「情報システム部門のアイデンティティはどこに?」に答える

企業のIT化の推進役を担う情報システム部門の役割は大きく変わりつつある。その責任者として経営とITの橋渡し役を担うCIOの重要性もますます高まってきている。情報システム部門のあるべき姿に二人のCIOが答える。

» 2007年05月24日 07時00分 公開
[松岡功,アイティセレクト編集部]

IT部門は企業改革の推進集団

 東レ情報システム部門長の重松直氏は、情報システム部門特有のスタンスを説きながら、こう話す。

 「情報システム部門の強みというのは、全社横断的にどんなデータがどこにあるのかを知っているということでしょう。単にデータを処理するのだけでなく、そのデータはどんな意味を持つのか、関連するデータがどこにあるのか、組み合わせて活用できないか、といった全社視点でデータを洗い出せるのは情報システム部門以外にはありません。そのような視点で、情報を高度に活用する方法を見いだせれば、ひいては業務改善提案にもつながっていくと考えています」

 さらに重松氏は情報システム部門が担うべき役割として、「従来、情報システム部門と言えば、システムを構築して維持する部署という印象が強かったのですが、わたしは情報システム“役立て部門”にならないといけないと思っています。経営サイドから『情報システム部門のアイデンティティはどこにあるのか』と問われることもありますが、そういったときわたしは『競合他社を凌駕する情報活用力を支える部門』だと答えています」と語る。

 重松氏が強調する「情報システム“役立て部門”」という言葉には、これまでシステムの開発・構築・運用を業務としてきた情報システム部門が、自分たちのつくったものをきちんと役立てるところまできめ細かく手をかけるべき、との強い執着を感じる。また、同氏が語る情報システム部門のアイデンティティも明快だ。こうしたメッセージを自分の言葉で発言していくのもCIOの役目である。

 重松氏と同様、大成建設理事情報企画部長の木内里美氏も、情報システム部門特有のスタンスを説きながら、こう語る。

 「全社の業務が見渡せる情報システム部門こそ、全体最適を目指した改革を先導すべきだと思います。情報システム部門長は、まさしく改革のリーダーであるべきです。わたしもそれを肝に銘じ、情報システム部門も一層改革を推し進める集団として鍛え上げていきたいと考えています」

 言い換えると、「企業の全体最適を目指した改革を先導できるのは情報システム部門だけ」とも受け取れるメッセージを発する木内氏いわく、「こんな面白い仕事はそうそうないですよ」。木内氏のように、「CIOは企業改革のリーダー、情報システム部門は企業改革を推し進める集団」と考えるCIOおよび情報システム部門が着実に増えつつあるというのが、最近の取材を通じての筆者の感触だ。その改革プロセスは、それぞれの企業ごとに1冊の本になるくらいのドラマがある。大いに楽しみである。

(「月刊アイティセレクト」2007年6月号のトレンドフォーカス「企業の情報システム部門はどうあるべきか」より)

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