» 2007年04月27日 10時00分 公開
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本当のコンソリデーションとは

 このところ、企業系のITキーワードとして「コンソリデーション」という言葉をよく耳にする。あるいは「統合」という日本語でも頻繁に語られている。英和辞書でConsolidationを調べると、「統合」以外に「強化」や「地固め」といった訳が出てくる。単にものを集める意味の統合というよりも、集めてさらに強固にするといったニュアンスがこの言葉にはありそうだ。

 それでは、企業のIT分野で注目されているこのコンソリデーションとは、いったい何を指しているのだろうか。本来の意味からは、企業内で増え過ぎてしまったサーバを物理的に統合するという単純な図式が思い浮かぶ。しかしながら、本当の意味でのコンソリデーションとは、ITシステムが抱えるより大きな課題を解決するために、物理的なハードウェアだけでなくその上で稼動するデータベースやアプリケーション実行環境を含めたシステム全体をインフラとして統合し、効率化を図っていくこと、この点こそが、いま着目されているところだ。

中長期的な視野でITシステムの全体最適化を目指す

 この背景には、大規模企業を中心に、業務要件に基づいてアプリケーションごとに用意されるサーバが乱立している状態がある。いわゆるたくさんのサイロ型システムでの運用であり、孤立したサーバが多数存在することから引き起こされるさまざまな問題の解決が、IT部門にとっては急務の事態となってしまっている。

 では具体的に、企業はコンソリデーションでどのような課題を解決できるのだろうか。統合化を実施する現実的なタイミングとなるのは、ハードウェアやOS、パッケージアプリケーションの保守契約終了時など、今後の自社ITシステムの構造を根本から改革しようという中長期的な視野に立った場合が多い。このとき課題として最初にあげられるのが、コストの問題だ。

 企業が負担しているIT予算のうち、70〜80%は保守や運用などの「守り」のコストで、戦略的な投資に回すことのできるのは20%程度と言われている。この理由の1つが、上記のサイロ型システムでの非効率な運用状況にある。個々のシステム単位でのみ最適化がなされ、運用管理の方法もそれぞれに異なり効率化できない。にもかかわらず、各システムのCPUなどのリソース利用率は低く、平均すると20%にも満たないという企業もたくさんある。

 物理的な管理対象を減らすことで、消費電力やスペース、運用管理の手間といったコストを削減できる。さらに、リソースの最適化がなされれば、必要となる総CPU数を減らすことができ、ソフトウェアライセンス費用の削減も可能となる。

 また、システムの新たな導入時にも、サイロ型では運用環境をその都度ゼロから用意する必要がある。まずハードウェア、ソフトウェアの組み合せを検討し、製品が納入されてから必要となるOSやデータベースなどをセットアップし動作検証を行う。それを経て、ようやく開発の作業に入ることになる。これでは、時間もコストも必要以上にかかってしまう。

 導入の敷居をなるべく低くし、導入後の運用も効率化する。さらに、その上でリソースの最適化も図り、コストは下げても十分な性能を得られるようにしたい。この複雑な課題を解決するには、ハードウェアからデータベース、アプリケーションの実行環境までを含む範囲をインフラとして統合基盤化し、ユーザーへサービスとして瞬時に切り出し提供できる仕組みが必要となるのだ。この場合、企業内の多種多様なOS、サーバ、ミドルウェアをできるだけ推奨を決めて標準化を行い、決められた標準に従い統合することが重要だ。

サイロ型から統合基盤へ

アプリケーションごとに用意されるサーバが乱立している状態がサイロ型。リソースの標準化を行って統合基盤化することで、システム全体の効率化や最適化を図ることが可能となる

 統合化されたシステムインフラ基盤には、コスト削減だけでなくサービス品質の向上も期待できる。インフラ部分を統合化することで運用の標準化が行われ、仮想化やグリッドといった技術を導入すれば、性能はそのままにリソースの効率化や最適化が可能になるからだ。企業の俊敏性を高めていく上で重要なステップになるだろう。さらには、セキュリティレベルの均質化も実現できるし、ID管理機能を組み込めば企業全体のリスクコントロールにもつながる。

 つまり、従来の統合化は物理的なサーバを減らすことが主な目的だったが、いま求められているコンソリデーションでは、ITのコスト構造や環境の変革および最適化といった中長期的な視野を見据えて、システムインフラ全体の最適化を実現することに、その目的は大きく広がっているといえる。

コンソリデーションの必要性はすぐそこにも

 だが、コンソリデーションは中長期的な計画だけに基づいて行われるものばかりではない。企業の合併や事業買収によるビジネス環境の変化、あるいは目前に迫った日本版SOX法への対応など短期的な課題に対しても、今やコンソリデーションによる解決が求められている。

 例えば、日本版SOX法への対応といった内部統制の課題について考えた場合、孤立したサーバが多数存在すればそれぞれがリスクポイントになる。さらに、個々のシステムで運用管理方法が異なり、ID管理がバラバラな状態では内部統制を確立するのは難しい。そして、個々のシステムに対してセキュリティ対策を施し、内部統制に耐えうるようにシステムを改変していたのでは、お金と手間が掛かり過ぎる。

 さらに日本版SOX法への対応は、目前に迫った最初の1回目をクリアすればそれでおしまいというものではない。内部統制のための監査作業は、決算を実施するたびに毎年行わなければならない継続的な業務となる。バラバラのシステムであれば、毎年それらすべての面倒を見なければならないことになる。

 これらの課題を解決するには、やはりコンソリデーションによるシステムインフラの統合化が不可欠となる。統合基盤化が実現できれば、監査対象を大きく削減できる。日本版SOX法への対応を考えた際には、コンソリデーションによる監査対象の削減という継続的で大きな効果も期待できるのだ。

統合基盤による監査対象の削減

個々に存在していたサーバ群は、それぞれが毎年内部統制に必要な監査の対象となる。それらを1つのインフラへとコンソリデーションすることで、大幅な効率化が可能となる

 とはいえ、目前に迫った課題を解決するために、大きな変革を実施するのは難しい。短期間でできる解決策を選択せざるを得ないはずだ。その際にはできるだけ将来的なコンソリデーションを念頭に、標準化技術の採用、拡張性、柔軟性のあるシステム構成の検討を意識することが重要だ。場合によってはSOA的な技術を用いて段階的に統合基盤へのコンソリデーションを実施していくことが、結果的にはTCOを削減し効率的な強い基盤環境を構築することになるだろう。

HPアダプティブ・インフラストラクチャとOracle Grid

 この統合基盤実現のソリューションを提供しているのが、日本ヒューレット・パッカードと日本オラクルだ。両社はそれぞれ、アダプティブ・インフラストラクチャ、あるいはOracle Gridといった統合アプローチを推し進めており、パートナーシップを結ぶことで、ストレージからサーバ、OS、データベース、アプリケーション実行環境という多層に渡るシステムインフラを効率的に統合化するソリューションを提供する。

 企業全体のシステムインフラの統合化を目指すからには、そのソリューションには信頼性、可用性、そして性能面すべてにおいて高いレベルが要求される。Superdomeに代表されるHP Integrityサーバ、HP-UX11i v3とOracle Database 10g、Oracle Application Server 10gの組み合せでこそ実現可能であり、しかも単に双方の持つハイエンドなソリューションを個別に提供するのではなく、実際の業務環境を想定した現実的な利用を前提に、十分な検証を行ってそれをベストプラクティスとして提供する準備が両社によって整えられているのだ。

 HPではこの統合基盤環境を自社のITインフラとしてすでに実現している。2002年のコンパック社との合併時には、全世界に300カ所のデータセンターを擁し、2万5000台のサーバに7000を超えるアプリケーションが稼動する状態だった。まさにサイロ型のシステムが乱立している状況だ。これを2004年度には85データセンター、1万9000サーバ、4000アプリケーションにコンソリデーションを確実に実施してきている。さらに、2008年度には世界でデータセンタを3拠点6ヶ所に統合し、6000サーバ、1500アプリケーションへと統合を進める予定だ。これによって、従来70%にも達していた運用、保守といった守りのITコストが50%にまで削減する計画だ。

 通常、これほど急激にサーバの数を減らせば業務に支障を来してしまう。HPでは単にハードウェアだけを削減したのではなく、コンソリデーションによって、まさに共通基盤を作り上げていったのだ。HPの仮想化の技術をも活用し、データベースやID管理などのミドルウェア層も含めてインフラ基盤を標準化しシェアードサービス化を実現している。実際に、Oracleデータベースの環境を使いたいという要望が社内で出た際には、新たなハードウェアを調達しセットアップするのではなく、統合基盤からOracleを含む必要なリソースを切り出し瞬時に利用可能な状況が提供されるという。これは、テスト、開発環境のみならず、基幹系の業務システムの追加導入においてもすでに利用されつつある。

これらの経験から統合基盤の構築を成功させるには、しっかりとしたアーキテクチャが必要であると同時に、アプリケーションとインフラチームの役割分担や責任の明確化など組織やプロセス面でのITガバナンスも重要であると考えている。

 HPとオラクルの主張する新たなミドルウェア層も含めたシステムの統合基盤の優位性は、ベンダーの唱える理想像ではなく、現実的に運用管理コストを削減して企業競争力を上げていくための価値の高いソリューションとなっているのだ。

 もちろん、自社で統合基盤の構築を進めていくにおいては、期待効果はもちろんのこと、集約・統合の進め方を企業ごとに異なるやり方で慎重に検討していく必要がある。次のステップでは、こうした統合環境構築の進め方について言及していく。

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