第5回 ワークフローを管理するシステムの実体内部統制を前に見直せ! ワークフロー

内部統制文書の「3点セット」の3つ目にあたる「業務フロー図」は、そもそもなぜ必要なのか。また、ワークフロー管理システムとは一体、どういうものなのか。

» 2007年05月21日 07時00分 公開
[梅田正隆(ロビンソン),アイティセレクト]

業務フロー図を作成することのメリット

 内部統制文書の「3点セット」の3つ目にあたる「業務フロー図」(5月18日の記事参照)は、なぜ必要なのか。その目的は、基本的な業務の流れを可視化するためである。

 業務の流れは、すべてワークフローツールを用いて事前に設計されているわけではなく、業務の遂行を通じて繰り返される作業と手順に基づいて、最も効率的であると考えられる流れが経験的に構築されている場合が多い。そこには経験的に蓄積された暗黙知が含まれている可能性が高く、経験を持つ者の暗黙知によってリスクが回避されていることもあり得る。そうしたリスクを事前に察知し、回避できる経験を、形式知に変換して組織で共有していく必要がある。

 そこで、いったん業務の流れを図に落として可視化する。これにより、はじめて業務の本当の姿が明らかとなる。どこにどのようなリスクがあるのか、あるいは誰だれがどの時点でチェックを入れればリスクを最小化できるかといったことが、判断できるようになるのだ。

 業務フロー図をかくことは、現状の業務を可視化すること。それが可視化されて、ようやく監視や監査が有効なものになる。見えないものは管理のしようがないからだ。監視や監査といったチェック機構の有効性を公に明示することが、内部統制文書を作成する目的の一つなのである。

 業務フロー図をかくことは、現状の業務を分析することにつながる。業務分析の結果、不必要な流れが発見できたり、気付いていなかったリスクを見出したり、あるいはチェックが効いていないプロセスを見つけたりする。それらを改善することによってビジネスゴールを効率的に達成できる。結果として、法令遵守にもつながる。つまり、内部統制に取り組むことは、単なるJ-SOXへの対応だけにとどまらない業務改善活動になる、ということだ。

システムとしてのワークフロー管理

 一般的に企業は、ビジネスゴールを達成するために数多くのビジネスステップを踏む必要がある。ワークフローを管理する目的は、ゴールを達成するための適正なビジネスプロセスを実現することにある。そのためにはどのような順番でステップを踏むべきかを規定し、そのルールに則って業務が処理される必要がある。業務処理自体は、各プロセスにおける担当者と業務アプリケーションによって実行される。

 例えば販売のステップでは、顧客管理担当者と与信管理システムが受注処理を実行し、商品管理担当者と在庫管理システムが在庫引当処理を実行する。ワークフロー管理システムは、こうした一連のステップにおける各担当者の判断や意思決定と、各業務アプリケーションの自動処理の実行について、全体的なフローを制御する役割を持つ。

 ビジネスステップ全体のフロー制御を行うため、ワークフロー管理システムに求められる構造は次のようなものになる。

 一つは、例えば製造業はプロセスの開始から製品の出荷まで数カ月を要することがある。従って、短時間で処理が完結する業務システムとは異なり、ワークフロー管理システムにはフロー制御をロングランニングでき、さらに数多くの組織や人をまたがる業務連携の状況を把握・管理できることが求められる。

 また、市場環境の変化に応じてビジネスプロセスも柔軟に変化させなければならないため、頻繁なビジネスプロセスの変更に耐えることのできる構造を持つシステムである必要がある。プロセスが変更された場合にも、既存の業務アプリケーションに対するインパクトは最小化させたい。そのため、は業務アプリケーション群とは独立した構成とし、アプリケーションと柔軟に連携される必要がある。

 結局、ワークフロー管理システムのアーキテクチャーは、アウトプットされるものが異なるものの、BPM(ビジネスプロセス管理)やBAM(ビジネスアクティビティモニタリング)を実現するシステムアーキテクチャーと本質的には同じものとなる。そして、SOA的な考え方と標準技術を採用したアーキテクチャーとなる。

「月刊アイティセレクト」6月号のトレンドフォーカス「内部統制を契機に再考 「ワークフロー」関連ソリューション動向 最新事情を探る」より。ウェブ用に再編集した)。

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